デッドリフトのメリットをエキスパートが解説
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全身を使う基礎的なエクササイズで、ポステリアチェーン(筋群)の筋力と筋肉量を向上させよう。
ジムの中を歩いていると、バーベルやダンベル、ケトルベルを下腹部に向けて引き上げるアスリートを目にすることがあるだろう。 好奇心をそそるこの運動こそ、 デッドリフトだ。
このエクササイズは、あらゆる筋力トレーニングに欠かせない運動だと話すのは、CrossFitレベル1トレーナーのメーガン・デイリー。
「デッドリフトは筋力を鍛える基礎的な運動です。 それに、驚くほど機能的。 デッドリフトをアレンジしたエクササイズをクライアント向けのプログラムに組み込まない理由などありません」
「機能的」とされるエクササイズは、ワークアウト(ランニングなど)や日常生活での動き(ガレージで重い道具箱を持ち上げるときなど)を含め、エクササイズ以外のさまざまな動きを向上させる効果がある。
デイリーによると、ローマニアンデッドリフト、伝統的なバーベルデッドリフト、スモウデッドリフトなど、数種のバリエーションがあるデッドリフトは、ポステリアチェーンを鍛えるエクササイズ。つまり、ハムストリングや大臀筋など背面の筋肉をターゲットにする。
米国運動協議会(American Council on Exercise)では、ポステリアチェーンのトレーニングを、筋力、パワー、姿勢、柔軟性のすべてを改善できる大切な運動だと説明している (スクワットもポステリアチェーンのトレーニングに含まれる)。 米国運動協議会によれば、正しいフォームでデッドリフトに取り組むと、筋肉の収縮と弛緩が「鎖(チェーン)のように」調和するという。
また、デッドリフトの動きでは、下半身だけではなく、ポステリアチェーンに関連する多くの筋肉を使うため、なおのこと効果が高いとデイリーは話す。 「デッドリフトで筋力がつくほど体が整い、筋疲労を起こさずに一日中活動できるようになります」
エキスパートが解説する、デッドリフトに期待できる6つのメリットをチェックしよう。
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デッドリフトに期待できる6つのメリットを解説
1.広範囲の筋肉がターゲットになる
デッドリフトで主に使うのは脚の筋肉だが、ウェイトを安定させるために背中、コア、上半身も使うため、全身にとても効果的なエクササイズになると、認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト(C.S.C.S.)、登録栄養士、運動生理学者の肩書を持つジェイソン・マホフスキーは語る。
では、デッドリフトはどの筋肉に効くのだろうか? 活性化されるのは、腰、大臀筋、下半身、コア、背中の筋肉だ。 具体的に、デッドリフトで鍛えられる筋肉群には、以下のものが含まれる。
- 臀筋(大臀筋、小臀筋、中臀筋):各種デッドリフトの動きにおいて、腰を伸ばし安定させる役割を果たす。
- ハムストリング:太もも裏側にある、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋などを指す。 これらの筋肉は股関節伸筋とも呼ばれ、 大臀筋と連動して腰を前に動かしたり、直立姿勢を作ったりする。
- 大腿四頭筋:大腿部前面に位置する4つの筋肉で、デッドリフトの最初のリフティング時に膝を伸ばす動きをサポートする。 大腿四頭筋に含まれるのは、腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋の4つだ。
- 僧帽筋:背中の上部から首にかけてついている筋肉を指す。 デッドリフトのあらゆるエクササイズで、バーを持ち上げるときや直立するときに肩を安定させる役割を担う。
- 広背筋:背中にある羽のような形の筋肉で、バーを持ち上げたり下ろしたりする際に、中背部を強く安定させる役割を果たす。
- 脊柱起立筋:背骨の両側についている複数の長い筋肉で、デッドリフトを行う間、背中をフラットに保つ役割を果たす。 また、トップポジションでの直立時には、胴体を安定させ、姿勢の維持を助ける。
- 前腕とふくらはぎ:活性化の程度はあまり高くないが、バーを持ち上げるときに上記の筋肉を支える役割を担う。
2.パワーが向上する
バスケットボール、バレーボール、サッカーをプレーする人やジャンプ力を上げたい人にデッドリフトは有効だと、マホフスキーは言う。
「デッドリフトに取り組めば、パワーを発揮する能力やジャンプ力の向上につながります。 パワーの発揮と関連のある垂直跳びの記録が伸びるでしょう」
2015年に『Journal of Strength and Conditioning Research』に掲載された研究では、
10週間にわたってデッドリフトに取り組むと、膝の伸筋群と屈筋群の両方を力強く曲げ伸ばしする能力または「最大トルク」が向上する可能性があることが示された。 デッドリフトによって対象者の垂直跳びの記録も向上したという。
デッドリフトの動きは、パワークリーンの一部でもある。パワークリーンは4年に一度の世界大会で行われるウェイトリフティングの動作。バーを上へと持ち上げるパワーと速度は、個人の能力次第だ。
