ワークアウトの前後にコーヒーを飲むメリット
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パフォーマンスを高める燃料か。はたまたエクササイズの邪魔者か。 ワークアウトにあわせてコーヒーを飲むタイミングについて、スポーツ専門家の意見や学術調査の結果を紹介しよう。
ワークアウトに向けて準備を整えながら、水分補給はもう済ませた。そんなとき、コーヒー1杯でエネルギーをプラスしようと思うことがあるかもしれない。 あるいはワークアウト後の疲労回復に、1杯のコーヒーを役立てようと考える人もいるだろう。 コーヒー党なら、ワークアウトの前後に1杯ずつ飲みたくなるかもしれない。
ワークアウトの前後に、コーヒーを飲むのが得策といえるタイミングはあるのだろうか? 専門家によると、どのタイミングで飲んでもメリットはある。しかし忘れてはならない落とし穴もあるようだ。 お気に入りのコーヒーショップへ急ぐ前に、次の事実を把握しておこう。
メリット:カフェインはスポーツサプリメントとしての効果が実証済み
オハイオ州立大学ウェクスナー・メディカル・センターでスポーツ栄養学研究開発を専門とするキャシー・ヴァヴレック(管理栄養士)によると、コーヒーから摂取したカフェインによってエクササイズ中の苦しさが軽減されるため、ハードなワークアウトに耐えられるようになることが多い。
「20分を越える持久力トレーニングと高強度のエクササイズでは、カフェインの摂取が有効であると証明されています」とヴァヴレックは語る。 カフェイン含有サプリメントを飲んでもいいが、もちろん昔ながらのコーヒーでも効果がある。
例えば、2013年に学術誌『PLOS ONE』で発表された研究では、カフェイン含有飲料と普通のコーヒー(両者のカフェイン含有量は同じ)を摂取し、持久力エクササイズ中の代謝とパフォーマンスへの影響が比較されている。 調査の結果、2つの飲料に違いはなく、どちらもエクササイズ1時間前の摂取でパフォーマンスの大幅な向上が認められた。
メリット:コーヒーはワークアウト後でも効果的
あくまでも水やスポーツドリンクなどによる水分補給を優先し、コーヒーを付加的に利用することを条件として、コーヒーはワークアウト後の疲労回復に利用できる。こう語るのは、ミネソタ州にあるノースウェスタン・ヘルス・サイエンス大学カレッジ・オブ・ヘルス・アンド・ウェルネス栄養部門主任兼助教授のクリスティーナ・マイヤー=ジャックス(管理栄養士)だ。
例えば、2021年に学術誌『Nutrients』(栄養素)で発表された研究では、コーヒーと適量の炭水化物を組み合わせて摂取することにより、高強度のサイクリングエクササイズの後で4時間のリカバリー期間中に筋グリコーゲンの再合成が促進された。
「これはつまり筋肉の回復が加速し、次のレースやトレーニングに向けて効果的に準備が整えられるようになるということです」とメイヤー=ジャックスは語る。
メリット:カフェインだけでなく、コーヒーの健康増進効果も研究済み
クリーブランド・クリニックのアドレア・ダン(上級管理栄養士)によると、コーヒーのユニークな特性が、スポーツのパフォーマンスだけではなく健康全般の向上にも役立つという。
「実をいうと、コーヒーには優れた抗酸化作用があるんです。 ビタミンB群、リボフラビン、カリウムなど約1000種類もの植物性化学物質が含まれ、II型糖尿病や肝臓病などをはじめとするいくつかの疾患リスク軽減に関連があります」とダンは言う。
2021年欧州心臓病学会で発表された研究によれば、1日3杯のコーヒーを飲むことが、脳卒中や致死性の心臓病リスクの軽減につながる。つまりコーヒーを飲む習慣によって、長生きできる可能性がある。
落とし穴:副作用と摂取量の上限を知っておくこと
自分のワークアウト習慣にコーヒーを採り入れる場合(例えば持久力アップの効果を試すために、ランの前にコーヒーを飲んでみるなど)、デメリットの可能性にも注意を払うべきだとヴァヴレックは言う。 コーヒーの摂取によって、イライラ、吐き気、動悸、不安、睡眠障害などの症状が出ることもある。
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少なくとも、トイレ休憩の数は増えるだろうとメイヤー=ジャックスは予測する。 これはコーヒーに利尿作用があるからだ。水分補給を台無しにしてしまうほどではないが、トイレ休憩のために何度もワークアウトを中断することになったら困るだろう。
全米大学体育協会(NCAA)が、カフェインの多量摂取を禁じた事実も抑えておきたい。尿中のカフェイン濃度が1mlあたり0.015mgを超えた場合、薬物検査で陽性となってしまう。ヴァヴレックいわく、3時間の競技中にコーヒーを6-8杯飲むとこの程度のカフェイン濃度になる。 これはかなり多い量にも思えるが、コーヒーを2杯飲み、さらにカフェイン入りのサプリメントやエナジードリンクなどを摂取すれば、簡単に到達してしまう量でもある。
どのくらいの量のコーヒーをいつ飲むべきか?
研究結果によると、カフェインの過剰摂取を避けるためには、適量を守ること。 アメリカ食品医薬品局では、1日に飲むすべての飲料から摂取するカフェインの量を400mgまでに抑えるよう指導している。 約240mlのコーヒーに含まれるカフェインは通常80-100mgなので、1日4杯までであればこのガイドラインから外れることはない。
ヴァヴレックは、あらゆる形態のカフェインを考慮に入れるよう注意を促している。 ワークアウトの60分前に、体重1kgに対して3-6mgのカフェインを摂取すると最も効果を発揮する。コーヒーなら1-2杯に相当する量だ。
「コーヒー、カフェインガム、エナジードリンクなど、カフェイン摂取の形態によってタイミングが異なります。 「カフェインへの反応には個人差があり、遺伝やコーヒーを飲む習慣の有無など、さまざまな要因によっても違ってきます」
結論
エクササイズの前後にコーヒーを飲むタイミングは、最終的に自分の好み次第だ。好きなコーヒー豆を選ぶように決めても構わない。 だがレース当日にいきなりコーヒーを飲むのではなく、あらかじめワークアウトとコーヒーの組み合わせを試しておくのが賢明だ。これも専門家からのアドバイスである。
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