腰を鍛えるためのエクササイズをエキスパートが伝授
スポーツ&アクティビティ
腰の強化につながる8つの運動とそのやり方を理学療法士が解説。
エクササイズをするとき、その動きの要になる部位の一つが腰だ。 腰には体を安定させる働きがあるとされており、腰の筋群は腹部の筋力を支える。
言うまでもないが、エクササイズをせず腰を動かさなければ、筋力が衰えていき、腰痛に発展する可能性がある。 ヨガ、バーエクササイズ、ピラティスのように腰の強化に効果があると標榜するワークアウトもあれば、腰の筋力強化に特化したエクササイズもある。自宅やジムで試せる、腰をターゲットにした運動だ。
「運動の基礎をしっかりと培うためにも、腰を強化することが重要です」と話すのは、理学療法博士で アメリカスポーツ医学会認定エクササイズフィジオロジストの資格を持つケイシー・シャイブリ。 「腰の筋力が強くなるほど、ハードな運動にチャレンジしたときにけがをしにくくなります」という。
腰の筋力強化が重要な理由
一日の間に行うほぼすべての動作において、腰は体を支えている。だから、腰の筋力を維持していれば、椅子から立ち上がるといった小さな動作から、家具を動かしたり、買い物袋を持って階段を上ったりという大きな動作まで、どんな動きも支障なく行えるはずだ。
「座ったり立ったりするときに姿勢をまっすぐに保つためには、腰の筋力が不可欠です」と語るのは、 理学療法博士のラミ・ハシシュ。 「腰の筋力の衰えは、姿勢が悪くなる主な原因の一つ。他の筋肉や関節で動きを補わなければならなくなり、結果的に無駄な消耗やけがに発展します」とのこと。
ある研究では、腰の筋力強化は長生きにもつながることが示されている。ドライニードル療法の認定資格を持つ理学療法博士、アニー・カダルによると、これは「日々の生活を営むうえで体の回復力が高まり、将来的に腰痛を引き起こすリスクを 最小限に減らせる」 からだ。
腰の筋力を最大限に高めるには、 日々のワークアウトに、コアを鍛える運動に加え、腰をターゲットにしたエクササイズを取り入れることが重要になる。
エキスパートが推奨する8つの腰のエクササイズ
腰に効果があるエクササイズの多くは、腹筋や臀筋の強化にも大変役立つ。 また、臀筋やコアの筋肉の強化は、最終的にランニングやデッドリフトなどさまざまなエクササイズに取り組むときの背中の保護につながる。
シャイブリはこう語る。「腰を鍛えれば、負担を減らしつつ大きなパワーを発揮できる最適な動きが可能になり、上半身と下半身にかかる力を均等に分散できて、けがのリスクを減らせます。 毎回のワークアウトのウォームアップも含め、トレーニングに腰の活性化と筋力強化に効果的な運動を意識的に取り入れることが、体の健康維持には不可欠です。」
では、カダル、ハシシュ、シャイブリが推奨する、腰の強化に最適なエクササイズを紹介しよう。 この8つの動きすべてを行って1セットとなる。 上級レベルのアスリートや、負荷を少し高めたい人は、2~3セット行うことをおすすめする。
1.スーパーマン
スーパーマンは、腰を効果的に鍛えられる簡単なエクササイズ。
- まずうつ伏せになり、スーパーマンが空を飛ぶように、両腕を前に伸ばす。
- コアの筋肉を使い、脚と腕を床から10~15cmほど持ち上げ、その姿勢を5秒キープする。
- 3秒数えながら、腕と脚をゆっくり下ろす。
- これを10回繰り返して1セット。
2.バードドッグ
腰への効果が高いもう一つのエクササイズ、バードドッグは、両手と両膝を床につける四つん這いの姿勢で行う。背中を水平に保ち、手の真上に肩が来るようにする。
- 背中をまっすぐに保ったまま、左腕と右脚を背中と同じ高さまで上げる。 このとき、右腰を下げて左右のラインがずれないようにしよう。背中の中央に水の入ったコップを乗せてバランスを取るようなイメージだ。
- その姿勢を5秒キープしたら、3秒数えながら腕と脚をゆっくり床に下ろす。 「このエクササイズは、腰が左右に揺れないよう、次の動作への移行をゆっくりコントロールして行います」とシャイブリ。
- この動きを右腕と左脚でも繰り返して1回とする。 これを10回繰り返す。
3.グルートブリッジ
グルートブリッジは、その名の通り臀筋を鍛えるエクササイズだが、シャイブリによると、腰を支える腹筋も強化できるため、背中にも効果が見込めるとのこと。
- 仰向けになり、膝を曲げ、足の裏を床につけて肩幅より少し広めに開く。
- 足が膝の真下に来るようにし、つま先は前方に向ける(両膝を肩幅より少し広めに開くので、つま先は多少斜め向きになる)。
- 腕は体の近くに置き、手のひらを下に向ける。
- 「大臀筋を寄せて引き締めていき、腰を水平にした姿勢を保ちます。ヒップが床から離れ、体で『橋(ブリッジ)』を作った状態になります」とシャイブリは説明する。 ポステリア筋群の働きが感じられないなら、かかとを床にしっかり押し付けて、筋肉の活性化を促してみよう。
- 椎骨を一本ずつ床に下ろしていくように、背中からヒップへかけてゆっくりと下ろし、最初の姿勢に戻る。これを10~15回繰り返して1セット。
