管理栄養士が教える、運動前に食べるといいもの
食事
ワークアウト前には何を食べればベストか、管理栄養士が時間帯別に解説する。
お腹がすいた状態でワークアウトを始めるのはあまり良いことではない。 燃料不足が原因で疲労感、けいれん、イライラした気分が生じれば、ワークアウトは楽しく生産的なものではなく、ストレスのたまるものになりかねない。 ワークアウト前の適切な軽食を選ぶには、いくつかの重要なことを知っておくべきだろう。
栄養補給にベストな食品、また食事やおやつを取るべきタイミングは、ワークアウトの種類やその目的によって異なる。 たとえば、パワーウォーキングに1時間取り組む人と、トレイルランニングに1時間取り組む人では、必要なエネルギー(カロリー)がまったく違ってくる。 トレイルランニングはパワーウォーキングよりもエネルギーを消費するので、エネルギーを持続させてワークアウトをやりとげるために、カロリーや栄養価の高いおやつ(または食事)を選ぶとよい。
関連記事:パワーウォーキングについて解説 - 毎週のワークアウトに加えるべきか?
運動前にどのようなおやつを食べるべきかについては、年齢、性別、現在の食事パターンや運動量が関係してくる。 実際、ワークアウト前に軽食を必要としない人もいれば、ちょっとした食事が必要になる人もいる。 栄養には個人差があり、自分にとって適切な食事を見つけるには時間がかかるかもしれない。
ワークアウトを朝一番で行う場合も、昼過ぎや夕方に行う場合も、適切に栄養補給できていれば、ワークアウトの効果を最大限に高められる可能性がある。 何も食べていない状態でのワークアウトは食事後のワークアウトと同じくらい(あるいはそれ以上に)効果的なのか。研究者たちはその結果を調べ続けている。。 Journal of Sports Medicine誌に掲載された2020年のレビューでは、「高負荷のトレーニングセッション前の絶食は避けるべきである」としている。 60分以内のワークアウトを絶食状態で行うことは、人によっては問題ないかもしれない。ただ、ワークアウトが60分以上になる場合や高負荷の場合は、絶食によって疲労が生じ、運動能力が阻害される可能性がある。
朝のワークアウト前に食べるとよい軽食は?
MCTオイル(中鎖脂肪酸油)やココナッツオイルを入れたコーヒー(または紅茶)に熟したバナナやドライデーツを添えれば、朝早くのワークアウト前に摂取しやすい手軽な軽食となるだろう。 ココナッツオイルに含まれる脂肪の一種である中鎖脂肪酸トリグリセリドは、体内で吸収されやすく、燃料として消費されやすい。 国際スポーツ栄養学会による2018年のレビューでは、MCTが適度な運動でエネルギーを発揮することが報告されている。
関連記事:専門家に聞く、ワークアウトの前後にコーヒーを飲むメリット
ただし、MCTオイルは軽い胃もたれを起こすことがあるため、胃を落ち着かせるために(そしてエネルギーをさらに高めるために)、果物から消化の良い糖質を摂取するとよい。 運動前の軽食を控えめにする場合は、運動後にタンパク質、良質の脂肪、食物繊維が豊富な炭水化物などのバランスのとれた食事を取って栄養補給することが大事だ。
午後のワークアウトを好む人は? 1日を通して、しっかり食事を取れていれば、ジムや走りに行く直前に栄養を補給する必要はないかもしれない。 一般に、1時間以内の運動であれば、バランスのとれた朝食と昼食を取っておけば、適切な栄養が補給される。 その理由は、早い時間に摂取した炭水化物はグリコーゲンとして蓄えられ、運動中に消費されるからだ。 昼過ぎのワークアウトを選択する場合に最も注意すべきことは、最後にたっぷり食べた時間から運動する時間が近いほど、消化管に負担をかける可能性があることだ。
運動前の食事はどれくらい前に済ませるべきか?
