ホテルの部屋でできる自重ワークアウト
スポーツ&アクティビティ
体を動かせるスペースと少しのモチベーションさえあればできる30分のHIITワークアウトを紹介。
空港で20kgのスーツケースを持って、停止中のエスカレーターを上る。そんな経験によって、旅行そのものがワークアウトになることもある。 時差ボケや一般的な旅行疲れで、エネルギーレベルが低下することは科学的に証明されている。
旅行中にワークアウトを休んだからといって恥じることはない。でも心拍数を高めれば、エネルギーが湧いてくるのも事実だ。 2017年の研究では、旅行疲れや時差ボケのときに10分程度の運動をするだけで、集中力と注意力を高められることが明らかになっている。
汗をかくだけなら、ホテルの部屋を出る必要もない。 学術誌『International Journal of Exercise Science(運動と科学の国際ジャーナル)』に掲載された研究によると、ダンベルなどの負荷に頼らず、重力だけを利用する自重トレーニングは、心血管系や筋力の強化に効果的だ。
アルベルト・マシーニー(NSCA認定筋力トレーニングコーチ)が、ホテルの部屋で器具を使わずにできるワークアウトのルーティンを紹介する。
ホテルの部屋でできる30分以内の自重ワークアウト
必要な器具:なし
フィットネスレベル:すべて(以下で説明する方法で負荷を調整可能)
所要時間:25~30分(1回または1セットごとの休憩時間に応じて変動)
ウォームアップ:2~5分
ウォークアウト
- 足を腰幅に開いて立ち、腕を両サイドに下ろす。
- 前にかがんで、両方の手のひらを床につける。 両手で体重を支えながら、手をゆっくりと前方に進め、体が水平になるように。両腕をまっすぐ伸ばしたプランクの姿勢になる。 手のひらをしっかり床につけ、肩から手首までを一直線にして、かかとを後方に突き出し、視線を指先の上に向けた姿勢だ。 体幹に力を入れ、その状態を1~2秒キープする。
- ゆっくりと両手を足の方へ戻し、前かがみの姿勢に。 直立姿勢に戻る。 これを2~3回繰り返す。
ワールド・グレーテスト・ストレッチ
- 左足を前に出して腰を落とし、ランジの姿勢になる。顔を前方に向け、右足のつま先は床につけたまま、かかとをやや上げて床から離す。 両手を床につけて、左足の横にそえる。 その際、左手を左足の右側に置く。
- 右手を床にしっかりとつけて体を支えながら、上半身を左にゆっくりひねり、左手を真上に上げる。 その際、左手を見ながら、左手を天井に向かって動かす。
- ゆっくりと2~3回深呼吸する。 息を吸うたび、上半身をさらに少しだけ左にひねる。 反対側で同じ動きを繰り返す。 これを2~3回繰り返す。
自重ワークアウト:25~28分
以下の運動を行う際は、次のエクササイズに移る前に30~60秒(または必要なだけ)休憩をとる。
1.リバースランジ
使用する筋肉:臀筋、ハムストリング、大腿四頭筋、ふくらはぎ
効果:リバースランジは脚の筋力を全体的に鍛えられるだけでなく、片脚ずつ動かすトレーニングであるため、バランスや筋協調性を強化できる(マシーニー談)。
やり方:
- 足を腰幅に開いて立ち、腕を両サイドに下ろして腰につけるか、走っているときのように肘を曲げて左右の腕を上半身の前後に動かせるようにする。
- 体幹に力を入れながら、右足を後ろに下げて左膝を曲げ、ランジの姿勢になる。 右かかとをやや上げて床から離し、左膝が左つま先の真上にある状態にする。 上半身をやや前傾させる。
- 左脚のハムストリング、大腿四頭筋、臀筋を使いながら姿勢を維持し、再び右足を前に戻して直立姿勢になる。
