朝食はワークアウトの前と後のどちらに取るべきか?
食事
管理栄養士が、ワークアウトをベースに朝食時間を決める方法を解説。
朝に運動する人は、ワークアウトを朝食の前と後のどちらに行うべきかという、難しい問題に遭遇するかもしれない。
空腹状態でワークアウトを行うのがベストと提案する専門家もいれば、糖質、タンパク質、脂質(主要栄養素)のバランスが取れた食事や軽食を運動前に取ることを勧める専門家もいる。 しかし、『Nutrients Journal』誌の最新のレビューによると、運動前に何かを食べることで、体が最適なワークアウト効果を得られるという。 ワークアウト前に取る軽食や適切な食事の選択には、ワークアウトのタイプ、長さ、強度、ワークアウトセッションの最終的な目標、そしてもちろん、自分自身の好みなど、多くの要素が関わってくる。
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朝食を取るメリットとは?
一般的に考えれば、朝食を取ることは、より健康的な生活を目指すための最初のアクションの1つである。 朝食を取ると血糖値が安定するため、運動能力、体全体のエネルギー量、集中力、気分が向上することが研究によって明らかになっている。 朝食を抜くと、血糖値が劇的に低下することで、炭水化物や糖分の多い食べ物が無性に食べたくなり、エネルギーが爆発する現象が一日中続く場合がある。
基本原則として、血糖値を安定させるには、起床してから90分以内に、タンパク質と少量の食物繊維を含んだ食事を摂るのが賢明である。 ただし、朝のワークアウトという観点から見ると、このゴールポストは変わることになる。だが、そうなっても問題はない。
では、ワークアウトの前はどんな朝食を取ればいいのだろう?
1時間以下の軽~中程度のワークアウトであれば、セッションの前に朝食を取る必要はないかもしれない。 こうしたワークアウトには、ヨガ、ピラティス、早歩き、ダンス、レジャーサイクリングなどが含まれる。 この場合、ワークアウト前に軽食や朝食を取るかどうかは、完全に本人次第となる。 何も食べずにワークアウトを行うと、胸がむかついたり疲れを感じたりする人もいるかもしれない。 こうした場合は、炭水化物が豊富な1人分の食事(果物ひと切れなど)を取ると上手く行くはず。 果物は比較的早く消化されるため、体が炭水化物をほぼすぐに吸収してエネルギーに変えることができる。 言うまでもなく、ワークアウトクラスやハードなセッションを自宅で始める20~30分前に果物をひと切れ食べると、胃腸(GI)障害を防ぐことができる。
長距離ラン、HIIT(高負荷トレーニング)ワークアウト、ウェイトリフティングなど、より激しい運動の場合は、パワーを得るために、もう少ししっかりした食事が必要になるかもしれない。 より強度の高いワークアウトを行う場合は、トースト1枚と果物ひと切れ、またはピーナツバターサンドイッチなど、2人分の炭水化物を摂ることを検討してほしい。 (プロからのアドバイス:第2の選択肢は、三大栄養素のバランスが良い食事を取ること!)