つまり、あとで運動するつもりであれば、食事や多めの軽食を取ったあと、少し時間を置いた方がよいだろう。 食物繊維の豊富な複合糖質(キヌアやレンズ豆など)とタンパク質、良質の脂肪を含む昼食を運動の2~3時間前に食べれば、運動前に体が栄養素を消化吸収するのに十分な時間を確保できるはずだ。
あまり時間がなく、食事と運動の間隔が近くなる場合は、シンプルな食事を少なくとも運動の45~60分前までに取り、早く完全に消化されるようにするとよい。 運動前の消化の良い軽食とは、シンプルな炭水化物にタンパク質と軽い脂肪を足したもの。たとえば、ターキーとスライスチーズをのせたサワードウトースト、蜂蜜とフルーツを添えたヨーグルト、小麦粉のトルティーヤにほうれん草と卵など。
ジムに入る前、あるいは走る前の30分以内に軽食を食べる場合は、新鮮なフルーツやドライフルーツ、アップルソース、ココナッツウォーターなど、よりシンプルなものを選ぶようにしよう。 これらはすばやく消化され、スムーズにエネルギーに変換される。食物繊維も少なく、運動中の消化の妨げにもなりにくい。
夜のワークアウト前に最適な軽食は?
夜のトレーニングは容易ではなく、夕食の時間が来るまでにはひどくお腹がすいてしまうものだ。 でもご安心を。適切な食品を選べば、夜のワークアウトでも、終わった後に冷蔵庫の中のものを全部食べてしまいたくなるようなこともなく、楽にこなすことができる。 ワークアウトの2~3時間前に、燃焼の遅い炭水化物、タンパク質、脂肪を含む「ちょっとした食事」を取ろう。 たとえば、野菜たっぷりのサンドイッチを半分、チアシードとプロテインパウダーを入れたフルーツと野菜のスムージー、ナッツバターとフルーツを入れたオーバーナイトオーツなどがよい。 時間がないときは、野菜とフルーツのミックスジュースにナッツをひとつかみ、ドライフルーツにナッツバター大さじ1杯、高品質のグラノーラバー半分などを試してみよう。
関連記事:筋肉をつけるために本当に必要なタンパク質の量とは?
運動前の栄養補給に最適な食品について、良く出る話題がタイミングの重要性だ。 複合糖質や良質な脂肪は非常に栄養価が高く、長時間のワークアウトの燃料となるが、ワークアウトの直前に摂取すると、思わぬトイレ休憩が必要になるかもしれない。 それはなぜか? 複合糖質は食物繊維が豊富なため消化に時間がかかる。脂肪もまた消化に時間がかかる。 食物繊維や脂肪が少ない食品は、運動の直前に摂取しても胃腸障害のリスクが低い。 どのような食品を、どのようなタイミングで摂取するのが自分に合うのかを、試行錯誤してみることが重要だ。
運動前に飲むべき飲み物は?
食べ物はもちろん、飲み物でもワークアウトを支えることができる。 運動前にカフェインを摂取したところ、パフォーマンスが向上したという報告もある。 2010年の国際スポーツ栄養学会によるカフェインに関する見解では、パフォーマンス向上のために、運動前に多少のカフェイン(コーヒー1、2杯程度)を摂取することを支持している。ただし、カフェインの過剰摂取によって、心拍数の上昇、体の緊張、お腹のトラブルなどの好ましくない影響が生じる可能性があることを頭に置いておこう。
運動の前後や運動中の水分摂取は全面的に欠かせない。 脱水状態でトレーニングを行うと、早期の疲労、けいれんが起こり、回復が正常に行われない可能性がある。 水だけ、あるいは電解質を加えた飲み物を運動の少なくとも30分前に摂取すると効果的だ。
肝心なことは?
運動前の栄養補給は重要だが、必要な栄養の種類は、運動の内容、所要時間、開始時間によって異なることを覚えておこう。 ヨガのレッスンや軽いサイクリングでは、筋力トレーニングや長距離走ほど多くのエネルギーを消費することはない。 自分の体を一番良く知っているのは自分自身なので、いろいろな食品や摂取するタイミングを試してみて、自分に合ったものを見つけよう。
文:シドニー・グリーン、栄養学修士、 管理栄養士)