毎日のウォーキングがもたらす驚きのメリット5つをエキスパートが解説
スポーツ・アクティビティ
毎日散歩に出かけることは、健康や全体的な幸福に良い影響を与える。
散歩は、しっかりした運動にならないと思っているなら考え直したほうが良い。
「ウォーキングは非常に簡単であるため、多くの人はエクササイズの一つだとは考えていません」と、 運動生理学の博士号を持つストレングスコンディショニングの認定スペシャリスト(C.S.C.S.)で、 認定パーソナルトレーナー兼ヘルスコーチ(ACE-HC)であるシャロン・ガム博士は述べる。 「実は、ウォーキングは最高のエクササイズの一つになり得ます。シンプルであるからこそ、ほとんどの人が実践できます」
また、ウォーキングは、ほとんどの人にとって負担が少なく関節に優しいため、筋肉や関節の痛みを抱えている人にとっても理想的なアクティビティであると付け加えた。 さらに、特別なトレーニングやスキルが必要ないため、忙しいスケジュールにも無理なく取り入れられると、栄養医学の専門家のメリーナ・B・ジャンポリス医学博士は説明する。彼女はポッドキャスト「Practically Healthy(実用的な健康)」のホストでもある。
「たとえば定期的な徒歩通勤、昼休みに歩くこと、同僚とのウォーキングミーティング、犬の散歩、友人との散歩といった形が考えられます」と博士は提案する。
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「正しい」歩き方
ウォーキングの効果を最大限に引き出すには、フォームに気を配ることが大切である、とガム博士。 「体幹の筋肉を働かせつつ、胸と頭を上げて歩きます。 そして肩を後ろに引き、腕を振りながらテンポ良く歩きましょう」
ペースについては、早歩きを心がけること。 「通常、のんびりとしたペースではウォーキングによる健康効果を促進するには不十分ですが、適度なペースで歩くと心拍数が上がります」と彼女は続ける。
適度なペースとは、1分間に100歩以上か、最大心拍数の65〜75%(心拍計を使っている場合)を目安にすると良い。「最大心拍数の推定値は、220から自分の年齢を引いた値です」とガム博士は言う。 「たとえば40歳なら、最大心拍数は1分間に180回になります」
もう一つの方法は、トークテストだ。「息切れすることなく話せる一方で、歌うと息切れするのが適度なペースです」とガム博士は説明する。
結局のところ、有益なウォーキングかどうかを判断する基準は、時間や歩数だと2人の専門家は言う。 「時間は臨床的に有用性が確認されている基準です。さらに、歩数や距離を意識することで、楽しみながら自分の進歩がわかり、自分自身に挑戦できるようになるでしょう」と、ジャンポリス博士はアドバイスする。
米国疾病管理予防センター(CDC)は、成人に毎週150分以上、負荷が中程度の有酸素運動をすることを推奨している。これは、週に5回×30分のウォーキングに相当する。 1日に30分連続したウォーキングの時間を作るのが難しい場合は、1日に15分を2回、または10分を3回行ってもかまわない。
どのような方法であれ、30分を確保できれば多くのメリットを見込めるとガム博士は言う。
ウォーキングに期待できる5つのメリット
1.ウォーキングは心臓の健康を増進する
定期的なウォーキングは、心臓病、脳卒中、高血圧などの心臓疾患の予防や管理に役立つとジャンポリス博士は言う。 『Cochrane Database of Systematic Reviews』誌には、ウォーキングが収縮期血圧を下げる可能性を示唆する「ある程度確実な証拠」が発見されたというレビューが発表されている。 アメリカ心臓協会(AHA)によると、収縮期血圧とは最高血圧(たとえば、120/80mmHgの場合、120が収縮期血圧、80が拡張期血圧)のこと。これは、心臓が拍動するときに血液が動脈壁にかける圧力を示す。
また、『Journal of Sport Health and Science』誌に掲載されたメタ分析では、歩数と全死因死亡率や心イベントとの間に「有意な関連性」があることがわかっている。 実際に、毎日平均9,500歩を歩く人は、全死因死亡のリスクが35%近く低下し、心血管イベントが発生するリスクも40%近く低下することが示されている。
しかし心不全に関しては、20〜80歳の18,200人の成人を対象として、デンマークで27年間にわたって行われた研究で、歩いた時間ではなく速度がリスクの減少に関係していることが明らかになった。