さらにチャレンジしたい場合は、ブリッジの姿勢で6秒キープしてから腰を下ろすといいと、シャイブリはアドバイスする。
4.サイドプランク
コアに働きかけ、バランスに集中するサイドプランクは、腰の筋力を強化でき、コアの筋力が向上することで徐々に腹部の安定性も高まる。 プランクでは、背骨を安定させる筋肉もターゲットになり、筋力強化だけでなく腰痛の予防効果も期待できる。
- 「体の左側を下にして横になり、左肘を肩の真下に置きます。右脚を少し曲げ、左脚は伸ばして足首から先の外側を床に置きます」とハシシュ。
- 左肘と左足で体を支えて持ち上げ、プランクの姿勢になる。 このエクササイズが難しく、完全なサイドプランクができるようになるまで徐々に負荷を高めていきたい場合は、左脚を曲げ、右脚を伸ばして腹部を引き締めることを意識してみよう。 負荷をもう少し高めたい場合は、右脚を上げるとコアがさらに活性化する。
- その姿勢を20秒キープしてから、反対側でも同じ動きを繰り返して1セット。
- 効果を高めるために計5セット行うよう、ハシシュは勧める。
5.アンチローテーションステッピング
アンチローテーションステッピングは、ドア(またはジムのプーリーマシンのハンドル)にレジスタンスバンドをウエストの高さで固定し、横向きになり、腕を伸ばして体の前の中心でバンドを握るというパロフプレスの運動だ。 このエクササイズでは、腰の筋力強化のポイントになるコアの安定性を高められる。
- 前述したように、レジスタンスバンドをドアかプーリーマシンのハンドルに、ウエストの高さで固定する。
- 横に2歩移動し、また2歩で元の位置に戻る。これを10回繰り返す。
- 後ろ向きになり、反対側で同じ動作を繰り返す。
- このエクササイズは、バンドやプーリーを軽く引っ張った状態を保ち、左右でそれぞれ2セットずつ行うよう、シャイブリはアドバイスする。
6.プルアップ
プルアップバーにぶら下がるだけでも背中の筋肉をしっかり伸ばせるが、 プルアップバーのメリットはストレッチ効果だけではない。脊椎減圧の効果も期待でき、腰の安定性向上に役立つ。
- まず、手のひらが自分とは反対側を向くようにして、肩幅の位置でバーを握る。
- 「背中の筋肉を意識して、肩甲骨を寄せながら下に引き、体をバーの方向に持ち上げます」とシャイブリ。
- シャイブリが勧めるのは、この動作を5回繰り返し、4セット行うやり方だ。また、スキルレベルに応じて、プルアップバーかジムの補助付きマシンを使うようアドバイスしている。
(関連記事:エキスパートが教える、プルアップの始め方)
7.スーツケースキャリー
スーツケースキャリーは、片手にケトルベルやダンベルなどのウェイトを持ち、1往復で6~9mほど歩くエクササイズだ。
「このエクササイズでは、腰と脊椎の側屈の動きを安定させる役割を担う筋肉に働きかけます」とカダルは説明する。
- 片手に中程度以上の重さのウェイトを持ち、腹部を引き締めてコアを意識する。肩を後ろに引き、両肩が水平になるようにする(片側に傾かないようにするということ。両肩を水平に保つのが難しい場合は、より軽いウェイトを使うことをおすすめする)。
- 「片側がウェイトで下に引っ張られるため、直立姿勢を保とうと、コアと腰の筋肉が働くのを感じられるはずです」とカダル。
- 2往復(約6~9mで1往復)歩いてから、ウェイトをもう片方の手に持ち替えて動作を繰り返し、計4往復行う。
8.ケトルベルデッドリフト
ケトルベルデッドリフトは、特に「背中上部、腰、臀筋、ハムストリングなど、背面の筋群全体をターゲットにする運動で、優れたコンパウンドエクササイズになります」と、カダルは話す。 こういったファンクショナルエクササイズは、総合的な筋力の強化に欠かせず、物を拾ったり椅子から立ち上がったりといった日常の動作を最適な姿勢で行うのに役立つ。
- まず、足を肩幅程度に開いて立ち、両足のかかとの間にやや重めのケトルベルを置く。
- ケトルベルをつかむときは、胸を起こしたまま腰をゆっくりと後ろに引き、膝を少し曲げて、腰を起点に体を折るヒップヒンジの姿勢になる。スクワットより膝を曲げる角度は小さく、上半身の前傾は大きくなる。 両手でケトルベルのハンドルを握る。
- かかとで床を押して立ち上がる。
- 逆の動きを行い、ケトルベルを床に下ろす。この動きを8~12回繰り返す。 ハムストリングに張りがあるときは、低いスツールや椅子(ケトルベルを支える強度があることを確認する)を前に置いて、ケトルベルを下ろす位置を床から高くしてもいい。ケトルベルを下ろすときに、腰を丸めたり、ケトルベルを落としたりするのを防げる。
(関連記事:ケトルベルスイングについて知っておくべきこと)
注意すること
腰痛がある場合は、通常、これらの筋力エクササイズを日々のワークアウトに組み込む前に、医療専門家の診察を受けることが重要となる。 そうすれば、痛みの原因を突き止め、問題に対処するための計画を立てる手助けをしてもらえるはずだ。
文:ジェシー・クイン