ビートジュースがもたらす健康上の4つのメリットを管理栄養士が解説
食事
3人の管理栄養士が、ビートジュースを飲むことで期待できるメリットについて解説。
ビートジュースとは?
「ビートジュースは原料が植物だから、栄養価が高いんです」と話すのは、管理栄養士のクリスティン・カークパトリック。 同じく管理栄養士のフランシス・ラージマン・ロスの説明によると、約250mlのコップ1杯に、90カロリー、総炭水化物20グラム、糖質19グラムが含まれるそうだ。
「ビートには、体内で一酸化窒素になる硝酸塩が豊富に含まれることから、医療界やスポーツ界では長年、ビートジュースが高く評価されてきました」と語るのは、 修士号を取得したティナ・ラルッツ。 管理栄養士、 認定栄養士の有資格者でもある。 「一酸化窒素は体内の多くの機能を助けます。たとえば、心血管系の健康に関連する内皮機能や血管拡張、ミトコンドリア機能、筋肉の収縮、認知機能などに作用します」
ラージマン・ロスによると、ビートジュースには、ベタレイン(抗酸化作用や抗炎症作用がある植物色素)に加え、マグネシウムやカリウム(心臓の健康を支えるミネラル)も含まれるとのことだ。
ビートジュースがもたらす健康上のメリット
健康状態全般と運動能力の向上のいずれの観点から見ても、ビートジュースはさまざまな面でメリットをもたらす。 その一部を説明しよう。
1.炎症の抑制
2021年に発表された、ある科学論文のナラティブレビューによれば、ビートの植物化学物質には、炎症性疾患を抑える効果がある。 「ビートジュースに多く含まれるポリフェノールや抗酸化物質は、フリーラジカルの中和、酸化ストレスの軽減、細胞の損傷抑制に効果があります」とラルッツは説明する。 肝臓では、ベタレインが解毒作用を助ける。物質を分解し、不要なものを排出するという体の処理能力を高めてくれるのだ。
2.心肺持久力の向上
運動をすると、体はより多くの酸素を求める。 人間は、筋肉に酸素をたくさん供給するために深い呼吸をするとラルッツは言う。 ビートジュースに豊富に含まれる硝酸塩から生成される一酸化窒素は、酸素を効率的に使えるようにする働きがあり、筋肉に酸素を届け、パフォーマンスを向上させる。
3.筋肉疲労の軽減
また、一酸化窒素は「筋肉に運ばれる酸素や栄養素の量を適度に抑えるため、運動に対する耐性が高まり、すぐには疲労しにくくなる」とラルッツは話す。 2019年に発表された小規模の研究では、5日間続けて硝酸塩を豊富に含むビートジュースを飲んだ対象者は、硝酸塩を除いたビートジュースを飲んだ対象者より、筋肉の疲労が少なかった。
4.血圧の低下
「一酸化窒素には血管を弛緩させる働きがあります。血管が緩むと血圧が下がり、筋肉など体のあちこちへ酸素や栄養素が届きやすくなります」とラージマン・ロスは話す。
2015年に発表された研究を見れば、この血管の拡張が、持久力とスタミナの向上につながったことがわかると、カークパトリックは説明する。 「心臓が頑張る必要がなかったから、アスリートはより長い時間、運動に取り組める可能性が高まったということです」
また、2017年に発表された研究では、高血圧症の治療をしていない対象者が14日間続けてビートジュースを飲むことで、血圧の低下に加え、悪玉コレステロールであるLDLが減少した。
おすすめのビートジュースの作り方
ジュースを作る際に、従来の方法で栽培されたビートを使う場合は、農薬の摂取を避けるために皮をむくようにしよう。 オーガニック栽培のビートを使うのなら、皮付きでも構わない。 いずれにしても、ビートはこすり洗いをして泥を落とし、冷たい流水で汚れを洗い流そう。 その後で、ジュースを作りやすいよう細かく刻む。
栄養素をできるだけ多く残すには、コールドプレスの機能があるジューサーを使うとよい。 熱や酸素を加えるのではなく、圧力を加えることでジュースを絞るジューサーだ。 これに対して、回転ブレードとメッシュフィルターが付いた遠心分離式のジューサーは発熱する。 生野菜に熱が加わると、大事な栄養素が壊れる可能性があるとラルッツは話す。
ジューサーを持っていない場合は、刻んだビートをブレンダーに入れて少し水を加える。 ジュースを絞った後、繊維をこすといいとラルッツはアドバイスする。 レモン果汁を少し加えると風味が増し、ビタミンCも摂れる。
もしビートジュースの味がお好みでないなら、スムージーの材料に加えてみてはどうだろうか。 また、時間がないときや、炭水化物を控えたいときは、ビートジュースのパウダーを水やスムージーに加える手もあるとラージマン・ロスは言い、 遺伝子組み換えでないビートのみを使い、余計なものが入っていないパウダーを探すよう、アドバイスする。
適正な摂取量は?
ビートジュースの最適な摂取量を知るには、医師や資格を持つ栄養士に必ず相談してほしいとラルッツは話す。 適正量は個人の目的やニーズによって異なるからだ。
「高血圧症や末梢動脈疾患など、健康関連の問題への対処としてなら、1日に2回、約120mlのビートジュースを飲めば、心血管系の機能改善が期待できると言われています」とラルッツは言う。 少量から始めて、必要に応じて徐々に増やすといいだろう。
ビートジュースを控えるべきケースはあるか?
抱えている疾患によっては飲む量を控えたほうがよい場合があるため、ビートジュースを習慣に取り入れる前に医師や管理栄養士に相談するようにと、カークパトリックは指摘する。
ラルッツはこう語る。「ビートジュースを飲み過ぎると体が許容する硝酸塩の閾値を超えてしまい、閾値を超えた硝酸塩が発がん性物質になる可能性があります。 ただ、このことに関する研究は十分ではありません。明確に述べるにはさらなる研究が必要です」
注意すべきケースはほかにもいくつかある。 まず、ラルッツはこう指摘する。「ビートジュースに含まれるシュウ酸塩が腎臓結石の要因になったり、腎疾患の既往歴がある人の腎障害を悪化させたりする恐れがあります」 ちなみに、シュウ酸塩、あるいはシュウ酸は、多くの野菜や果物、豆類に自然に含まれているが、 シュウ酸塩を過剰に摂取し、カルシウムが不足すると、腎臓結石ができるリスクが高まる。
次に、ラルッツによると、ビートジュースは炭水化物を多く含むため、血糖値の急上昇を引き起こす可能性がある。 「糖尿病や、ブドウ糖の処理に問題がある疾患を抱えている人は、食事と一緒に、あるいはタンパク質や脂質と共にビートジュースを飲むよう気を付けましょう」 また、低血圧の人も、血圧が危険なレベルに下がらないよう注意する必要があると、ラルッツは続ける。
最後に、ビートジュースを飲むと、尿や便の色が一時的にピンクや赤に染まるビート尿になることがあると、ラージマン・ロスは言う。 ただ、これは心配する必要がない症状であることを付け加えておこう。
文:ディナ・チェイニー