ランニングによる股関節痛の主な原因と予防法

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走っている途中に股関節に痛みを感じたら、徐々にスピードを緩めてから立ち止まろう。 ランニングによる股関節痛の主な原因とその予防法を解説。

最終更新日:2022年5月19日
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ランニングによるヒップの痛みを防ぐ方法と治療法

初マラソンに向けたトレーニングであれ、短いジョギングであれ、股関節に痛みが生じたらワークアウトは中止せざるをえない。 サイクリングや水泳とは異なり、ランニングは高負荷のアクティビティに分類される。股関節に負担がかかりやすく、けがにつながることもある。

異変を無視して走りたくなる気持ちもわかる。しかし違和感があるときは休んで、トレーニング再開前に医師の助言を得た方がよい。 では、股関節の痛みを予防するにはどうすればよいだろうか? 股関節に痛みを引き起こす主な原因と、その予防法について確認しておこう。

股関節痛の主な原因

痛みを感じる部位:股関節の内側や鼠径部

股関節の内側や鼠径部の痛みは、一般的に股関節内部の問題によって生じる。

  • 疲労骨折:酷使による損傷であり、女性、年配のランナー、ランニング初心者に起きやすい。 比較的短い間に運動の頻度や強度を上げた後によく起こる。

  • 変形性関節症:変形性関節症では、股関節でクッションの役割を果たす軟骨が徐々に摩耗する。 痛み、こわばり、圧痛、腫れが生じ、 関節の柔軟性が失われる。 発症の初期なら走れるかもしれないが、ひとまず医師にの診断をおすすめする。

  • スポーツヘルニア:鼠径部の筋肉、腱、靭帯の損傷は、スポーツヘルニアやアスリートの鼠径部痛などと呼ばれる。 他のヘルニアのように膨らむことはないが、運動すると痛みが起きる。

  • 股関節インピンジメント:大腿骨の上端で球状を成す大腿骨頭と、カップ状の臼蓋という部位の衝突によって生じるけが。 鼠径部と太ももの前側にこわばりや痛みが起き、股関節を曲げる動作で悪化する。 診断にはレントゲン検査が必要な場合がある。

痛みを感じる部位:股関節の外側や臀部

股関節の外側、太ももの上部、または臀部の痛みは、一般的に股関節そのものではなく、股関節周辺の軟部組織の問題によって引き起こされる。 具体的には次のような障害がある。

  • 股関節屈筋の肉離れと腱炎:使い過ぎによるけがであり、こわばりや痛みが現れる。 詳しく説明すると、肉離れは、腱や筋肉がねじれたり、引っ張られたり、引き裂かれたりして生じる。 同じ動きを繰り返すことで肉離れに発展することがあるが、選手同士の接触を伴うスポーツなどで急に起こる場合もある。 一方、腱炎は、特定部位の腱に起きる炎症を指す。 肉離れと同様に、一度動きを誤ったことで生じる腱炎もあれば、一定の動作を繰り返したことで生じる腱炎もある。一般的には、動作の繰り返しが原因になるケースが多い。

  • 腸脛靭帯症候群:腸脛靭帯は、股関節の外側から太もも、膝、脛骨の上端まで伸びる繊維組織。 腸脛靭帯に沿って摩擦による炎症が起き、膝、太もも、股関節に痛みが生じる。 動かすと、何かがはじけるような音が聞こえることもある。

  • 股関節唇損傷:股関節では唇状の軟骨がクッションの役割を果たし、ソケット状の骨盤内部を安全な状態に保っている。 ところが、ランニングによる動作の繰り返しで損傷が起きることがある。 この損傷では、動かしたときにこわばりや痛みを感じたり、カチッという音が聞こえたりする。

  • 股関節の滑液包炎:大転子滑液包炎は、液体で満たされた袋状の滑液包に生じる炎症。滑液包は股関節外側にあり、クッションの役目を果たしている、 最初は鋭い痛みを感じるかもしれないが、徐々に和らぎ鈍い痛みに変わることがある。 治療をせずに放置すると、脚にも痛みが起き、股関節がこわばりを感じる場合もある。

