専門家が推奨する、ワークアウト前後の食事方法
食事
エキスパートお墨付きのガイドで、運動前後に何を食べるべきかをチェック。体を動かす準備を整え、効果を最大限に高めよう。
ワークアウトでスピードや筋力、パワーを向上させるには、どれだけ熱心にワークアウトに取り組むかが重要な鍵となることは、容易に想像できる。 しかし、運動の前後に適切な栄養補給をしていなければ、どれだけ熱心にトレーニングに励んでもわずかな効果しか期待できないと説明するのは、C.S.C.S.(認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト)、管理栄養士、運動生理学者、公認スポーツ栄養士の肩書を持つジェイソン・マホフスキーだ。
「ワークアウトの前に栄養補給することで、トレーニング中にベストの力を発揮するために必要なエネルギーを体に注入できます。 そしてワークアウト後の栄養補給は、リカバリー効果を高めるのに役立ちます」
また、管理栄養士であり、南カリフォルニア大学スポーツ局でスポーツ栄養学部のアシスタントディレクターを務めるケイティ・バルデスは、すべての食品(主要栄養素をバランスよく摂ったとしても)がワークアウト前後の栄養補給に適しているわけではないと話す。 つまり、「健康的」と見なされる食品だからといって、必ずしも栄養補給に適しているとは限らないのだ。
(関連記事:管理栄養士が教える、運動前に食べるといいもの)
ワークアウトの前後に摂るべきおすすめの食品をマホフスキーとバルデスが解説。このガイドを参考に、次のトレーニングで力を発揮し、長期的に最大限の進歩を達成しよう。
炭水化物、タンパク質、脂質といった主要栄養素について知ろう
人間は基本的な機能を働かせるために、主要栄養素として知られる炭水化物、タンパク質、脂質をバランスよく摂取する必要がある。 各栄養素に異なる役割や機能があるので、生きるため、そしてスポーツのパフォーマンスを最大限に発揮するためには、主要栄養素を組み合わせて摂取することが重要だ。 また、体は一人ひとり異なるため、 ある栄養素が他人より多く必要となる場合もある。 ここで、3つの栄養素について知っておくべきポイントをチェックしておこう。
- 炭水化物はエネルギーの源。 体内で炭水化物はグルコース(ブドウ糖)に分解され、エネルギーとしてすぐに使用されるか、グリコーゲンという形で筋肉や肝臓に蓄えられる。
- タンパク質の構成成分であるアミノ酸は、筋肉を作り、維持するのに欠かせない。 必須アミノ酸(EAA)は体内では作られないため、食品や、場合によってはサプリメントで摂取する必要がある。
脂質は、大切な主要栄養素であるビタミンA、D、E、Kの吸収に必要だ。 さらに、生命の維持に不可欠な器官をクッションのように保護し、細胞の成長を助け、持久力が必要なアクティビティで体が使うエネルギーの源にもなる。
ワークアウト前に食べるべき食品は?
