筋肉の回復を促す食品の選び方を管理栄養士が解説
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ヘルスケアに詳しい専門家おすすめの、筋肉の回復をサポートする食品をご紹介。
筋肉の回復に役立つ栄養補給のためのガイド
運動をするとき、体はグリコーゲンを利用する。グリコーゲンはグルコースの貯蔵形態であり、筋肉や肝臓に蓄えられている。 管理栄養士のビッキ・シャンタ・リテルニーは、ワークアウト後すぐに食べることが大切だと強調する。 すぐに栄養を補給すれば、グリコーゲンの貯蔵が補われ、筋肉の回復を促進でき、血糖値が安定する。
食品によっては、食べるとリカバリーに直接的な効果が現れる。 たとえば、炭水化物が豊富な食品を食べるとグリコーゲンの貯蔵を補充でき、タンパク質を摂取するとワークアウト時に壊された筋肉組織の修復と再生を促せると、ヘザー・マンジェリは説明する。彼女は理学修士、 管理栄養士、 スポーツ栄養学認定スペシャリスト(C.S.S.D.)、 認定管理栄養士(L.D.N.)の有資格者だ。
栄養補給のタイミングには縛られ過ぎないこと
通常は、ワークアウト終了後1時間以内に食べるようアドバイスしていると、リテルニーは言う。 とはいえ、このアドバイスに従うべきかどうかは、運動後の消化吸収能力によるそうだ。
タンパク質を摂るタイミングはあまり重要ではないことを示唆する研究もある。 『Journal of the International Society of Sports Nutrition』に2017年に掲載されたレビュー論文によれば、摂取するタイミングがレジスタンストレーニングの前か後かにかかわらず、タンパク質は筋タンパク質合成(アミノ酸が取り込まれて骨格筋のタンパク質が合成されるプロセス)を促すという。
一方、持久力が求められるアスリートは、長時間に及ぶワークアウトの前に消化の早い炭水化物を摂ることが最適だ。 サイクリング、ランニング、水泳などのハードなトレーニングでは、炭水化物や脂質の蓄えが尽きてしまうと、身体機能が筋肉組織に働きかけられなくなる。
前述の論文の著者は、「タンパク質を摂る最適な時間周期は、個人の消化吸収能力次第だろう」と述べている。 ただ、タンパク質は炭水化物や脂質よりも消化に時間がかかるため、やはりワークアウト後のほうが消化吸収されやすいと言えるだろう。
(関連記事:栄養士がすすめる、ワークアウト後に最適な高タンパクの軽食)
リカバリー食に取り入れるべき主要栄養素
アスリートは、リカバリーを促すための食事や軽食として、炭水化物とタンパク質を取り合わせて摂取するべきだとマンジェリ。 炭水化物は、持久力を高めるエクササイズと筋肉に抵抗をかけるレジスタンスエクササイズの両方で消費されるグリコーゲンを補充できる。 また、炭水化物は筋肉の回復に最も大切な栄養素だと彼女は補足する。
15kmのロードレースを完走したアマチュアアスリート323人を対象にした、2021年の小規模な研究では、レース後3日間続けて炭水化物を含むプラセボドリンクで栄養補給をした人は、乳製品ベースのプロテインドリンクを飲んだ人より、筋肉痛が軽かったことがわかった。
そうは言っても、タンパク質の摂取も筋肉の回復には重要であり、特にレジスタンスエクササイズの後には欠かせない。 『Nutrients』誌に2017年に掲載された研究によれば、タンパク質は、筋タンパク質の合成を最大限に高め、筋肉の成長を促進する。 この研究では、運動後にタンパク質を摂ると、ワークアウト後の筋肉痛が和らぐ可能性があることも指摘されている。 全米スポーツ医学協会(National Academy of Sports Medicine)は、筋タンパク質合成を最大限促進するために、筋力トレーニング後3時間以内に、タンパク質が豊富な少量の食事を1つか2つ摂ることを推奨している。