2.ウォーキングは血糖値の管理に役立つ
ジャンポリス博士は、ウォーキングがインスリン耐性、前糖尿病、妊娠性糖尿病、2型糖尿病を予防またはコントロールする可能性に言及している。 197,825人の非糖尿病成人で構成された大規模なコホート調査では、速いペースのウォーキングが2型糖尿病の発症率低下と関係があることが明らかになった。また、『European Journal of Epidemiological』に掲載された研究の系統的レビューとメタ分析では、妊娠前および妊娠中の女性がウォーキングをすることで、妊娠糖尿病(妊娠中の糖尿病)のリスクを低減できる可能性が示唆されている。 さらに、『The Journals of Gerontology』に掲載された研究によると、長時間座り続けた後に短時間歩くと、インスリン値に良い影響を与えるという。
「食後、特に夕食後に歩くと、血糖コントロールにより効果があることを示す研究は注目に値しますね。糖尿病と前糖尿病の私の患者には、夕食後に歩くよう推奨しています」とジャンポリス博士は付け加える。
3.ウォーキングは睡眠の質を向上させる
日中のウォーキングは、夜間の睡眠の質を向上させる可能性がある。 日本の研究者が4週間にわたって行った実験では、定期的な運動をしていない成人に、1日10,000歩を30日間歩くように指示した結果、寝つきが早くなった、睡眠時間が長くなった、睡眠の質が良くなった(安眠できたなど)ことが報告された。
また、19〜36歳の健康な成人のグループを対象に実施された別の研究では、 参加者は、歩行と休憩を繰り返しながら毎日1時間のウォーキング(1分間に60歩以上のペース)を12週間にわたって行うように指示された。 この結果は『Sport Sciences for Health』に掲載され、毎日の屋外でのウォーキングが、睡眠の質と時間の改善、睡眠障害の減少、睡眠薬の必要性の減少につながることが示されている。
このことが重要なのはなぜだろうか? 睡眠は健康全般にとって重要だ。 米国国立衛生研究所(NIH)によると、米国の成人のうち約5千万〜7千万人が睡眠障害や覚醒障害に苦しんでおり、これらが心臓病、高血圧、脳卒中、糖尿病、肥満、特定の癌など、さまざまな健康障害と関連していると言われている。
4.ウォーキングは心の健康を増進する
「ウォーキングは、脳にも強力な効果をもたらします」とガム博士。
まず、低負荷のエクササイズは、うつ病の症状を軽減する可能性がある。 『JAMA Psychiatry』に掲載されたある研究では、1時間の速いペースのウォーキングが、大鬱病性障害(MDD)の発症リスクを26%低下させ、気分も改善することがわかっている。 アイオワ州立大学の研究者たちは、屋内や屋外、またはトレッドミルにかかわらず、ウォーキングには気分を高揚させる効果があることを発見している。
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「また、[ウォーキング]は記憶力、意思決定、注意力などの脳機能を向上させるため、考えるスピードや創造性が増す可能性があります」とガム博士は続ける。 ウォーキングをエクササイズとして行っている高齢者を対象に実施されたある研究では、記憶力と白質(細胞がメッセージをやり取りするための神経線維で構成されている脳の領域で、老化に関連がある)に顕著な改善が見られたと言う。
5.ウォーキングは特定の慢性疾患のリスクを軽減する
ガム博士は、『Sports Medicine and Health Science』誌に掲載されたレビューに言及し、毎日歩くことは、骨密度を上げ(骨粗鬆症の予防に効果的)、免疫力を高めると同時に、認知症やパーキンソン病などの神経疾患を含めて、さまざまな病気につながるリスク因子を下げることができると説明する。
「ウォーキングは長生きするための秘訣だと言えます。健康な体を作り、余生を最大限に楽しめるようになるでしょう」
結論
ウォーキングは「本物」のワークアウトではないと思うかもしれないが、毎日速いペースで歩くことによって、さまざまな健康上のメリットがもたらされることが数々の研究で明らかになっている。 たとえば、心臓病の予防、血糖値のコントロール、睡眠の質の改善、うつ病に関連する症状の軽減、そして寿命を延ばす可能性さえ示唆されているのだ。
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文:エイミー・カペッタ