ランニングすると足がしびれるのはなぜ? エキスパートが解説
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ランニング中に足の一部(または全体)がしびれるのはよくあることだが、その原因は必ずしも明らかではない。 ここでは、いくつかの可能性と予防策をご紹介。
ランニング中に、足にチクチクとした感覚をおぼえ、 突然かかとからつま先まで足全体が完全に麻痺する状態を想像してみてほしい。 運動能力の向上を専門とするキャロル・マック(理学療法士、 認定ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト)は、こうした足のしびれに関連する症状を、特にランナーからよく聞くそうだ。
彼女いわく、その発症と重症度は、走り始めてからすぐに感覚を失うケースから、走行距離を重ねるごとに徐々にしびれが出るケースまで、大きく異なる場合がある。 場合によっては、片足だけが完全に、または部分的に麻痺することもあるという。 また、足の指だけにしびれを感じる場合もある。
「しびれが起こりうる要因は1つだけではありません」とマック。 「シューズの品質や足の運び方の問題、神経の問題まで、引き起こす理由はいくつか考えられます」
Institute for Preventive Foot Health(足の予防医学を専門とする研究所)によると、米国の成人の7%が足のしびれを経験しているという。 この記事では、考えられる原因と予防策をいくつかご紹介。 専門家が解説する、受診のタイミングを示す重大な兆候は要チェックだ。
シューズが足に合っていない
ランニング中に足がしびれてきた場合、最初に考慮すべき点はシューズだとマックは言う。 たとえ何年も同じブランドとスタイルのランニングシューズを履いている場合でも、重大な要因の1つとなる可能性もある。
「たとえば、トゥボックスが狭いと、締めつけや神経の圧迫によってしびれが発生する可能性があります」とマックは話す。 「その場合は、トゥボックスが広めの別モデルを試すことで簡単に解決できます」
その他の要因としては、シューレースをきつく締めすぎていることにより、足に同様の圧迫効果を与える場合がある。足病医のシドニー・ワイザーはそう指摘し、説明を続ける。 「走ると足は自然にむくみます。そのため、自然にむくんでいく足に対応できるよう、シューレースがきつく結ばれたスニーカーを履かないことが大事です」 症状を軽減するための最初のステップとして、シューレースを緩めることが一般的であるのはそういう理由からだ。
ランニング中の足運び
たとえ問題が上半身にある場合でも、走り方によっては足の問題が引き起こされる可能性があるとワイザーは話す。 肩や胸が硬くこわばっていたり、腕の振りが体の横から離れすぎたりすると、フォームが崩れ、下半身への適切な血流が妨げられてしまうことがある。
「ランニング中は上半身をリラックスさせ、腕を体の両脇に近づけておくことが重要です。というのも、体が硬くなったり、手を握りしめたりすると、肩と手に力が入ってしまうからです」さらにワイザーはこう続ける。 「エネルギーを使うことはより多くの酸素が必要。そして筋肉や組織に必要な酸素を供給するためには、より多くの血液が必要となります。 そういう状態になると、体にチクチク感や、最終的にはしびれという症状が現れ始めることがあるのです」
ランニング中の着地位置も考慮すべき点だとマックは付け加える。 たとえば、かかとなど足の特定の部分に重点がかかって着地し、それが長距離にわたって繰り返されると、同じ神経に何度も圧力がかかることになるという。 それも炎症やしびれを引き起こす原因となりうる。 かかとから着地することについて調べたある研究では、オーバーストライドと呼ばれるこの着地の仕方により、足が地面と接触する時間が長くなり、足の神経にかかる圧力が増える可能性があることがわかった。
疼痛管理専門医で整骨医学博士のヴィヴェク・ババリアによると、アスファルトなど同じ種類の路面だけを走っていると、このようなことがさらに起こりやすくなるという。
「さまざまなタイプの地形で走り、ランニングの種類を増やすことは、足の健康を含め、多くの面でメリットがあります」と彼は話す。 たとえば砂利やトレイル、芝生などの路面を走るときは、関節や靭帯に調整の必要性が生まれる。
「それが良いのです。なぜなら安定性とサポートのためにさまざまな筋肉を動員することになり、常に同じ筋肉を繰り返し使っていると起こりやすいオーバーユースよるけがを防ぐのに役立つからです」とババリアは話す。
医学的症状
ランニング中に足がしびれるのは、場合によってはより深刻な問題に関連している場合もあり、さらに難しい病気の兆候である可能性がある。 考えられる病気の例:
