フォアフット走法のメリット
スポーツとアクティビティ
前足部で着地するフォアフット走法には、独自のメリットがあるものの、ランナーによっては向き不向きもある。 フォアフット走法とはどのようなものなのか、自分に向いた走法なのかをチェックしよう。
フォアフット走法とは何か?
ランニング時の着地位置によって、ランナーはおおむねフォアフット(前足部)、ミッドフット(中足部)、リアフット(後足部)の3タイプに分けられる。 フォアフット走法では、母指球が初めに着地する。つまり、母指球とつま先で地面を蹴りながら走るスタイルだ。 ミッドフット走法では、足中央部で着地して、前足部へ体重移動し、つま先で蹴り出す。 リアフット(ヒールストライク)走法では、かかとで着地して、足中央部へ体重移動し、最後につま先で蹴り出す。
けがの防止やパフォーマンス向上など、フォアフット走法のメリットにはさまざまな意見がある。 それでもフォアフット走法は、すべてのランナーに一度は試していただきたい。 「フォアフット走法を試してみれば、自分の身体構造がどんな反応を示すかを確認できます」と語るのは、ローレン・シャンテ(フィットネスコーチ)。認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト(CSCS)の資格を持ち、 理学で修士号を取得した専門家だ。
フォアフット走法の3つのメリット
1.関節への衝撃の緩和
ランニングは、体に非常に大きな衝撃が加わる有酸素運動だ。 ランニング中には、両足とも地面に接していない瞬間がある。 着地時には前脚で全体重の衝撃を吸収しなければならず、関節への負荷が大きい。
「リアフット(ヒールストライク)走法では、ペースに合わせて常に地面に向かって足を伸ばし、かかとの硬い骨で着地するため、脚の関節にとても大きな負荷がかかります」と語るのは、カレナ・ウー(理学療法博士)。整形外科的理学療法の臨床専門医として、ニューヨークでアクティブケア・フィジカルセラピーを経営している。
だがフォアフット走法なら、着地の衝撃を抑えて走ることができる。 「前足部で着地すると、足裏やふくらはぎの筋肉が力を吸収するため、関節への衝撃が緩和されます」とウーは言う。
2.膝のけがのリスク軽減
ランナーズニー、疲労骨折、膝蓋大腿関節の痛みなどのけがは、ランナーにありがちだ。 多くの場合、過度なトレーニング、間違った走法、不適切なシューズの使用が引き金になっている。
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フォアフット走法は、そのようなけがの防止につながる。 学術誌『Medicine & Science in Sports & Exercise』(スポーツとエクササイズの医療科学)に掲載された2013年の研究によると、フォアフット走法は、リアフット(ヒールストライク)走法よりも膝にかかる負荷が少ない。 これについて、エボルブ・ムーブメント・スペシャリスツを経営するサラー・ルーセンバーグ(理学療法博士)は、前足部で着地すると脛が垂直に近くなるからだと説明している。 そうすると膝が伸びた状態で着地する可能性が低くなるため、膝のけがのリスクが軽減されるのだ。
3.ランニング効率の向上
フォアフット走法は、効率が高いランニングフォームだ。特にリアフット(ヒールストライク)走法と比べれば、その違いは顕著である。 初めにかかとが着地すると、瞬間的にブレーキがかかってしまう。そう指摘するのは、ロンドンの小規模なパーソナルトレーニングジム「Fitness Lab」のジャック・コクサル(創業者兼パーソナルトレーナー、CSCS有資格者)だ。 この「ブレーキ」のせいで、着地時に衝撃を吸収しながら、反発を利用して前進しにくくなる。
この感覚を簡単に体験する方法がある。かかとだけで飛び跳ねてみよう。 「試してみれば分かりますが、かかとではジャンプできません」とコクサルは言う。 しかも不快感が伴うはずだ。
では次に、母指球で飛び跳ねてみよう。 「着地時の衝撃吸収がスムーズになり、その力を利用してまっすぐ上に効率的にジャンプできるはずです」とコクサルは言う。
自分の走り方がフォアフット走法かどうかを確かめる方法
