コンパウンド種目(多関節運動)について知っておくべきこと

スポーツ&アクティビティ

コンパウンド種目(多関節運動)を筋力トレーニングに組み込むと、短時間のワークアウトでも高い効果が上げられるようになる。

最終更新日:2022年11月11日
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コンパウンドエクササイズ:その特徴とやり方

筋肥大と筋力強化は、多くのメリットをもたらす。 さまざまなスポーツの目標達成に役立つだけでなく、健康全般の向上にも大きく貢献する。 ある研究によると、レジスタンス運動を週に1時間実践するだけで、心臓病や癌などの慢性疾患が発症しにくくなる。

限られた時間を最大限に活かすには、コンパウンド種目(多関節運動)に的を絞ることも有効だ。 コンパウンド種目(多関節運動)の内容、取り組み方、事前に知っておくべきポイントをエキスパートが解説する。

コンパウンド種目(多関節運動)とは?

コンパウンド種目(多関節運動)は、1つ以上の大きな筋肉領域と2つ以上の主要な関節を動かす運動のこと。そう説明するのは、理学修士号を持つエンヤ・シェンク (管理栄養士、認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト)だ。

特に効果的なコンパウンド種目(多関節運動)は、次のとおり。

  • スクワット
  • デッドリフト
  • ランジ
  • ステップアップ
  • プッシュアップ
  • チンアップ
  • グッドモーニング
  • ベンチプレス
  • オーバーヘッドプレス
  • ロウ

コンパウンド種目(多関節運動)は、アイソレーション種目(単関節運動)と対立する概念である。アイソレーション種目(単関節運動)は、小さめの筋肉領域に働きかけ、上腕、首、前腕、腰、下肢などの主要な関節を1つだけ使う運動だ。 その一例が、 上腕二頭筋を鍛えるバイセップカール。 肘だけを動かし、コンセントリック運動(カールアップで筋肉が縮む)とエキセントリック運動(最初のポジションに戻すことで筋肉が伸びる)の繰り返しによって上腕二頭筋が鍛えられる。

次に、バイセップカールのようなアイソレーション種目(単関節運動)と、オーバーヘッドプレスのようなコンパウンド種目(多関節運動)エクササイズを比較してみよう。 オーバーヘッドプレスは、両手にウェイトを1個ずつ持ち、肩の高さまで上げる。 そこからウェイトを頭上に押し上げ、最初の姿勢に戻る。この一連の動作で、肘と肩の関節が両方とも動いている。 この動作を完了するために肘と肩の関節を動かすので、その周囲の筋肉群の収縮が必要になる。

次に、アイソレーション種目(単関節運動)のバイセップカールと、コンパウンド種目(多関節運動)のデッドリフトを比較してみよう。

コンパウンド種目(多関節運動)の代表例が、デッドリフトだ。 「デッドリフトでは、体のあらゆる部分が鍛えられます。 特に背中の広背筋、ハムストリングや大臀筋などのポステリアチェーン、体幹、内転筋などです」と語るのは、クリス・トラヴィス(NASM認定パーソナルトレーナー)だ。 「デッドリフトでは、基本的に全身を意識する必要があります」

すべてのコンパウンド種目(多関節運動)が、全身をターゲットにしている訳ではない。そのなかでデッドリフトは、複数の筋肉と関節に働きかけないと正しく実践できない運動の好例だ。

(関連記事:毎日の腕立て伏せから得られる9つのメリット

コンパウンド種目(多関節運動)から得られる4つのメリット

コンパウンド種目(多関節運動)の優れている点は、複数の筋肉群を同時に鍛えられること。そのため努力に見合った効果が得やすいとトラヴィスは言う。 理由は次のとおり。

  1. 1.筋力を効率よく強化

    コンパウンド種目(多関節運動)は、アイソレーション種目(単関節運動)と同様に筋肉の成長と強化を促す。だが両者を比較すると、時間効率に優れた便利な方法であることが23種類の研究をまとめた報告で明らかになった。 (ただしボディビルディングやリハビリテーションプログラムで筋肉のバランスを修正する場合など、アイソレーション種目の方が効果的な場合もある)

    つまり、レジスタンス運動に費やせる時間が限られている場合に役立つということだ。 コンパウンド種目(多関節運動)は、1つの運動で複数の筋肉群を動かす。そのため全身を効率よく鍛えるワークアウトが組み立てやすいのだ。 通常の筋力トレーニングが苦手な人にも朗報だ。ジムに滞在する時間も節約できる。

  2. 2.大幅な筋力アップも可能

    筋力トレーニングで使う筋肉群が多いほど、テストステロンなどの同化成長ホルモンが分泌される。つまり細胞組織を構築するホルモンの放出量が多くなるのだとシェンクは言う。