- 静止した後、これを8~12回繰り返す。 脚を入れ替えて、同じ動作を繰り返す。 セットの合間に30~60秒の休憩をとり、片脚2~3セットずつ行う。
2.シングルレッグ・ヒップブリッジ
使用する筋肉:ハムストリング、臀筋、体幹
効果:一日の大半を空港や車内で過ごす旅行者が、凝り固まったヒップをほぐすために役立つ(マシーニー談)。やり方:
- 仰向けになって両手を横に置き、手のひらを床につける。 膝を曲げ、足をお尻から約15cmの位置に置く。
- 手のひらで床を押し、不快感が生じない程度にヒップを上げて床から離す。 不快にならない程度にあごと胸を引き寄せる。 臀筋を引き締める。 これでブリッジの姿勢ができあがる。
- このブリッジの姿勢から、左脚を宙に上げてまっすぐ伸ばす。 手のひらで床を押して体を安定させ、バランスをとりながらゆっくりとヒップを床に向かって下げる。 床にぎりぎり触れない高さまで下げて、臀筋を引き締め、体幹に力を入れ、ヒップを再び上げる。その際、左脚は伸ばしたままにする。
- これを8~12回繰り返す。 脚を入れ替えて、同じ動作を繰り返す。 セットの合間に30~60秒の休憩をとり、片脚2~3セットずつ行う。
負荷を小さくする方法:片脚を伸ばす行程を省き、ブリッジの姿勢になるまでを8~12回行う。
負荷を大きくする方法:完全な仰向けではなく、椅子やベッドの端で肩甲骨を支え、上半身を起こして行う。 また、ヒップを上げる際に重いもの(大きな本など)を太ももの上に置いてもよい。
3.プッシュアップ
使用する筋肉:胸筋、体幹、上腕三頭筋、上腕二頭筋、肩
効果:上半身の幅広い筋肉を同時に鍛えられるプッシュアップは、トップクラスの自重トレーニングだ(マシーニー談)。 負荷の調整が容易である点も、ワークアウトとして優れている。
やり方:
- 四つんばいになり、手のひらをしっかりと床につける。 手と肩の位置を揃える。
- 両腕と両脚を同時に伸ばして、脚を後ろに突き出し、両腕をまっすぐに伸ばしたプランクの姿勢になる。 脚をまっすぐにして、足を腰幅に開く。
- 体幹に力を入れ、バランスをとりながら、体の真後ろに向かって肘を曲げる(肘をやや横に開いてもよい)。 視線はやや前方に向ける。 胸が床にぎりぎり触れない高さで静止し、手のひらで床を押して、両腕をまっすぐに伸ばしたプランクの姿勢に戻る。
- これを10~15回繰り返す。 セットの合間に30~60秒の休憩をとり、2~3セット行う。
負荷を小さくする方法:ウォール・プッシュアップを行う。 壁から30~60cmほど離れた位置か、腕を完全に伸ばした状態で手のひらを壁につけられる位置に立つ。 ウォール・プッシュアップを行う際のフォームの注意点は上記と同じ(体幹に力を入れながら肘を曲げ、胸が壁にぎりぎり触れない位置で静止し、手のひらで壁を押して腕を伸ばす)。
負荷を大きくする方法:足を椅子やベッドの上に乗せて、手を床につける。 上記と同じフォームでプッシュアップを行う(体幹に力を入れながら肘を曲げ、胸が床にぎりぎり触れない位置で静止し、手のひらで床を押して腕を伸ばす)。
4.クラブウォーク
使用する筋肉:上腕三頭筋、体幹、肩、臀筋、ハムストリング
効果:長時間にわたってコンピューターを操作しているときにありがちな胸や前腕の凝りを解消する(マシーニー談)。
やり方:
- 床に座り、膝を曲げ、手を体の後ろに伸ばし、手のひらを床につけて、指を体の反対方向に向ける(手首の柔らかさに応じて、指を真後ろに向けてもやや横に開いてもよい)。
- 手のひらで床を押して体を支え、ヒップを5~8cmほど上げて床から離す。 視線は自然な方向に向ける。 これでクラブの姿勢ができあがる。