- 椎間板ヘルニア:ギックリ腰とも呼ばれ、老化や事故の結果として発生することがある。 椎間板の位置がずれると、脚や足に神経圧迫が生じる可能性がある。
- レイノー病:寒さに反応して収縮する小さな動脈が関与する症状で、通常は指、つま先、耳、鼻先が影響を受ける。
- 末梢神経障害:足に影響を与える神経損傷の一種で、初期段階では散発的なしびれを伴う。 糖尿病、ギラン・バレー症候群、複雑性局所疼痛症候群など、多くの病気がこの種の影響を引き起こす可能性がある。
- 心血管疾患:心臓病のような問題は、脚の腫れを引き起こすだけでなく、血液供給にも影響を及ぼし、痛み、うずき、灼熱感、しびれを引き起こす場合がある。 この場合、走るのをやめて休むと、しびれはすぐに消える傾向がある。
- 坐骨神経痛:坐骨神経は体の中で最も長くて太い神経で、臀部から足まで伸びている。 この神経が何らかの刺激を受けたり、炎症を起こしたり、圧迫されたり、つままれたりすると、その神経経路に沿ったどこかの部分に痛みやしびれが生じることがある。
- 神経鞘腫:神経鞘腫とは、通常、神経の損傷の結果として神経組織に発生する良性腫瘍の一つ。 モートン神経腫と呼ばれるタイプのものは、母指球、最も一般的には片足の第3趾と第4趾のつま先の間の領域に影響を及ぼす。
「足のしびれはさまざまな症状で見られますが、珍しいことではありません」とババリアは指摘する。 「糖尿病やうっ血性心不全などの問題がある場合、医師が足について尋ねるのはこのためです」
水分バランスの乱れ
脱水症状は血管の収縮や体内の水分の貯留を引き起こす可能性があるため、足のむくみの原因になることがあるとワイザーは話す。 そのため、ランニング中に足がむくむという本来の傾向をさらに悪化させ、神経をより圧迫させることにつながる恐れもある。
水筒には必ず何かしらの電解質を入れるようにと、彼は補足する。 ただし、水分だけを過剰に摂取(低ナトリウム血症と呼ばれる状況)することでも血液からナトリウムが排出され、体が水分貯留に反応し、この種のむくみを引き起こす可能性があるので注意が必要だ。
脱水症状か水分過剰状態、いずれの場合も、足のしびれ以外にさまざまな症状を生じさせる可能性があることを覚えておこう。 どちらの場合も、むくみは足首、顔、手に影響を与える可能性があり、また、この水分補給に関する問題は筋肉けいれんを起こす可能性も高い。 このような兆候を記録しておくと、水分補給の組み合わせを修正し、より効果的に機能するよう調整するのに役立つ。
ランニング中の足のしびれを回避する方法
トレーニング後にしびれが少し残る場合でも、ランニングをやめればすぐに治まる場合でも、潜在的な原因をよく考え、それに応じた対応策を検討しよう。
さまざまなシューズを試してみること、水分補給のバランスをとること、自らのランニングフォームを評価することが、しびれの予防に大いに役立つ。 「ランニングシューズがしっかりフィットしているかどうかを確認することが問題回避の第一歩です」とマックは言う。
さらに、 ワイザーは、ランニング中に定期的に足の感覚に注意を払うことを推奨している。 足が健全な状態から完全に麻痺する状態へと変化することはほとんどない。 長距離を走っていると、シューレースを調整したり、ランニングフォームへの注意を喚起する小さな兆候がいろいろ現れることがある。
「ちょうどお腹が空くとお腹が鳴るのに似ています」とワイザーは言う。 「筋肉に十分な血が流れていない状態というのは、筋肉に栄養を与える酸素が供給されていないのと同じです。 体がより多くの血液と酸素を求めていることを示すために、体がうずき始めるのです」
いつ医師の診察を受けるべきか
シューズを変えたり、ランニングの際の足運びや全体的な姿勢を変更したりなど、しびれが軽減されるかどうかを自分で確認できる方法を、これまでにいくつかを紹介してきた。 ただし、症状について医師の診察を受けるべき状況もある。 具体的には次のようなときだ。
- ランニング後もしびれが日中続く、または1日以上継続し、1週間経っても軽減されない。
- 距離や強度などを変えてみても、走るたびにしびれが生じる。
- しびれのほかに、脚や臀部、腰など体のほかの部分に神経痛などの問題が生じている。
- 感覚が戻るとしびれが痛みに変わり、歩くのが困難になるほどの激痛が生じる。
「発見が早期であればあるほど、治療は容易になります。ですから、どのような症状の場合にも言えることですが、根本原因をできるだけ早く特定することが重要です」とババリア。 「最初はごくたまに症状が発生するだけかもしれませんが、また元気に走れるようになるためにも、慢性化したり痛みが伴ってきたりした場合には、受診することが大切です」
文:エリザベス・ミラード(ACE 認定パーソナルトレーナー)