ワークアウト前の栄養補給は、有酸素と無酸素のどちらのトレーニングでも、2つの時間帯に分けて考えるといいと、バルデスは言う。 最大限に吸収されるようにトレーニングの3~4時間前に食べる食品と、効果を高めるためにトレーニングの10~30分前に食べる食品があるのだ。
どちらの栄養補給でも、炭水化物をたっぷり摂るべきだとバルデスは指摘する。「体は炭水化物を主なエネルギー源として利用します。炭水化物の貯蔵量が十分でないと、筋肉組織がエネルギーとして使われることになります」
運動の3~4時間前が最適とはいえ、栄養補給に最適な時間帯は個人の消化能力によって大きく異なると、バルデスは付け加える。
「運動中に不快感に襲われないよう、食べ物を消化できる十分な時間を確保することを目指しましょう」つまり、食べ物を速く消化する人もいれば、消化に多少時間がかかる人もいるので、初めのうちはある程度試行錯誤する覚悟が必要とのことだ。
活動的な人は、運動の3~4時間前に主要栄養素を適切な割合で摂取するよう、バルデスはアドバイスする。
- 炭水化物:炭水化物の理想的な割合は、食事の50~60%程度。 果物、野菜、食物繊維が豊富なシリアル、全粒粉のパンやパスタなど、血糖値が上昇しにくく、食物繊維を多く含む炭水化物を選んでほしいとバルデスは語る。 血糖値が上昇しにくい低GIの食品は、長時間にわたってエネルギーレベルと血糖値を一定に保つ効果があるため、ハードなトレーニングで力を発揮したい場合に望ましい。
- タンパク質:タンパク質の摂取目標は、食事の25~30%。 魚、七面鳥、無脂肪のギリシャヨーグルトといった低脂肪のタンパク質源は、余分な脂質が含まれないため、消化にかかる時間を心配しなくて済む。
- 脂質:健康的な脂質の理想的な割合は、食事の20~25%程度。 健康的な脂質を含む食品には、ナッツやシード類、魚などがある。 脂質は体内で代謝燃料に変換され、筋持久力といったスポーツのパフォーマンスに欠かせない機能を支える。
これはどのようなメニューになるだろうか? バルデスのおすすめは、全粒粉パンに七面鳥とチーズを挟んだサンドイッチや、七面鳥のミートボールスパゲッティとグリーンサラダまたは果物、無脂肪のギリシャヨーグルトと果物を添えたプレッツェルだ。
一方、ワークアウトの10~30分前の補給食としてバルデスが推奨するのは、短時間で消化できる、少量で炭水化物を多く含む軽食。 アップルソース、グラノーラバー、噛んで食べるキャンディタイプのエネルギー補給食、果物などだ。
『Nutrients』誌で発表された2014年の研究によれば、ワークアウト前の栄養補給の効果は食品の形態に左右されない。 つまり、自然食品よりもゼリーや液体の方がよいというなら、それで大丈夫だ。
ワークアウト後に食べるべき食品は?
運動に力を注いだ後の栄養補給が進歩の維持や促進につながると、バルデスは語る。
「ワークアウトの後は、炭水化物とタンパク質を3対1の割合で優先的に摂取しましょう。 炭水化物は、トレーニングで消費されたグリコーゲン貯蔵を補い、効果的なリカバリーを促すために必要となります。 タンパク質は、筋肉に栄養を補給し、筋力アップや筋肉の回復を助けます」
この栄養補給をおろそかにしないようアスリートに強く勧めているとバルデスは話す。 「ワークアウト後に栄養補給しなければ、次のワークアウトに必要なグリコーゲンを蓄えられないし、筋肉の増強に必要なタンパク質も不足してしまいます」
(関連記事:筋肉をつけるために本当に必要なタンパク質の量とは?)
どの程度早く栄養補給するかは、運動の強度、トレーニングの目標、生活事情によって変わるだろう(トレーニング後にしっかり食事をする時間がない場合もある)。 米国運動協議会(American Council on Exercise)によると、筋肉量を増やそうとしている人であれば、ワークアウト後30分以内に適切な栄養を摂取することが望ましい。
リカバリーに必要なタンパク質と炭水化物を十分に含む食事としてバルデスが薦めるメニューは次の通り。
- プロテインシェイク
- チョコレートミルク
- マリナーラソースと鶏胸肉のパスタ
- ニンジンとフムス
- 七面鳥をのせた全粒粉パンと野菜
- ツナをトッピングした葉野菜と古代穀物
「こういった食品を摂ることで、体に炭水化物とタンパク質を補給できます。炭水化物はトレーニングの燃料として消費された状態にあり、タンパク質は構成成分であるアミノ酸が筋肉の修復を助けるからです。 有酸素トレーニングでも筋力トレーニングでも、リカバリーに炭水化物とタンパク質が必要です」とバルデスは語る。
文:ジュリア・サリバン(A.C.E.認定パーソナルトレーナー)