    アマチュアのアスリートを対象にした2019年の調査では、下半身をターゲットにした単関節運動と多関節運動の両方で筋力アップが認められた。しかし筋肉増強という点では、多関節運動の方がより優れていることがわかった。 筋力アップの差はわずかであったものの、多関節運動の方が時間効率よく筋力アップできたと研究者たちは述べている。

    また、2017年の学術誌『Frontiers in Physiology(生理学最前線)』に掲載された小規模な研究でも、若い男性を対象にした実験の結果が公表されている。多関節運動は、単関節運動よりも筋力と心肺機能の両方を効果的に改善できることがわかった。

  3. 3.コアを鍛える

    コンパウンド種目(多関節運動)では、体を安定させるために無意識でコアを使っているとトラヴィスは指摘する。 調査によると、スクワットやファーマーズキャリーなどの機能的なコンパウンド種目(多関節運動)は、ハンギングレッグレイズやシットアップなどの典型的な腹筋種目よりもコアの安定性を高める。 理由を説明しよう。 米国運動協議会(American Council on Exercise)によれば、コンパウンド種目(多関節運動)の動きが完全な運動連鎖(キネティックチェーン)として作用するためだ。運動連鎖とは、さまざまな運動時に駆動される相互接続された関節と筋肉のはたらきを意味する。 たとえば、下半身の運動連鎖はつま先から背骨まで。

    それでも、コアに的を絞った運動をルーティンに追加したい人はいるだろう。 筋力トレーニングの最後にコアワークを入れる人もいます。ウォーミングアップの一部として実践してもいいでしょう。

    「私は、体を動かす準備としてコアワークを取り入れています。 重いリフティングの前にやっておくのも効果的で、上半身と下半身のつながりを体に意識させることができます」とトラヴィスは語る。より良いフォームで適切に運動できれば、けがの予防にもなるからだ。 このような用途には、プランクのバリエーションやベアクロールなどがおすすめだ。

  4. 4.毎日の活動を支える万全な体づくり

    アイソレーション種目(単関節運動)では、ターゲット以外の筋肉を緊張させる必要がない。 「ウェイトを上下にカールさせるとき、体の他の部分を動かす必要はありません。 でもコンパウンド種目(多関節運動)は多くの筋肉群と関節を使うため、体を動かし始めてから安定させるために別の労力が必要になります」とトラヴィス。

    「押す、引っ張る、しゃがむといった動作は、食料品が入った複数のバッグを運んだり、階段を上ったり、子どもを抱き上げたりする日常の動作に似ています。だからコンパウンド種目(多関節運動)を実践しているうちに、このような家事も効果的かつ安全にできる体になっていくのです」とマーク・ボイル(ファンクショナル・ストレングス・トレーニング認定コーチ)は言う。

    たとえばファーマーズキャリー(ウェイトなどの重りを持ったまま歩く運動)も、買い物先で食料品を運ぶ筋活動(および握力)を完全に模倣したものだ。 もちろんコンパウンド種目(多関節運動)が万能という訳ではない。 明確なスタイル目標(特定の筋肉群を成長させるなど)がある場合は、アイソレーション種目(単関節運動)エクササイズに集中した方が効果的だとトラヴィスは言う。

    (関連記事:プッシュプルワークアウトとは? エキスパートの解説

コンパウンド種目(多関節運動)の実践前に知っておくべきこと

ルーティンを始める前に、次の3点を念頭に置いて安全とモチベーションを維持してほしい。

  1. 1.フォームが重要

    どんな筋力トレーニングでも、重要なのは姿勢と技術だ。特にコンパウンド種目(多関節運動)ではフォームが大きな違いを生み出す。 まずはウェイトを使わずに、適切なフォームで各運動がこなせるようになろう。 動きをしっかりマスターしたら、ウェイトを使った運動に進む。重量は徐々に増やしていけばいい(トラヴィス談)。

    フォーム習得のため、時には認定パーソナルトレーナーやストレングスコンディショニングスペシャリストの指導も受けてみよう。

  2. 2.まずは筋肉アップ

    「コンパウンド種目(多関節運動)には多くの筋肉が関係しているため、けがの可能性も高くなります」とシェンク。 筋肉の主な役割の1つは、関節を守ることだ。 けがを防ぐには、運動前と運動中に体を「動かしておく」(または筋肉を活性化する)のがシェンクのおすすめだ。

  3. 3.焦らない

    筋力や見た目の変化は、一晩で起こるものではない。 シェンクによると、体が適切なフォームを身につけるのにおよそ4~6週間かかる。

    つまり、筋力の増加と体組成の変化が見えるまでには相応の時間が必要となるのだ。 「この期間には、脳と神経系がそれぞれの動きをより効率的にこなす方法を学んでいます。この学びが、とても重要なのです」とシェンクは言う。 辛抱強く、自分のルーティンをしっかり続けよう。効果はやがて現れるはずだ。


    文:ジェシカ・ミガラ

公開日:2022年11月11日

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