遅発性筋肉痛(DOMS)とは?

スポーツ&アクティビティ

筋肉のこわばりや痛みは、よくある運動の副作用だ。 そのメカニズムを知り、症状を軽減するヒントも学ぼう。

最終更新日:2023年3月21日
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遅発性筋肉痛(DOMS)とは?

毎朝欠かさずランニングする人も、週末だけ運動に励む人も、ハードなワークアウトの1〜2日後にやって来る筋肉痛を経験したことがあるだろう。 遅発性筋肉痛(DOMS)と呼ばれるこの痛みは、愉快なものではない。しかし体を鍛えている人には、ごく当たり前の現象だ。

遅発性筋肉痛(DOMS)が起こる理由

アメリカスポーツ医学会によると、DOMSは筋肉の修復プロセスの副作用だ。

運動によって生じる微細な筋断裂は、成長に必要な通常のプロセスでもある。 筋断裂が起こると、体では修復プロセスが始まる。筋肉が腫れたり、炎症が起きたりするのもこのプロセスの一部だ。 この炎症こそが、おなじみの痛みの原因である。そう語るのは、マット・タンバーグ(カイロプラクティック医師、 認定ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト)だ。

(関連記事:専門家に聞く、激しいワークアウトをした後の筋肉痛の対処法)

遅発性筋肉痛は、新しい運動やアクティビティに挑戦したときや、普段よりも負荷の高いワークアウトをしたときに発生する。 たとえば、いつもより重いウェイトを持ち上げたり、エクササイズの反復回数を増やしたり、いつもより長い時間にわたって運動したりすると、DOMSを引き起こす可能性がある。

運動によっては、特に筋肉の損傷が大きくなる場合もある。 「エキセントリック収縮やネガティブ運動とも呼ばれる運動は、ワークアウト後の痛みの主な原因だと考えられています」と語るのはトム・ビッガート博士(理学療法博士、 認定ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト)だ。 学術誌『Frontiers in Physiology(生理学最前線)』に掲載された2019年5月のレビューによるとは、エキセントリック収縮では筋肉で使用される筋繊維が少ないため、筋繊維への圧力が強まっている可能性がある。

エキセントリック収縮の実例を確認したければ、下り坂を走ったり歩いたりしている人に注目しよう。 バイセップスカールやスクワットで、上体や腕を下げていく動作もこれにあたる。 このような動きを重点的に取り入れたり、何度も繰り返したりすると、コンセントリック(短縮性)やアイソメトリック(静的)中心の運動よりも痛みが強くなりやすい。

一般的に、DOMSはワークアウトの12~48時間後に発生して最長で72時間ほど続く。

遅発性筋肉痛は効果的なワークアウトの証拠か?

この痛みの発生を効果的なワークアウトの指標にしてはいけない(ビッガート博士談)。

痛みの発生は、筋肉の負担に応じた治癒プロセスが始まるという合図だ。 だからといって、必ずしも効果的なワークアウトができているとは限らない(タンバーグ医師談)。

フィットネス目標の達成を目指すため、ワークアウトのたびにDOMSを経験する必要もない。 適切に計画されたプログラムであれば、非常に強い痛みはめったに感じないはずだ(ビッガート博士談)。 ちなみに「非常に強い痛み」とは、1(痛みなし)から10(激痛)の尺度にあてはめて7以上に相当する痛みのことである。

DOMSによって次のワークアウトに支障をきたす可能性もある。 痛みが強くて自然に動けないとトレーニングの進捗が遅れ、継続的に運動できないことから進歩の妨げになる可能性さえある。

(関連記事:体が痛むときもワークアウトすべきか?

重症になると、DOMSによって日常生活や運動中の動作パターンが変化することもある。 脚が痛ければ歩き方が変わるかもしれないし、肩に凝りと痛みがあるときは他の筋肉に頼って物を持ち上げようとするかもしれない(いわゆる代償運動)。 こうした変化は特定の筋肉、靭帯、腱、関節への負荷を高める。つまりDOMSが慢性化すると、けがのリスクが増大する恐れもある(ビッガート博士談)。

DOMSとは異なった「使いすぎ」による筋肉損傷の初期症状もある。このような症状は、ある兆候から識別できる。

DOMSの発症と回復は、ワークアウト後2〜3日以内に起こり、痛みは患部の筋肉全体で感じられる。 一方の「使いすぎ」による損傷は、ワークアウト中の特定の動きで始まることが多く、患部を指で押すとピンポイントで特定できる。痛みが関節付近で発生しやすいのも特徴だ(ビッガート博士談)。

遅発性筋肉痛の予防法と対処法

ワークアウト後の数日間にわたって、非常に強い痛みを感じながら体を動かすような状況は憂鬱だ。 幸いなことに、DOMSには予防と対処の方法がある。

DOMSの予防法:

  1. 1.ウォームアップとクールダウン

    遅発性筋肉痛(DOMS)とは?