ランニング時の股関節痛を防ぐ方法

  1. 1.医師に相談する

    現時点で股関節に痛みがあるかどうかにかかわらず、エクササイズのルーティンに新たに取り組む前に医師に相談することをおすすめする。 違和感を感じ始めたときや、何度か違和感を経験している場合は、資格を持った専門家の意見を聞く必要がある。 個別の事情に合わせたアドバイスがもらえ、休養、理学療法、ピラティス、クロストレーニング、睡眠なども含め、回復までのプロセスを組み立ててくれるはずだ。

  2. 2.フィットネスルーティンに筋力トレーニングを取り入れる

    股関節を強化すれば、筋肉のアンバランスを矯正でき、けがをしにくくなる。 股関節を鍛えるレジスタンスエクササイズには次のようなものがある。

    • レジスタンスバンドを使ったクラムシェルやサイドステップ

    • ウェイトを使ったスクワット

    • ラテラルステップアップ

    • シングルレッグデッドリフト

    • サイドレッグレイズ

    理学療法士に相談すれば、股関節の損傷を最小限に抑えるおすすめのエクササイズを教えてもらえるだろう。 「6つのヨガポーズで筋力を高める」もチェックしてみよう。

  3. 3.ランニングの前にウォームアップを行う

    レッグスイング、ハイニーマーチ、アーチタップのような運動をすることで、股関節が緩み、可動域が広がり、筋肉を活性化できるため、けがのリスクを減らせる。 ランニング前のウォームアップのアイデアを参考にしよう。 理学療法士に相談すれば、ウォームアップに適したエクササイズも紹介してもらえるだろう。
  4. 4.ランニング中に足を止めてストレッチをする

    場合によっては、ランニング中に足を止めてストレッチすると効果があるかもしれない。 試してみたいと思うなら、理学療法士や医師に、おすすめのストレッチについて相談してみよう。 ランニング中にストレッチをする際は、照明が明るく、交通事故の危険がない場所を選ぶこと。 膝を上げて胸の前で抱える、または立った状態で4の字を作るといった簡単なストレッチでもいいだろう。 股関節を傷めやすいランナーは、週の間に股関節に着目したヨガを数回取り入れてもいいだろう。ただし、控えたほうがよい動きもありうるので、事前に医師に相談してみるのがベストだ。

  5. 5.適切にフィットするランニングシューズを履く

    衝撃を吸収するクッショニングを十分に備えた快適なランニングシューズを履けば、膝や股関節にかかる負担を減らすことができる。 柔らかさと反発力を兼ね備えたNike Reactフォームや、関節への負担を軽減できるよう考えられたNike Zoomテクノロジーを取り入れたシューズを選ぼう。 足が回内するオーバープロネーションの傾向があるランナーは、ランニング時の腰の位置を維持するために、スタビリティシューズが必要かもしれない。 どんなシューズを選ぶにしても、きちんとフィットしているかどうか確認すること。また、シューズを買い替える走行距離の目安は、約500-1,000kmとおぼえておこう

  6. 6.痛みがあるときは休む

    股関節痛を抱えながら走ってもよいという許可が医師や理学療法士から出ているのでない限り、痛いときは休養した方がよいだろう。 睡眠の質、ストレスレベル、栄養に重点を置いて回復を促すのは良い考えだ。 休んでも痛みが改善されない場合は、医師や理学療法士に相談しよう。改善させるために、コルチコステロイド注射や手術が必要な場合もある。

よくある質問

ランニングによる股関節の痛みを和らげるにはどうすればよいか?

医師に相談し、自分に合ったケアの方法についてアドバイスをもらおう。 1日に数回、患部を氷で冷やすと痛みが緩和される場合がある(アイスパックは柔らかいタオルやブランケットなどで包むこと)。 軽いストレッチやヨガが効果を発揮する場合もある。 症状が改善されたら、距離やスピードは以前より少なめにして、ランニングをゆっくり再開すればよい。 痛みがぶり返すようなら、スポーツ医学を専門とする医師や理学療法士に相談しよう。

股関節に痛みを抱えながら走ってもよいか?

医師に症状をコントロールしてもらい、走る許可を得ていない限り、通常は痛みを我慢して走らない方がよい。 股関節のけがの多くは使い過ぎが原因であるため、関節に負担がかかり続けると症状が長引くおそれがある。 無理をせず、痛みが消えるまで十分時間を取って休養しよう。 ワークアウトを続けたい場合は、症状が悪化しない程度なら、股関節を鍛えるエクササイズに取り組んでもよい。

ランニングによるヒップの痛みを防ぐ方法と治療法

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公開日:2022年3月14日