ドライニードルと鍼治療の違いとは?

健康とウェルネス

鍼が苦手でも、これらの手法を取り入れることで、筋肉の回復を大幅に短縮できる。

最終更新日:2022年10月12日
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ドライニードル対鍼治療:エキスパートが徹底解説

筋肉痛や関節痛を和らげるには、氷風呂、遠赤外線サウナ、深部組織マッサージなどさまざまな方法がある。こうしたリカバリー方法を経験済みなら、ドライニードルや鍼治療といった新たな分野に挑戦するのもいいかもしれない。

専門家が行うこの2つの方法であれば、多くのアスリートが研究に裏付けられた効能を実感できるはずだ。 それぞれの特徴について簡単に紹介しよう。

ドライニードル対鍼治療:エキスパートが徹底解説

ドライニードル

複数の研究によって、ドライニードルはリカバリー方法として有効であることが示されている。

例えば、2017年に『Journal of Orthopedic & Sports Physical Therapy』で発表されたメタ分析では、ドライニードルによって筋骨格の問題に起因する痛みが大幅に緩和され、筋機能の改善も見られた。

また、2021年発行の『Physical Therapy』誌に掲載された調査結果でも同様の結果が示されている。 42件の研究が調査され、ドライニードルと、痛みを緩和するその他の治療(マッサージ、加圧、キネシオテーピング、経皮的電気神経刺激術(TENS)など)が比較された。 その結果、ドライニードルでは、施術後72時間以内に優れた鎮痛効果が得られるケースが多いことが判明した。一部の研究ではその効果が数週間持続することも示されている。

ドライニードルで使用するのは細いモノフィラメントの鍼だ。長さは25~75ミリとさまざまで、肌を通り抜けて筋組織のトリガーポイントまで直接挿入される。そう説明するのは理学療法博士のジェイソン・カートだ。 トリガーポイントとは収縮して「固着」した筋繊維で、これは運動やマッサージではほぐせない。 鍼がトリガーポイントに到達すると、単収縮反応と呼ばれる現象が起こり、筋肉が緩む。ちょうど、筋肉の中で小さな風船が割れるような感覚だ。

単収縮反応では筋肉が緩んで痛みがすぐに緩和されるが、それ以外にもメリットがある。 というのも、カートによれば、トリガーポイントの問題が解決されないとモビリティと筋肉の健康に悪影響が及ぶ恐れがあるからだ。

「トリガーポイントの血液は脱酸素化し、酸化します。収縮状態では内圧が高まり、組織に血液を取り込むのが難しいからです」と彼は説明する。 「その結果、痛みに対する組織の閾値が下がり、筋肉に不快感が生じます。 さらに、体の衰弱にもつながる可能性があります。収縮したままの筋肉が機能しなくなり、関節の働きにまで影響するからです」

トリガーポイントを長期間放置すると筋肉のリカバリー機能が阻害され、アスリートのパフォーマンスへの悪影響も懸念される、と彼は付け加える。

カートによると、この治療にはリカバリー期間も組み込まれている。 患者は施術後、数時間は軽い痛みを感じるのが一般的で、最大36時間続く場合もある。 中には、治療するはずの痛みが一時的に強まったり、鍼を刺した部分で内出血したりする人もいる。 しかし、通常であれば、1~2日後に痛みはある程度改善されるはずだ、とカートは言う。大幅に緩和されるケースも多い。

ドライニードルは理学療法とセットで行うことが多く、どちらかの代替ではない、とカートは補足する。 2つの治療法を組み合わせることで、それぞれの効果が高まるそうだ。

ドライニードル対鍼治療:エキスパートが徹底解説

鍼治療

鍼治療は長い間、東洋医学で用いられてきた手法で、ドライニードルよりよく知られている。 そしてさまざまな問題、例えば精神的な落ち込み、慢性疾患の管理、睡眠、ストレスなどに対する有効性を示す根拠も十分ある

スポーツのリカバリー方法としても認識されるべきだが、実際にはそれほど注目されていないと語るのは、ノースウェスタン健康科学大学ヒューマンパフォーマンスセンターのジェイソン・ランドリー教授だ。彼はミネアポリスにあるアボット・ノースウェスタン病院の鍼師でもある。