普段の自分の走り方を簡単に診断する方法がいくつかある。 まずは、ただ裸足で走るか、カーペットなどの柔らかい面の上を走って、足のどの部分が最初に着地しているかをチェックしよう。母指球で着地しているなら、フォアフット走法だ。
履き慣れたランニングシューズのインソールを取り出して、どこが最も摩耗しているか確認してみてもいい。視認できなければ指で触って、他の部分より特に薄くなっている部分を探す。 そうすれば、自分が足のどの部分で着地しているかが分かる。 摩耗しているのがインソールの前側ならフォアフット走法、中央部ならミッドフット走法、後ろ側なら、もちろんリアフット(ヒールストライク)走法だ。
走り方を変える方法
フォアフット走法は自力で身に付けられるが、 ふくらはぎ、アキレス腱、足底筋膜への負荷が増えることに注意しなければならない。 各部位の組織が負荷の増加に耐えられる状態になっていないと、けがのリスクが高まってしまう。 そのため、走り方を変える前に足と足首にどれくらいの筋力と可動性があるかをチェックするのがルーセンバーグのおすすめだ。
フォアフット走法に耐えられるかを確認するには、以下のセルフテストをやってみよう。
片足かかと上げ
まず裸足で立ち、 片足に体重をかけ、かかとを上げる。 疲れを感じず、バランスを取るための補助もなしで、20-30回連続でこの動きを実践できれば問題ない。 もう片方の足で同じことを繰り返し、両足ともフォアフット走法に耐えられることを確認しよう。
親指の可動性
裸足で床に座り、片脚を曲げ、足の裏を床にぴったりつける。 もう片方の脚を伸ばして横に広げる。 曲げている方の脚の親指を握り、ゆっくりと自分の方に引き寄せる。 ほとんど抵抗なく、簡単に少しずつつま先を引き寄せることができれば合格だ。反対側の足もチェックしよう。
注意:いずれかのテストで不合格だった場合は、フォアフット走法に変える前に筋力と可動性を鍛え、 もう一度テストをして変化を確認しよう。
ポゴホップによるウォームアップ
走り方を変えるには、母指球での着地に慣れなければならない。 そのためにはウォームアップでポゴホップを行うとよい、とコクサルは言う。
ポゴホップのやり方は次の通り。
足をそろえて立つ。 両腕を体の横に垂らすか、手を腰に添える。
膝を曲げずに、できる限り高くジャンプする。
母指球で柔らかく着地し、すぐにもう一度ジャンプする。 地面をバウンドするように、できる限り速くジャンプする。 かかとは地面につけないこと。
疲れてペースが落ち始めるまで、母指球でジャンプし続ける。
フォアフット走法の始め方
ランニング中は、母指球で着地することに集中しよう。 フォアフット走法にすると、前傾姿勢になるのが分かるはずだ。ストライドの度に直立になるミッドフット走法や、リアフット(ヒールストライク)走法とは対照的なフォームだとコクサルは指摘する。
まずは短い距離でフォアフット走法を試し、ペースの変化や痛みなどの影響を確認しよう。 問題がなければ、そのまま少しずつフォアフットで走る距離を延ばしていく。
「激しい痛みなどの悪影響が出たら、次のランニングセッションまでに十分に体を休めて、少しずつフォアフット走法でのランニングを増やしてください」とシャンテは言う。
痛みを感じたらランニングをやめ、必ず医師や理学療法士の診察を受けよう。あなたにはフォアフット走法が合っていないのかもしれないが、気にすることはない。 ミッドフット走法やリアフット(ヒールストライク)走法の方が快適なら、走り方を変える必要はないのだ。
フォアフット走法のランナーに最適なシューズ
「フォアフット走法のランナーには、前足部にクッショニングを多めに搭載したシューズが適しています」と手足治療医学博士(DPM)のパトリック・マクニーニーは言う。 米国足・足首外科医学会フェロ―(FACFAS)、北イリノイ足・足首専門部会のオーナー兼最高経営責任者を務める マクニーニーによると、長距離ラン向けにデザインされたほとんどのランニングシューズは前足部のクッション性に優れている。
ただし間違った走り方、筋力不足、オーバーワークに起因する根本的な問題は、シューズで解決できないという事実も肝に銘じておこう。 それでも適切なランニングシューズを手に入れれば、フォアフット走法で安全かつ快適にランニングし続けるために必要なサポートを得られる。
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