リカバリー時の軽食や食事に脂質を加えるかどうかは、個人の状況や目標次第だとマンジェリは話す。 全米スポーツ医学協会によると、脂質には、炎症を和らげ、エネルギーを補給し、リカバリーを促す働きがある。 ただし、脂質を摂ると消化に時間がかかるとマンジェリは指摘し、 すばやく栄養補給をするには、低脂質のリカバリー食を摂るべきだと話す。
もし、その日の運動をやり終え、翌朝に激しいワークアウトをする予定がない場合は、炭水化物やタンパク質に加え、脂質をある程度含むバランスの取れた食事を摂ってもいいだろう。
筋肉の回復を促すのに最適な食品
「炭水化物とタンパク質を摂取できる、ハードな運動後におすすめの食品の組み合わせは無数にあります」とマンジェリ。
消化しやすい食品に着目した食事や軽食を試してみよう。こういった食事なら、栄養素が短時間で血流に乗るはずだとリテルニーは語る。
- チョコレートミルク:マンジェリもリテルニーも、持ち運びできるこのドリンクを推奨する。 炭水化物とタンパク質に加え、リカバリーを促す水分や電解質も含まれている。
- シリアルとミルク:牛乳や豆乳など、タンパク質を含むミルクを選ぼう。 甘味料を加えていないか、ごく少量しか加えていない、全粒粉のシリアルがおすすめだ。
- ギリシャヨーグルト:リテルニーいわく、ギリシャヨーグルトは従来のヨーグルトよりタンパク質を多く含む。 ベリー類やヘンプシードをトッピングして、風味や栄養価を高めるのがおすすめの食べ方だ。 好みのミルクや冷凍フルーツと混ぜてスムージーを作ってもいい。
- カッテージチーズ:この乳製品に含まれるカゼインプロテインには、筋肉の分解を抑え、筋肉を増強させる能力を高める働きがあるとリテルニーは言う。 おまけに、炭水化物に対するタンパク質の比率が高い。 おいしく食べるには、スライスした果物をたっぷりのせるとよいとのこと。
- 野菜入りスクランブルエッグをのせた全粒粉トースト:卵には、質が高く消化しやすいタンパク質が含まれているとリテルニー。 『Journal of the International Society of Sports Nutrition』に2017年に掲載されたレビュー論文には次のような記述がある。「卵に含まれるタンパク質はアスリートにとって特に重要性が高いと言えるだろう。このタンパク源によって、レジスタンスエクササイズの後に、骨格筋タンパク質と血漿タンパク質の合成が大幅に促進されることが証明されている」
- ハムまたは七面鳥のサンドイッチ:赤身のタンパク質と炭水化物を一皿で摂れる便利なメニューだ。 少量のマスタードやスライスしたリンゴを加えてアレンジしよう。
- 鶏肉と米のスープ:サンドイッチと同じく、赤身のタンパク質と炭水化物が摂れるメニュー。 新鮮なレモン果汁を絞り、風味をプラスしよう。
スポーツドリンクとビーフジャーキー:スポーツドリンクから水分と電解質を補充でき、ビーフジャーキーからタンパク質を摂取できる。 肉類について言うと、全米スポーツ医学協会は、放牧され、牧草で育てられた家畜を推奨している。
水分と電解質の補給をお忘れなく
運動後の水分補給は絶対に欠かせない。ワークアウト中に水分を摂らなかった場合はなおさらだとマンジェリは語り、
汗をかくことで失われた水分と電解質の補給は、ワークアウト後の栄養補給における大事なポイントだと続ける。 覚えておきたいのは、水やスポーツドリンクは水分補給に適しているが、ビール、ワイン、カクテルなどを同列に扱うことはできないということ。
運動後に炭水化物、タンパク質、水やその他の水分補給に望ましい飲み物の代わりに、アルコールを摂取すると、リカバリーに悪影響を及ぼすおそれがあるのだ。 アルコールは睡眠の妨げになるうえ(体は睡眠中に細胞や組織の修復を行う)、夜間に進むはずの心血管機能の回復も難しくなる。
文:ディナ・チェイニー