ドライニードルと同様、鍼治療でも体の要所で細い鍼を肌に刺す。 伝統的な中国医学の専門家は、鍼治療を、体内を動き続けるエネルギーの流れ、いわゆる「気」を整えるための技法と定義する。

伝統的な中国医学では、人間の体には鍼を刺すポイントが2,000以上あると言われており、鍼師は患者の症状に応じて特定のポイントを選ぶ。例えばスポーツのけがのリカバリーで、けがによる慢性的な痛みや炎症による緊張が見られる場合は、両方に対応する鍼治療が提供される。 ランドリーによると、鍼治療は体内での内因性オピオイドの放出も促進する。 そのため、変形性関節症、腰痛、腱炎など、炎症と痛みが同時に発生している症状に対して特に有効だ。

例えば、『International Journal of Environmental Research and Public Health』に掲載された2020年の調査結果では、鍼治療のスポーツのけがへの適用に着目。この治療法が、膝のけが、スポーツ関連のヘルニア、さらには遅発性筋肉痛といった症状において短期的な痛みの緩和やリカバリーの促進に役立つ可能性があると認められた。

「トリガーポイントや、その他の筋骨格の問題に対処することは、酷使や緊張に関連するアスリートの軟組織損傷を防ぐのに効果的です」とランドリーは言う。 「鍼治療を総合的に理解すると、施術者は、こうした症状も含めて、どんなスポーツでもけがの防止やリカバリーに関連するさまざまな問題に対処できるようになります」

ドライニードル対鍼治療:エキスパートが徹底解説

ドライニードルと鍼治療の比較

どちらの治療法も、鍼を使用し、トリガーポイントに対処し、痛みの軽減とモビリティの改善に効果がある。では、両者の違いとは何だろうか? カートによれば、主な違いは鍼を刺す深さだ。

「鍼治療では特定のポイントに軽く刺して、体の『気』を回復させます」と彼は言う。 「ドライニードルでも同様の鍼を使用しますが、筋肉を反応させるために筋組織まで刺し入れます」

また、鍼治療がエネルギーの流れに重点を置くのに対し、ドライニードルは筋肉そのものをターゲットにする。 とはいえ多くの面で両者には共通点が多い、とカートは指摘する。

ドライニードル対鍼治療:エキスパートが徹底解説

両方やってもよい?

ドライニードルと鍼治療、どちらが効果的か迷っているなら、一方に決めなくてもいいので安心してほしい。 両方試しても問題ない。ただし、カートによれば、ドライニードルを1週間やったら次は鍼治療を1週間、というふうに連続して行うのはおすすめしない。どちらが自分にとって最適なのか、分からなくなってしまうからだ。

それよりも、 一方の治療法を週に1回、6週間試してから、施術を一切受けない2週間の「リセット期間」を設け、その後でもう一方の治療法を6週間試す方がいい。 このやり方なら、ドライニードルと鍼治療が自分の体とパフォーマンスにどう影響するか、より正しく把握できる。

ドライニードル対鍼治療:エキスパートが徹底解説

注意すること

ドライニードルと鍼治療はどちらも、スポーツリカバリーにおける潜在的な問題に関して一定の範囲で改善策となり得る。しかしカートは、血管疾患、糖尿病、虚弱、てんかん、出血性疾患といった症状がある人は最初に医師に相談することをすすめている。

また、鍼に対して心理的嫌悪を感じたり、極度の恐れを抱いたりする人(注射恐怖症)もいる。そういう場合は、別のリカバリー方法に切り替えた方がいい。 ちなみに、こうした治療法で使用する鍼は、注射針よりかなり細く、軽いことを補足しておく。 1時間程度、裁縫道具の針山のような姿になっても気にしないのなら、大きな効果を期待できるし、痛みに苦しんでいる人には特に有効だ、とカートは言う。

「筋肉が、ヒリヒリと、ではなくズキズキと痛むときは、何らかの治療が必要だという重要な兆候です」と彼は指摘する。 「ドライニードルも鍼治療も、痛みを緩和してアスリートとして復帰するのに十分役立ちます」

文:エリザベス・ミラード

ドライニードル対鍼治療:エキスパートが徹底解説

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公開日:2022年9月13日

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