ダンスフィットネスで自信を伝播する2人のリーダー

Culture

まず自分をじることで、他の人たちにも自信を与えられるようになる。タニーシャ・スコット(振付師)とシェブ・ロビンソン(フィットネスコーチ)が、そのメカニズムについて解説。

最終更新日:2021年8月12日
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「Game Recognize Game 通じ合う哲学」は、アーティストとアスリートがスポーツと芸術のつながりについて語りあう対談シリーズ。

タニーシャ・スコットとシェブ・ロビンソンの活動は、人々を支援すること。タニーシャは伝説的な振付師で、シェブは多数のネットフォロワーを抱えるフィットネスコーチだ。2人とも人生最高の自分を手に入れたいと願う人々に、フィジカル、メンタル、独創性の面からエネルギーを与えている。自身の仕事について、「自信に溢れるコミュニティを創出する活動」と説明するシェブ。両人ともライブパフォーマンス、ミュージックビデオ、雑誌カバーなどで活躍中のアーティストをサポートしたり、一般のアスリートにアドバイスを提供したりしている。ルーツはジャマイカ、出身はトロントという共通点を持つ2人。エンターテインメント業界を牽引する女性として手を携え、一流クライアント相手に2人でトレーニングを提供することもある。

今回の「Game Recognize Game 通じ合う哲学」では、あらゆる舞台で通用する原理とメソッドについてタニーシャとシェブが対話。自己実現の鍵は本人の中にあると考え、クライアントが最高の自己実現を達成するためのコーチングを解き明かす。

GAME RECOGNIZE GAME 通じ合う哲学:フィットネスコーチのシェブ・ロビンソンと振付師のタニーシャ・スコット

シェブ:じゃあ始めようか。タニーシャ、あなたは自分の仕事をどう説明している?

タニーシャ:振付師と動き方のコーチ。でも、振付と動き方は全く違う仕事。あとは、クリエイティブディレクターでもある。

シェブ:舞台に立つ人たちに、自信を与える仕事だよね。

タニーシャ:今までやってきた仕事のなかでも、自信を与えるという点では一番かな。あなたの仕事はどう?

シェブ:私はカリビアンらしい働き方。フィットネス愛好家、起業家、そしてコーチという3つの顔を持ってる。コーチとしての仕事は、ツアー、コンサート、ロードショー、雑誌カバーなどで活躍するアーティスト達のトレーニング。「Body by Shev」という会社も運営していて、世界中の人たちのトレーニングを担当してる。会ったこともない人達と繋がって、しかもその人達の目標を叶える役に立つのは素晴らしいこと。

タニーシャ:以前から思っていたけど、あなたは本当に自分より他人を優先するタイプだよね。一緒に働いたことがあるからわかる。こういう仕事をしているのも、それが理由?

シェブ:昔から人を助けたいとは思っていた。誰かに自信を持たせるような存在になりたいって。でも、どうすればいいのかは分からなかった。フィットネスにはずっと関わってきたし、今も昔も大好き。陸上競技では花形選手だったし、フィットネスは人生の一部だったから、なるべくしてこうなったんだと思う。ところで、今までクリエイティブな仕事に関わって壁にぶつかったことはある? そういう壁をどうやって乗り越えた?

「誰もがその作品に貢献したという自覚を持って、自分の仕事に誇りを持つべきだと思う」

タニーシャ

GAME RECOGNIZE GAME 通じ合う哲学:フィットネスコーチのシェブ・ロビンソンと振付師のタニーシャ・スコット

タニーシャ:行き詰まったことはないかな。なぜなら私にとって、振付、ムーブメント、クリエイティブディレクションって機械的なものじゃないし、ただ紙に書かれたものでもないから。すべてには物語がある。だから、それがどんな物語なのかを知るのがいつも楽しみなんだ。この歌のメッセージは何だろう? 誰からのメッセージなんだろう? そういう小さなピースを繋ぎ合わせる。しっくりこない要素があれば、それは本来物語に必要じゃなかったということ。本物のクオリティを求めるために、そこは妥協はしたくない。

シェブ:どうやってアーティストやダンサーのやる気を維持させるの?

