体内時計を整え、睡眠障害を解消
Coaching
眠れなかった日の翌朝は、このプランを実践して悪循環を断ち切り、元気を回復しよう。
近所の騒音、赤ちゃんの泣き声、お金の心配、度重なる飲み会などで夜なかなか寝られないと、次の日が辛くなることがある。朝起きても体がだるく、イライラし、この状態をどうやって切り抜ければいいのだろうと悩む。誰でもそんな経験をしたことがあるだろう。多くの人が頼るのはコーヒーだ。しかし、すぐにトリプルショットラテに飛びつく前に、なぜそこまで滅入ってしまったのかをじっくり考えてみよう。
睡眠は4段階で構成されており、それぞれ異なる効用がある、とUCLAの内科教授であり、Nikeパフォーマンスカウンシルのメンバーも務める睡眠の専門家、ジェニファー・マーティン博士は説明する。
第1段階:
うとうとし始め、起きている状態から眠りに移行する。
目覚める可能性:非常に高い
第2段階:
浅い眠り。筋肉が弛緩し、体温が下がって、心拍数と呼吸が遅くなる。
目覚める可能性:まだかなり高い
第3段階:
最も深く、回復効果のある眠り。脳の働きが減退し、体がリラックスして、回復・修正を図る。
目覚める可能性:非常に低い
第4段階:
急速な眼球運動(REM)が起こり、脳の働きが活性化する。閉じた目がピクピクと動き(ここからREMという名前が付いた)、夢を見る。ハーバード大学の研究によると、REM睡眠は記憶にとって重要であり、UCSDの研究では、それによって創造的な問題解決能力が高まる可能性があるという。
目覚める可能性:まだ非常に低い
ベッドから出てもまた這って戻ろうとするのは、おそらく睡眠サイクルの途中で起きたせいで、サイクルを一巡せずに目覚めてしまったからだ。「多くの人々が睡眠の第1段階と第2段階までしか達しておらず、第3段階とREM睡眠で行われる体の回復まで至らなかったからです」と、ランケナウメディカルセンターの麻酔専門医で整骨医のドミニク A. ブランディジ博士は言う。彼は、睡眠の質を改善することでICUの患者のせん妄を防ぐ研究を行っている。また、眠りの深い段階で目覚めてしまうと、浅い段階で目覚めるよりも、さらなる倦怠感を感じることがある、とマーティン博士は言う。いずれにしても、このように深い眠りが妨げられることで、エネルギー、やる気、能力が奪われてしまうと考えられる。(だからあなたはこの記事を読んでいるのかもしれない)
眠れなかったときにできる最善策は、一日の疲れを吹き飛ばして、夜ぐっすり眠る能力を高めることだ。疲れすぎてできない?では、その方法を詳しく解説しよう。
「多くの人々が睡眠の第1段階と第2段階までしか達しておらず、第3段階とREM睡眠で行われる体の回復に至っていないのです」
ドミニク A. ブランディジ博士
整骨医、麻酔専門医
やるべきこと
1. 光を探す。
文字どおり実践しよう。「太陽光を浴びると、一日中元気になれる。それによって体内時計が安定し、注意力が高まるからです」とマーティン博士。起きたらすぐにブラインドを開けて光を取り込もう。可能であれば、窓のそばで仕事をしたり、昼食を取ったり、外を軽く散歩してみよう。(追伸:たとえ日が陰っていても、自然の光を浴びるだけでも効果はある、とマーティン博士)
2. アスリートのように考える。
トレーニングセッションを成功させるためには、優先順位をつけて取り入れていくことが今は特に重要である。というのも、エネルギー不足の状態のときに、体の多くの機能をサポートしてくれるものだからだ。「水分を補給しながらよく食べる。水分や栄養価の高い食物が不足していると、さらに疲労感が高まります」とマーティン博士は言う。あまりのどが渇いてなくても水を一口飲み、脂っこいものがほしいと思っても、食事には脂肪分の少ないタンパク質、全粒粉、食物繊維豊富な野菜を選ぼう。
そしてできれば、疲れているからといってワークアウトを休まないように。夜眠れなかったときには、朝または午後のセッションで汗をかけば注意力が高まる、とマーティン博士は言う。さらに、体温を上げることでよく眠れるようになるかもしれない。(夕方近くであれば、就寝前までに眠気を誘うことができる)ハードなワークアウトに飛びつく前に、10分間のウォームアップを行って血行を促そう。これ以上続ける気が起こらない、あるいは頭がぼんやりするとか調子が悪いという場合、その日は終わりにすること、とマーティン博士。「けがをしてまでやる必要はありません。明日またやればいいのです」
3. 眠る準備をする。
毎晩決まった行為を実践することで、心がゆったりとして落ち着き、容易に眠りに入ることができる。「仕事のことは考えず、ヨガをやったり、本を読んだり、パートナーとの時間を設けましょう」とブランディジ博士。「心をリラックスさせるものはすべて良い睡眠衛生につながります」ここで話しているのは、うまく歯を磨く方法ではない。「睡眠衛生」は専門用語であり、睡眠の質を着実に高める健康習慣や環境を表している。
やってはいけないこと
1. カフェインを摂取し過ぎる。
入れたてのコーヒーや紅茶はたいていやるべきことのリストに含まれているが、夜眠れなかったときは、サイズアップしたい気持ちを抑えよう。特に午後にいつもより多くカフェインを摂取すると、次の夜もあまり眠れなくなる可能性が高くなる、とマーティン博士は言う。さらに、「定時に眠れるようにするには、疲れを感じたままでいる方が良いかもしれません」と付け加えている。
2. 遅い時間に食べる。
就寝間際に夕食やデザートを食べると、2とおりの方法で眠りが妨げられる。1つ目は、「消化不良を引き起こす食べ物により、夜眠れなくなる可能性があります」とブランディジ博士。2つ目は、日が沈んでからたくさん食べると、体が食べた物を消化するよう命令され、寝る準備を邪魔されるため、概日リズムに悪影響を及ぼす、と付け加える。辛い食べ物や乳製品など、胸やけ、消化不良、お腹にガスが溜まるなどの症状を引き起こしがちな食べ物を夜遅くに食べないようにし、ベッドに入る2時間前以降はスナックや食事を取らないようにしよう。
3. ソファでダラダラする。
ゴールデンタイムにテレビを1分見ただけで、次の瞬間にはソファでイビキ。それって、夢のよう? いや、それではいけない。「寝るべきときに寝ること」とブランディジ博士。「ベッドルームで、ベッドの中で」ちゃんとベッドで寝ることは、毎晩同じことをする、つまり、繰り返しのパターンで将来の眠りの質を良くすることだ、とブランディジ博士は説明する。
また、ベッドルームが寝るために設計されていること、つまり、それがベッドルームと呼べるものかどうかも確認しよう。「照明とテレビを消し、温度を低く設定しましょう」とブランディジ博士は説明する(ほとんどの専門家は約18℃を推奨する)そして、それまでにあくびが出たり、目を開けていることができなくなってしまわない限り、いつもの時間にベッドに入ろう。
では、ゆっくりお休みください。
文:ロニー・ハワード
イラスト:ポール・ブロー