有酸素運動と高負荷トレーニング(HIIT)の大きな違いとは?
スポーツ&アクティビティ
定常状態での有酸素運動とHIITの違いは、時間と強度だけだろうか? また、それぞれのメリットについては、どうだろう?
カーディオバスキュラー(心血管)トレーニング、略してカーディオトレーニングとは、心拍数や呼吸数を増加させる身体活動全般を指す。 これには有酸素運動と無酸素運動が含まれ、有酸素運動としては定常状態での低負荷のサイクリング(LISSカーディオ)、無酸素運動としては激しいHIITワークアウトなどが挙げられる。 両者間の違いは、運動時間、運動負荷、使用するエネルギーシステム、体やパフォーマンスに与える影響といった面にある。
有酸素運動とHIITの違いは?
有酸素運動
定常状態での有酸素運動は、通常30~90分の範囲で行い、心拍数を最大値の50~80%まで上昇させる。 例:
- サイクリング
- ジョギング
- ウォーキング
- 水泳
- エリプティカルトレーニング
定常状態で有酸素運動を行う間、体は酸素の助けを借りて、体に蓄積された脂肪や炭水化物(グルコース/グリコーゲン)を分解し、エネルギー源として貯蔵する。 有酸素運動とは「酸素を使う」運動という意味で、運動中に酸素を使えるため乳酸が発生しない。 そのため、このような従来型の有酸素運動は、長時間続けることが可能だ。
HIIT
高強度インターバルトレーニング(HIIT)は無酸素運動の一種で、最大心拍数の80~95%で運動する必要がある。
高い心拍数で行うため、あまり長時間続けることはできない。 そのため、HIITワークアウトは、全力で体を動かした後に休息を入れるインターバル形式で行われる。通常、インターバルの長さは、10~30秒程度だ。
基本的に、どのような有酸素運動もHIITワークアウトに変えることができるが、以下のようなものを組み入れることが多い。
- スプリント
- フィットネスバイク
- アサルトバイク
- ローイング
- 全身を使うサーキットトレーニング(プッシュアップ、スクワット、バイシクルクランチなど)
HIITの運動時間が短いのは、強度だけが理由ではない。 無酸素運動の定義は「酸素を使わない」ことである。そのため、酸素を使ってエネルギー貯蔵物を分解し、ATP(Adenosine TriPhosphate:アデノシン三リン酸)を生成する一般的な有酸素運動とは異なり、HIITの有酸素運動は酸素不足の状態で行われるのだ。 つまり、体は筋肉内のグリコーゲンを分解し、細胞のエネルギー源であるATPを生産する。 これが解糖と呼ばれる現象で、副産物として乳酸が作られる。
乳酸が蓄積すると、筋肉内が酸性になってアシドーシスと呼ばれる状態になり、パフォーマンスが低下する。 これによってエネルギー産出ペースが遅くなり、筋肉に火照りや痛みが生じるので、休憩を余儀なくされる。
このようにして生じた酸素不足は、過剰運動後酸素消費量(EPOC:Excess Post-exercise Oxygen Consumption)または「燃焼後効果」と呼ばれ、運動後に体が回復しようとするので酸素需要が増加することを意味する。 その結果として、代謝率が上昇するのだ。
定常状態での有酸素運動のメリットは?
1.広範なアスリートに適している
一般的に、定常状態での有酸素運動は強度が低いため、HIITよりも多くの人が取り組みやすい。 一方、HIITの有酸素運動は高負荷トレーニングであるため、適さない人もいる。
2.ストレス解消を助ける
定常状態での有酸素運動は、ストレス解消に最も効果的なエクササイズの1つだ。2013年に発行された『ACSM’s Health and Fitness Journal』の記事では、こうした運動には、コルチゾール(ストレスホルモン)の値を下げる効果があると発表されている。 定常状態でのエクササイズによって脳内で起きた生化学的変化には、ストレスを解消し気分を改善する効果がある。
3.心臓の健康を促進する
有酸素運動のエクササイズは、心臓の健康を促進するのに最も効果的な方法の1つだ。 血圧を下げ、コレステロール値を改善して、動脈をきれいにする。 これにより、血栓、脳卒中、高血圧、心臓疾患のリスクが減少することが、『Blood Pressure』誌の2013年の研究で明らかになっている。
また、2013年の『Sports Medicine』の再調査では、定期的に有酸素運動を行っている人は、インスリンレベル、血糖値、体重が低く、心血管疾患のリスクが低下するとされている。
HIITのメリットとは何か?
1.時間効率の良さ
時間効率が良いことは、HIITの重要なメリットだ。 有酸素運動のみの場合は、30分以上行わないと効果が得られないが、HIITは短時間で高い効果が得られる。 実際のところ、HIITの一種であるタバタ式トレーニングは、わずか4分間で完了する。
タバタ式トレーニングのトレーニングスタイルは、20秒間全力で運動し、次に10秒間休憩を入れて1ラウンドとする。 これを8ラウンド繰り返すと、合計時間が4分になる。
これは、田畑教授らが1996年、中程度の負荷の運動(運動中に体が消費できる最大酸素摂取量を表わすVO2 maxの70%を消費する運動)を60分間行ったグループと、タバタ式セッションを4分間行ったグループを比較するために実施した臨床試験に基づくトレーニング方法だ。 両グループとも、フィットネスバイクを使った週に5回のトレーニングを、6週間にわたって行った。
タバタ式トレーニングを行ったグループは、無酸素運動能力が28%、VO2 maxが7ml/kg/分向上し、再テストではスピードが向上した。これらの数字はすべて、有酸素運動のフィットネスが向上したことを示している。 さらに、タバタ式トレーニングを行ったグループは、1時間のトレーニングを行ったグループより、統計的に優れた結果を残した。2.脂肪の減少を促進する可能性がある
HIITには、もう1つ大きなメリットがある。それは脂肪の減少だ。 『Sports Medicine』誌に掲載された39件の研究をまとめた2018年の再調査では、HIITが腹部と内臓の脂肪量を有意に減少させることが明らかになっている。
また、『The Journal of Applied Research』に掲載された2011年の研究では、インターバルトレーニングを行った参加者が、ワークアウト後の24時間で457kcalを消費したことが報告された。 ワークアウト中には、112kcalしか消費されなかったのに、アフターバーン効果によって代謝が上昇し、エネルギー消費量が大幅に増加したのだ。 減量という観点でみると、これは特に重要だ。
有酸素運動のみの場合と比較してみよう。 Harvard Health Publishingによれば、体重約70kgの人が中程度の負荷のサイクリングを30分行うと、消費カロリーは252kcalになる。 アフターバーン効果は発生しないので、アクティビティが終わればカロリーの燃焼も止まる。
もう1つの大事な点。HIITワークアウトに最適なシューズとは?3.酸素の消費量が向上する可能性がある
HIITは、筋肉が酸素を消費する能力、つまりVO2 maxを向上させる。 たとえば、2016年に『PLoS One』誌によって実施された無作為化比較試験では、HIITを5週間行った参加者のVO2 maxが9%向上した。
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