    ワークアウトの前に動的な運動をやっておくと、体に無駄な負担をかけずに済む(タンバーグ医師談)。 そして2007年の学術誌『Australian Journal of Physiotherapy(オーストラリア理学療法学会誌)』に掲載された研究結果によると、ウォームアップの実践にはワークアウト後の最大2日間にわたって筋肉痛を緩和する効果がある。

    筋肉を使う前にウォームアップを入れると、ワークアウト中の損傷が軽減されてDOMSが和らぐ。またスタティックストレッチとセルフマッサージでクールダウンすると、酸素を多く含んだ血液が組織に送り込まれるので、血行が促進され回復が早まるという。 こうやってワークアウト後の痛みを抑えられるのだ(タンバーグ医師談)。

  2. 2.新しい運動には徐々に体を慣れさせる

    遅発性筋肉痛(DOMS)とは?

    新しいワークアウトプログラムを始めるときや、新しい動きを試すときは、トレーニングのセット数も反復回数も少なめにしよう。 徐々に強度を上げていくことで痛みが最小限に抑えられ、運動の正しいテクニックが身につく(ビッガート博士談)。

痛みを軽減する方法:

  1. 1.体を動かす

    遅発性筋肉痛(DOMS)とは?

    DOMSが発症している間は、どんなに簡単な動きでも難しく感じるだろう。それでも実際に体を動かすと、筋肉の緊張が和らいで気分も良くなるものだ(ビッガート博士談)。

    「活動しないでいると、再び硬くなってしまいます」と博士は言う。 簡単なストレッチも気持ちいいが、筋肉の緊張をほぐすのが目的なら、血行を改善する軽めのアクティビティ(いわゆるアクティブリカバリー)が最適かもしれない。 ウォーキングや負荷の低いサイクリング簡単なヨガのクラス、あるいは軽いウェイトを使用した筋力トレーニングなどがおすすめだ。 エキスパート(認定パーソナルトレーナーや有資格の理学療法士)に相談して、自分の体と目標に最適なアクティブリカバリーのルーティンを確立しよう。

  2. 2.マッサージ

    遅発性筋肉痛(DOMS)とは?

    筋肉と結合組織をマッサージして圧力を加えると、血行の改善が期待できる。 血行が良くなると、損傷した部分に運ばれる栄養素と酸素の量が増え、圧痛と腫れ(酷使された筋繊維の内部で発生)が緩和される。 マッサージの手法は、マッサージガンからセルフ筋膜リリース(SMR)までさまざまだ。SMRでは、フォームローラー、ラクロスのボール、マッサージスティックなどが役に立つ。

    2015年の学術誌『International Journal of Sports Physical Therapy(国際スポーツ理学療法学会誌)』に掲載されたレビューによれば、運動後のフォームローリングには血行を促す効果があるので、可動域を拡大してDOMSを低減してくれる。

  3. 3.ワークアウト後30分以内の栄養補給を重視する

    遅発性筋肉痛(DOMS)とは?

    タンバーグ医師によると、体への適切な栄養補給によってDOMSから早く回復できる。 全米スポーツ医学協会は、運動直後の30分間をリカバリーのための食事や軽食に最適な時間帯と位置付けている。血流が増加し、炭水化物の吸収を促進するインスリン感受性も向上しているからだ。

    運動中に消費した炭水化物を補給するには、体重1kgあたり1~1.5gの炭水化物を摂取しよう (体重68kgなら68~102gだ)。 筋肉の修復に必要なアミノ酸の原資となるタンパク質も重要だ。 国際スポーツ栄養学会(ISSN)のポジションペーパーによると、1日に摂取すべきタンパク質は体重1kgあたり1.4~2gだ。 タンパク質の吸収を最適化するため、1日を通じて3~4時間おきに均等摂取するのが理想的だ(ISSNによる推奨)。

    また、質の高い睡眠適切な水分補給が習慣化されていると、こうした栄養素の吸収と活用が促進され、DOMSによる筋肉の損傷を早期に回復できる。

    自分に一番合ったサポートを求めるなら、管理栄養士に相談して個別の分析と指導を仰ごう。

文:ローレン・ベドスキー

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公開日:2023年3月21日

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