トレーナーおすすめの「バードドッグ」をいつものワークアウトに取り入れるべき理由
スポーツ&アクティビティ
体幹をしっかり鍛えられる簡単なワークアウトだから、日常のさまざまな活動にメリットがある。
コアの筋肉群を鍛える運動の中でも、動作に安定性が求められる「バードドッグ」は特に効果的。体幹のさまざまな筋肉に刺激が与えられるエクササイズだ。
「とても簡単なのに、コアの安定性に効果のあるエクササイズなんです」と語るのは、認定ストレングス・コンディショニングスペシャリストでもあるビル・ケリー博士(理学療法士)。 「バード ドッグの運動では、ハムストリング、大臀筋、腹筋、斜筋、脊柱起立筋、広背筋、背面肩周辺の筋肉など、多くの筋肉を使います。 こういった筋肉群を同時に鍛えることで、スポーツでも日常生活でも、さまざまな場面で大事な役割を担うコアが強化できます」
筋力トレーニングガイド『Return to Center』の著者でもあるロッキー・スナイダー(認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト)は、「バードドッグ」の動きを次のように説明する。「基本的には、やぶの中で鳥をねらう狩猟犬のような態勢を取るエクササイズです」
「バードドッグ」は、コアの筋肉群を鍛える運動だ。左右それぞれ一定回数を繰り返してもいいし、プランクのように左右で一定時間ポーズをキープしてもいい。
「バードドッグ」のやり方
- まずは両手と両膝を床につける。このとき、肩の真下に手首、お尻の真下に膝が来るようにする。
- 片脚を後ろに伸ばし、その脚と腰の高さがそろうように浮かせる。
- 脚と反対側の腕を前方にまっすぐ伸ばす。
- 腕と脚を同時に伸ばした後、元の姿勢に戻る。
- 反対側で同じ動きを繰り返す。
フォームのヒント
「バードドッグ」の効果を最大限に高めるため、注意しておきたいフォームのポイントがいくつかある。それは腰などの筋肉に手伝わせず、狙った筋肉だけに負荷をかけることだ。
ケリー博士は説明する。「ありがちなフォームの間違が見られるのは、腹部の安定性を維持できていない場合です。 脚を上げるときにコアが横方向に回転して腰が落ちたりします。また手と脚を高く上げることに気を取られると、背中が下がったりしがちです」 他によくある間違いといえば、動作が速すぎるケースだ。 ゆっくりコントロールしながら動く場合に比べて、動作を急ぐと多くの筋肉を動員できなくなる。
下を向かずに、首を持ち上げてしまうのも間違いだ(スナイダー氏談)。 首を持ち上げると、首周りの筋肉に余計な負荷がかかって腰が落ちる。そのせいで背中を水平に保つニュートラルな姿勢がキープしづらくなる。
「バードドッグ」のメリットは?
クランチやプランクをはじめとするいつものワークアウトに、「バードドッグ」も加えるべき理由を説明しよう。
1.疲労を抑えつつ筋肉を鍛えられる
2016年に学術誌『Rehabilitation Research and Practice(リハビリの研究と実践)』に掲載された研究では、「バードドッグ」を含む4種の基本的なリハビリエクササイズに着目。 「バードドッグ」は、調査対象の他の3つの運動と比較して筋肉疲労が軽いのに、腹部と背中の筋肉を強化できることが示された。
2.腰や背中の痛みの軽減や予防に役立つ
同じ研究によると、痛みがある場合でも、「バードドッグ」は腰やコアの安定性や筋力の向上が期待できるため、リハビリの一環として実施されることが多い。 「バードドッグ」で大臀筋が強化できることも証明された。大臀筋が強くなるほど、背中や腰をしっかり支えられるようになるのだ。 学術誌『International Journal of Environmental Research and Public Health(国際環境研究・公衆衛生ジャーナル)』で公開された別の研究によると、「バードドッグ」は腰痛に悩む人も取り組める。特に腰椎起立筋の活性に効果があることが示された。 こういった筋肉を強化すると、背骨をよりしっかりと支えられるようになり、痛みの緩和や予防につながる。
3.身体の前後両方の筋肉が鍛えられる
「バードドッグ」は身体の前後の多数の筋肉を活性化するので、バランスの向上に最適。コアの筋肉の支えになる筋肉を強化できるため、安定性の向上につながるのだ。
4.けがの予防に役立つ
2013年に学術誌『Sports Health(スポーツと健康)』に掲載された研究によれば、コアの安定性を高める運動は、筋骨格系損傷の予防プログラムにもよく取り入れられている。体をコントロールして効率よく動かせるようになれば、コーディネーションが向上するためだ。 同研究によると、「バードドッグ」には筋肉を上手く動員する能力の向上にも効果があるという。
5.座りっぱなしが引き起こす問題に対処できる
長時間座ったままでいると、統合的な運動の能力が衰える(スナイダー氏談)。 運動の機会が減ることで、上半身と下半身をつなぐ筋肉(特に腰まわり)が弱くなる。筋肉のアンバランスや効率の悪い運動パターンが原因となり、背中や腰、関節に問題が起きやすくなるのだ。 スナイダー氏いわく、「バードドッグ」は上半身と下半身の結びつきを回復させるのに最適なエクササイズの一つだ。
「バードドッグ」のバリエーション
「バードドッグ」を実践済みで、バリエーションを試したい人には難易度を上げる方法がいくつかある(ケリー博士談)。
例えば、左右でそれぞれ姿勢をキープする時間を長くしたり、ウェイトを手に持ったり、ウェイトと足首に付けたり、回数を増やしたりといった負荷のかけ方だ。 安定性にチャレンジしたい人には、不安定でバランスを取りにくい床の上で行う方法もある。また両膝を床から浮かせたベアクロールの姿勢から片腕を上げ、その反対側の脚を持ち上げる方法も試してみたい。
文:エリザベス・ミラード(ACE認定パーソナルトレーナー )