90分を超える激しいワークアウトを行う場合は、 ワークアウト全体を通してエネルギーを維持するために、複合炭水化物(食物繊維が含まれた炭水化物)、タンパク質、少量の脂質を含む、ボリュームのある朝食が不可欠となる。 たとえば、プロテインパウダー入りのフルーツスムージー、ギリシャヨーグルトパフェ、オーバーナイトオーツ、エッグサンドイッチ、牛乳をかけたボウル1杯のシリアルがおすすめだ。 炭水化物は、運動中に消費される主要なエネルギー源である。 60分を超える運動を行う場合、ワークアウト中のエネルギーを維持するために、炭水化物の消費がさらに必要になることがある。
繰り返しになるが、朝に運動を行いたいが、ワークアウト前に朝食を取ると体調が悪くなると思う場合は、無理に取る必要はない。 ただし、絶食状態で運動を行うと、低血糖症(血糖値が健康的な範囲を下回る状態)を引き起こす可能性があることは、必ず気に留めておく必要がある。 2020年に『Journal of Sports Medicine』誌に掲載されたレビューでは、事前に食事を取らない激しいワークアウトを実践する前に絶食状態で中程度のワークアウトを習慣づけることを勧めている。そうすれば、低血糖症を防げるという。
常に言えることだが、個人のニーズを満たしているかどうかは、医師や管理栄養士に必ず相談して確認する必要がある。
ワークアウト前とワークアウト後に朝食を取るタイミング
ワークアウトの前後に朝食を取るタイミングはなかなか悩ましい。 タンパク質、脂質、複合炭水化物が含まれたボリュームのある朝食を取る場合は、運動の2時間以上前が賢明である。そうすれば、栄養素を消化吸収する時間を体に十分与えることができる。 ワークアウトの直前にボリュームのある朝食を取ると、胃腸障害を招く恐れがある。 2014年に発行された『Nutrients』誌のレビューによると、運動の2~3時間前に食事を取ると、パフォーマンスが向上し、血糖値の平衡が保たれるという。
しかし、時間に余裕がなく、ワークアウトの数時間前に十分な食事を取れない場合はどうしたらいいのだろう? 難しく考える必要はない。炭水化物を含むが食物繊維の少ないものをワークアウトの30~45分前に食べれば、胃腸障害が起きる可能性は低くなる。 消化の早い炭水化物の例としては、ドライフルーツ、バナナ、ブドウ、オレンジ、クラッカー、パンなどがある。
(関連記事:筋肉をつけるために本当に必要なタンパク質の量とは?)
ワークアウト後の食事は、ワークアウト前の燃料補給となる食事と同じくらい重要である。 ワークアウト後の朝食の主役となるのがタンパク質。絶食状態または1人分の炭水化物を摂った状態でワークアウトを行った場合は、十分な量のタンパク質(15~30グラム)を摂ると(脂質や炭水化物と共に摂取するのが理想的)、筋肉の回復が促進されるだけではなく、食欲、気分、エネルギーのレベルが正常に保たれる効果が生まれる。
くつろいだヨガクラスやのんびりとした朝の散歩など、軽度の運動に取り組んだ後は、特定の分量のタンパク質や炭水化物を摂ることに過敏にならなくていい。 そうした運動の場合は体がそこまでの栄養素を必要としないため、筋肉の回復を促進し、グリコーゲン貯蔵(筋肉に蓄えられ運動中に消費されるエネルギー)を補給する食べ物で体に燃料補給する必要がそれほどないからだ。
ただし、運動の主な動機が筋肉増強の場合のワークアウト後の食事に関しては、結論となる調査結果は出ていない。 一部の調査では、運動後1時間以内にタンパク質が含まれた食事や軽食を取ることが重要だと示唆しているが、タンパク質を運動後1時間以内に摂った方が、3時間以内に摂るよりもメリットがあることを十分に示す調査結果は存在しない。 一般的に、筋肉増強に必要なタンパク質の量は、個人と運動量によって異なると言える。 まずは、タンパク質を20グラム含む食事からはじめてみよう。 参考までに、20グラムのタンパク質は、卵3個、スモークサーモン約85グラム、ギリシャヨーグルト1カップに相当する。
ワークアウト前後の食事のタイミングについては、消費すべき栄養素の種類と同様、さまざまな意見がある。 2017年発行の『The Journal of the International Society of Sport Nutrition』誌に掲載された大規模なレビューおよびポジションペーパーで著者は、ワークアウトに最適な食事のタイミングと食べ物を明確に見極めるには、より多くの調査が必要だと結論付けている。 また、ポジションペーパーには、ワークアウト前後に「どのタイミングで何を食べるべきか」を議論するよりも、最適な量のタンパク質、炭水化物、脂質を、一日を通して確実に摂取することの方が重要だと示唆されている。
管理栄養士などの専門家に相談しながら、自分と自分のニーズに合ったプランを作成することをぜひ検討してほしい。
文:シドニー・グリーン(理学修士、 管理栄養士)