- 体幹に力を入れてお尻を上げたまま、左足と右手を同時に前へ動かし、続いて右足と左手を同様にすばやく動かす。 この動きを繰り返して前に進み、反対の動き(左足と右手を後ろに動かす)で後ろに戻る。
- ステップ3を約20~30秒、またはできる限り長時間繰り返す。 30秒休憩をとり、これを2~3回行う。
負荷を小さくする方法:どちらの方向へも動かずにクラブの姿勢をキープする。
負荷を大きくする方法:クラブウォークのスピードを上げるか、できる限り長時間続ける。
5.バーピー
使用する筋肉:体幹、上腕三頭筋、上腕二頭筋、肩、臀筋、ハムストリング、大腿四頭筋、ふくらはぎ効果:敬遠したがる人もいるが、バーピーは全身を鍛えられる最高の運動だ。 自分のフィットネスレベルに合わせて、簡単に負荷を調整できる(マシーニー談)。
やり方:
- 足を腰幅に開いて立ち、腕を両サイドに下ろす。 膝を曲げてヒップを後ろに突き出し、ハムストリングと床がほぼ平行になるくらいまでしゃがむ。 上半身をやや前傾させ、足の前に手をつける。
- 手で体を支え、バランスをとりながら、軽くジャンプするように両足を真後ろに突き出す。 この時点で、両腕をまっすぐに伸ばしたプランクの姿勢になっている。指先の上に視線を向け、体幹に力を入れる。
- バランスをとりながら、体の真後ろに向かって肘を曲げ、胸を床に近づける。 胸が床にぎりぎり触れない高さになったら、手のひらで床を押して、両腕をまっすぐに伸ばしたプランクの姿勢に戻る。
- 両腕をまっすぐに伸ばしたプランクの姿勢から、手のひらをしっかりと床につけたままジャンプするように両足を前に移動させ、手の後ろに置く。
- 臀筋とハムストリングを使って勢いよくかかとで床を押し、すばやく体を起こして直立姿勢になるようにジャンプ。
- 優しく着地して、そのままスクワットの姿勢になる。この動きを10~20回繰り返す。 必要に応じて休憩をとりながらワークアウトをこなす。 (*注:プランクからジャンプまでは、止まらずに一連のスムーズな動きで行うこと )
負荷を小さくする方法:バーピーはたくさんの運動で構成されているため、1つまたは複数のポイントを完全に省いてもよい(マシーニー談)。 プッシュアップや垂直跳びを省いたり、「ジャンプするように」ではなく「歩くように」足を前後に動かしたりするとよい。
負荷を大きくする方法:回数を増やしたり、スピードを上げたりすることで、負荷を大きくすることができる。
クールダウン:2~5分
膝を抱えるポーズ
- 仰向けになり、両腕を左右に伸ばす。 ゆっくりと2~3回深呼吸する。
- 2回目または3回目の呼吸の際に、息を吸いながら両腕を天井に向かって伸ばし、両膝を胸に引き寄せ、手を組んで膝を抱える。 (手を組めない場合は、タオルをつかんで腕の長さを補う)
- 手で膝を胸に引き寄せる。視線は天井に向け、肩甲骨と後頭部を床にしっかりと付ける。 不快にならない程度に膝を胸に引き寄せたまま、息を吸い、吐く。 3~4回呼吸をする。
- 休憩をとりながら、好きなだけこれを繰り返す。
チャイルドポーズ
- 四つんばいになり、膝を腰幅よりやや広く開く。 左右の足のつま先をくっつける。 手のひらを肩幅に開いて、床を押す。
- つま先をくっつけたまま、ヒップをゆっくりと後ろに突き出す。 ヒップを突き出しながら、手のひらを前に動かして腕を完全に伸ばす。 手のひらで床を押し続ける。
- ヒップを後ろに突き出したまま深呼吸する。 できる限り背中を平らにし、視線は床に向ける。
- この姿勢を20~30秒キープする。 休憩をとりながら、好きなだけこれを繰り返す。
文:ジュリア・サリバン(ACE認定パーソナルトレーナー)