ランナーが注意すべき怪我を理学療法士が解説
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ランナーがトレーニング中に注意すべき怪我の兆候と症状について、理学療法士の解説を参考にしよう。
ランニングを始めたばかりの人であれ、経験豊富なランナーであれ、怪我をせずに長くランニングを続けていくために、できることは何でもしておきたいという思いはたぶん同じだろう。 年齢を重ねるごとに、ウォームアップやクールダウンをせずに運動をすると、その結果として怪我をするリスクが高まっていくのは周知の事実だ。
経験値に関係なく、またトレーニングの強度とは別に、ハードなトレーニングには怪我を繰り返すリスクが伴う。 ここでは、ランナーによくある怪我や注意すべき兆候、そもそも怪我をしないようにする方法について、エキスパートの解説を紹介しよう。 その前に注意点がひとつ。怪我に対処する最善の方法は、医療関係者に相談することだ。 正確な診断や治療計画については、医師や、医療の資格を持つプロ(理学療法士など)に相談しよう。
ランナーによくある怪我
初心者であれ経験者であれ、ランニングには必ず怪我のリスクが伴う。 ランナーの怪我といえば、足を踏み外したり、足首をひねったりすることによって生じる急性外傷が思い浮かぶだろうか。だが、理学療法博士であり、NYU Langoneのスポーツ整形外科センターで理学療法士を務めるコーリー・パスカレリによると、多くの怪我はオーバーワークが原因で引き起こされる。
また理学療法士で理学療法博士でもあるデビッド・ジョウによると、ランナーの怪我で最も一般的なものは、アキレス腱炎、腸脛靭帯症候群(通称ITバンド症候群)、足底筋膜炎、膝蓋骨腱炎 (通称ランナー膝)、およびシンスプリント だ。
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「ランナーによく見られる怪我は、多くの場合、筋肉の不均衡、オーバートレーニング、不適切なランニングフォーム、そして不適切なシューズという問題が重なることで徐々にそのリスクが高まります」とジョウは語る。
ランニングという同じ動作を繰り返す運動の性質上、軽度ではあるが通常とは違う負荷が関節と関節周辺の軟部組織に繰り返しかかることになる。 このため時間の経過とともに、関節と軟部組織の強度や柔軟性が低下し、摩耗したり、最終的には損傷へと繋がっていく。 また、パスカレリは、ランニングや走る距離に対して身体が慣れていない場合や準備ができていない場合にも怪我の可能性は高まると語っている。
そのほか不適切なランニングメカニクスや、足に合っていないシューズ、または必要なサポートのないシューズを履くことでも、反復運動損傷が引き起こされることがあるとジョウ。 こうした問題を把握して対処するには、医療専門家やコーチにアドバイスを求めるのが得策だ。
ランニングによる怪我を防ぐ方法
このような怪我を防ぐには、オーバートレーニングによる症状や兆候をどう見極めるかを知っておくとよいだろう。発症リスクが上昇するのは、急激に走る距離を伸ばしたり、極端に強度を上げたりしたときだ。 オーバートレーニングの症状としてジョウが挙げているのは、疲労、睡眠障害、安静時心拍数の増加に加え、病気にかかりやすくなったり、気分やモチベーションなど気持ちの面での変化といった症状だ。
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「アスリートは往々にしてトレーニングのために走るのですが、実は走るためにもトレーニングが必要なのです」とジョウ。 そのためには、ランニング計画を立てることだと彼は言う。コーチや専門家の助けを借り、自分の目的とスケジュールに合わせて計画を立てれば、組織と戦略が備わるというわけだ。
万人向けの計画に自分なりの変更を加えるのもいいが、コーチの支えには何ものにも代えがたい価値がある。 ランニング計画は、自分のレベルと目標に合わせたものにしよう。土台を築き、徐々に成長していくという点で一貫していることが重要だ。
また、計画にどんなメニューを盛り込むにしても、トレーニングをがむしゃらにやり抜くのではなく、走る距離は徐々に伸ばしていくこと、自分の身体の声に耳を傾けることが大切だとパスカレリは語っている。
ランニングの後は、ストレッチやフォームローラーを使ったマッサージを行うこと以上に、リカバリーワークが重要になる。 充分な睡眠と食事でエネルギーを蓄え、ランニングを休む日を設けることが、特に初心者にとっては、重要な怪我の防止策だ。
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トレーニング戦略を立てることに加え、「クロストレーニングを取り入れると、筋力や可動性が強化され、ルーティンに変化をつけることもできます。こうすることでランニングの反復運動による負荷を相殺し、重大な怪我を防ぐことができます」とジョウは語っている。
水泳やヨガ、エリプティカルマシンを使用したワークアウト、筋力トレーニングといった補完的な運動を取り入れたクロストレーニングを行えば、心肺持久力を高められるだけでなく、身体を鍛えながら、心と身体を休ませることが可能になるという。 また、筋力トレーニングに関して言えば、プライオメトリックエクササイズや、片側ずつ行えるトレーニング、身体を前後・上下・左右に動かしたり、回旋させたりする運動をジョウは推薦している。
それでももし怪我の兆候が見られたら、すぐに理学療法士に相談しよう。悪化するまで放置するのではなく、リハビリ計画を作成して先手を打つことが大切だ。
余裕があれば、コーチ、パーソナルトレーナー、理学療法士で構成されたサポートチームを作れれば一番よい。トレーニングの過程で疑問を感じたり、いつもと違う痛みが生じたりした際に、心強い味方となってくれる。 可能であれば、コーチと理学療法士とのセッションの機会を何度か設けることも大いに有用だ。
当たり前のことのようだが、ランニング前後のウォームアップとクールダウンなどの基本を怠らないように。 足、足首、腰、体幹をターゲットにしたプレハビリテーションプログラムを継続的に行うことも、ランニングによる怪我の防止に役立つだろう。
文:タマラ・プリジット