3.下半身の筋力を強化できる
デッドリフトを正しく行うと、動員された筋肉がかなり燃焼していると感じるはずだと、マホフスキーは話す。 最も大きな筋肉である大臀筋とハムストリングをターゲットにするからだ。 大臀筋とハムストリングを頻繁に鍛えると、筋力が向上するという。
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トレーニングで筋力が向上する速度は場合によって異なると、マホフスキー。
「ウェイトリフティングによって最初の数週間で見られる筋力アップは、一般的に神経系の適応との関連性が高いです。動きの効率が良くなり、筋肉をより速く燃焼できるようになります。 実際の筋肉量やパワーにはっきりした変化が現れるまでには、通常、少なくとも6~8週間かかります」
デッドリフトといえばパワーと筋力の向上だが、全身の筋力アップは持久力の向上にもつながる。つまり、大きな筋肉をより速く、より長時間バテずに動かせるようになるのだ。
では、この筋力トレーニングは、どの程度の頻度でワークアウトに取り入れるべきだろうか? 認定パーソナルトレーナーに相談し、下半身の筋力強化のためのワークアウト計画を立てるのがベストだが、マホフスキーによると、下半身の筋力向上に関する大半の調査で、対象者はデッドリフトを週に2~3回行っていたという。
「従来のウェイトリフティングプログラムの多くは、スクワットやランジといった他の脚のエクササイズを含む広範なトレーニングプログラムの中に、週に1~2回デッドリフトを組み込みます」
繰り返しになるが、認定パーソナルトレーナーに相談して、自分の筋トレの目標に合った最適なトレーニングプランを組み立てることが重要だ。 今のフィットネスレベルに応じて、セット数や繰り返しの回数、ウェイトなど、運動の負荷を調整することが目標達成への近道になる。
4.背中とコアを活性化する(痛みを緩和できる可能性もある)
超高重量のウェイトを使ってデッドリフトを行えば、確かにチャンピオンの気分が味わえるが、それはデイリーにとって、デッドリフトから得られるメリットのごく一部に過ぎない。 彼女が着目するのは、整形外科関連のメリットだ。 「デッドリフトで背中とコアの筋力が向上します。 背中の筋力が強くなるということは、背中の回復力もアップするということになります」
前述したように、デッドリフトはポステリアチェーンに効くエクササイズであり、体の背面の筋肉を活性化する。 ポステリアチェーンのトレーニングを頻繁に行うと、背中の痛みが和らぎ、全身の姿勢が良くなることが、研究で明らかになっている。
デッドリフトの大事な要素はコアの筋力を高める効果だと、マホフスキーは説明する。 「デッドリフトで持ち上げたウェイトを安定させるための力を発揮することで、コアの筋肉組織がかなり活性化されます」 デッドリフトでは胴体を安定させたまま起こし、ウェイトを持ち上げるために、コアを動員しなければならないからだ。
ただ、デッドリフトは正しく行わなければ危険を伴う。 デッドリフトを正しく行うために、認定パーソナルトレーナーと一緒に実施することをおすすめする。
5.とりわけ骨密度の維持に役立つ
骨塩密度を見れば、骨の強さがわかる。 骨塩密度が低いほど、けがのリスクが高くなるというわけだ。 骨密度を高めるという点において、デッドリフトは特に効果が高いと、マホフスキーは話す。
「デッドリフトを行えば、骨に筋肉からの刺激が加わるため、骨密度を維持できる可能性があります。 デッドリフトで使う筋肉に骨が引っ張られることで、骨の成長が促進されるのです」
厳密に言うと、レジスタンス運動ならどんなトレーニングでも骨塩密度を改善できる。 しかし、デッドリフトでは多くの筋肉に対して同時により重い負荷をかけられるため、とりわけ効果が見込めるとマホフスキーは語る。
「デッドリフトでは全身を使ってウェイトを安定させます。手首と腕を使ってウェイトをつかみ、コアを意識してウェイトを安定させ、脚を使ってウェイトを上げていくのです。 これにより、全身の骨の健康を促進できます」
6.とにかく筋肉量を増やせる(サルコペニアを予防できる)
一般的にレジスタンストレーニングにも筋肉量を増やす効果はあるが、デッドリフトでは複数の筋肉に同時にかなりの負荷をかけられるため、負荷のかかるトレーニングを定期的に実施すれば筋肉の成長が早くなるだろうと、マホフスキーは話す。
「デッドリフトで筋肉に大きな負荷をかけると、体は徐脂肪筋肉量を維持しようとします」
また、筋肉を維持することが加齢により筋肉組織が衰えるサルコペニアを防ぐ鍵になると、マホフスキーは続ける。 デッドリフトのような、複数の関節を動かすコンパウンドエクササイズは、単一の関節を動かすアイソレーションエクササイズより筋肉に加わる刺激が大きく、筋肥大(骨格筋線維の肥大、つまり筋肉の成長)を促進する傾向があることが、研究で明らかになっている。
結論
できれば専門家の指導のもとに、ローマニアンデッドリフト、スモウデッドリフト、バーベルを使う従来のデッドリフトなど、数種のデッドリフトを交互に実施すれば、健康の向上が期待できる。 ダンベル、ケトルベル、バーベルのいずれを使うにしても、デッドリフトはいつものワークアウトに組み込む価値があるエクササイズだ。
文:ジュリア・サリバン(A.C.E.認定パーソナルトレーナー)