タニーシャ:誰もがその作品に貢献したという自覚を持って、自分の仕事に誇りを持つべきだと思う。私はリーダーとして、仕事を割り振らないといけない。ビジョンの意味が理解されているか、スタイリスト、ダンサー、PAに最適な人材を選べているか確かめる。作品は一人ひとりの相互作用で創られるものだから、チームワークが鍵。皆を励まして、それぞれの責任を明らかにすることで、一人ひとりに向上心が生まれて、実際に向上してくれる。そんな感じかな。

シェブ:生徒や他のダンサー、クライアントとはどういう関係性を築いてる?

タニーシャ:私自身がまだ学んでいる身だから、みんなと同じ目線に立つようにしてる。だから話をきちんと聞くし、こっちからもたくさん話を振る。セットではたくさん質問もするし、端の方で子供達や生徒達と一緒に踊ることも。そして確かな芸術を表現するために、外に出て、世界の広さを感じるようにしてる。この仕事にも、他のすべての形の芸術にもリスペクトがある。だから想像することをやめないし、夢も持ち続けてるんだ。

シェブ:見えないだろうけど、鳥肌が立っちゃった。

「誰かが失ってしまった自信を取り戻す。その役に立てるということが、私を奮い立たせる」

シェブ

タニーシャ:フィットネスや健康に対する考え方は、生活のどんなところに表れていると思う?

シェブ:みんなが健康やウェルネスについて理解できるように、手助けをする。これは本当に大切なことだと思う。だから、一日の始め方や、体に入れるもの、人の役に立つために自分のエネルギーをどう活かすかということまで、すべて真摯に考える。これ以外の生き方を知らないんだ。自分が健康でなければ、人を助けることはできない。私の持つエネルギーが、周りに伝わっているといいな。

タニーシャ:周りを励まし続けるために、自分のやる気をどう保ってるの?

シェブ:誰かが失ってしまった自信を取り戻す。その役に立てるということが、私を奮い立たせる。体重が数キロ増えたとか、出産したとか、服がきつくなってきたとか…トレーニングの動機は人それぞれだよね。クライアントのことは家族だと思っているんだけど、今までこんなにも他の人のエネルギーに突き動かされることはなかった。だから、穏やかな心と集中力が両立した空間を作る必要がある。そうすれば、周りにも同じ空間を作り出すことができるから。

タニーシャ:他者に尽くす気持ちが表れてるね。クライアントに会う前に、どんなことをして自分を集中させるの?

シェブ:クライアントと会う前に、その人が今日ここに来る理由を思い出すようにしてる。その人にはどんな物語があって、なぜ私が必要なのか。私が提供しているのはサービスだから、私のもとへ来る人達の動機を知らなければ、そのサービスを提供することはできないし。

GAME RECOGNIZE GAME 通じ合う哲学:フィットネスコーチのシェブ・ロビンソンと振付師のタニーシャ・スコット

「クライアントと会う前に、その人が今日ここに来る理由を思い出すようにしてる。その人にはどんな物語があって、なぜ私が必要なのか」

シェブ

タニーシャ:クライアントが期待している体型と、その人に合った健康的な体型とのギャップはどう埋めている?

シェブ:同じ目線に立つことが大事だし、私を目安にしてもらわないことが大切だと思う。私も同じ人間で、目標があるから毎日ワークアウトをしてるし、いつも完璧な見た目をしているトレーナーでもない。今30日間チャレンジに取り組んでるんだけど、そういう意味では私も挑戦者の一人。食べているものも、プログラムもクライアントと同じ。

タニーシャ:その通りだね。それに、最高の自分を目指すという意味で、私の活動とかなり共通するところがある。30日間チャレンジの内容をもう一度教えて。500人の人達と一緒に、30日間チャレンジを始めたって本当?

シェブ:正確には585人ね。

タニーシャ:585人なんて、本当にすごいよ。みんなの目標達成を後押しするのがあなたの仕事だけど、その限界についてこのチャレンジから学んだことはある?

シェブ:年齢やフィットネスレベルを問わず、たくさんの女性達の健康的な体重管理、トーニング、メンテナンスの役に立ちたいとずっと思ってた。それを実現できたことで、自分のコーチングスキルや可能性に関する考え方が変わったよ。

タニーシャ:全員同時にやるところが、本当に素晴らしいね。

文:ダリアン・ハーヴィン
ビデオ:トラヴィス・ウッド

レポート:2020年11月

公開日:2021年7月5日