エキスパートが教える、日常的にストレッチを行う5つのメリット

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ワークアウトの中で、筋肉、関節、腱を曲げ伸ばしすることが重要である理由を理解しておこう。

最終更新日:2022年10月17日
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 毎日のストレッチで得られる5つのメリットをエキスパートが解説

時間がないと、ワークアウト前後のストレッチは真っ先にカットされがちだ。 しかし多くの専門家は、ストレッチはワークアウトのルーチンの中でも重要で、省略すべきではないと主張している。

「日常的なストレッチは、運動のパフォーマンスを最適化することに加え、柔軟性と可動性を高めることで(日々の)活動の快適さも向上させます。それが、最終的にケガのリスクを低減し、慢性的な痛みを和らげることに繋がります」と語るのは、ACE認定のパーソナルトレーナーであるマリッサ・ミラー氏だ。 「ジムに一度行っただけでその日のうちに筋肉が盛り上がることがないのと同様、関節の可動域の違いを感じるためには、定期的なストレッチが欠かせません。」

日常的なストレッチは緊張の解放に役立つと、クリパル認定のヨガインストラクターで、ACEのグループエクササイズ認定インストラクターでもあるエレン・バレット氏は付け加える。 「ストレッチにより、肩や首の周りを中心に筋肉の緊張を解消し、和らげることができます。 大半の人は、意識してストレッチを行うまで、どれほど体が硬くなっているか気付きません」と、バレット氏は述べている。 「実際、時間をかけて意識的にストレッチを行うと、心身にプラスの効果が生まれます。」

まず初めに、2つの基本的なストレッチの形式の違いを紹介しよう。

動的ストレッチと静的ストレッチ

動的ストレッチとは、特定のポーズを維持せずに、関節と靭帯の両方を最大可動域で伸ばすストレッチを指すとミラー氏は説明する。

「最大可動域での動的ストレッチに慣れていきたいのであれば、あらゆるタイプの運動と同じように、徐々に段階を上げていくことが大切です」とのことだ。

さらにミラー氏は、柔軟性の面で準備が整っている人であれば、すぐに最大可動域、もしくはそれに近い可動域で安心してストレッチに取り組むことができるが、そうでない人は可動域を制限して体重を支える関節への負荷を軽減し、負担の少ないストレッチに徹することもできると付け加えている。 たとえば、初心者向けの負担の少ないストレッチとしては、ジャンピングジャックからジャンプをマイナスしたストレッチが挙げられる。ジャンプの代わりにサイドに足を踏み出し、それに合わせて快適に感じられる範囲で腕を上げ下げしていく。

ミラー氏はまた、関節をストレッチすることでワークアウトに向けた関節の(スムーズな可動の)準備を整えることはできるが、関節すべてが同じように働くわけではない点に注意することが重要だと説明している。 「肩関節(関節窩上腕関節)や股関節といった半球状の滑膜関節などは可動性をつかさどる一方、肘や膝などは、ひとつの平面上における安定性と可動性の両方を支える役割を果たしています。」

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「動的ストレッチを行うときは、『スペシフィシティ』(特定性)と呼ばれるトレーニング手法を実践し、運動中にターゲットとして鍛える筋肉、関節、靭帯の準備を整えていきます」と、ミラー氏は説明する。 「ワークアウトの前は筋肉が冷えているため、損傷を避けるために動的ストレッチを行うのが望ましいでしょう。」

動的ストレッチを運動の前に行う理由として、体温の上昇も挙げられると語るのはケリー・ガンズ氏(管理栄養士、認定ヴィンヤサヨガインストラクター)だ。 「たとえば動的ストレッチには、ウォーキングレッグランジ、ムービングトーソーツイスト、キャットアンドカウ、アームサークルなどがあります」と、ガンズ氏は述べている。

ある程度の時間(通常10秒~30秒)ストレッチした状態をホールドするのが静的ストレッチで、これは主にクールダウンの際に行うとのことだ。 「こうしたストレッチは、すでに体が温まっているときに行います」と、ガンズ氏は付け加える。

たとえば静的ストレッチには、仰向けに寝て片足の指の付け根をつかんで足を持ち上げる、アンジャネーヤアーサナ(ローランジ)、エクステンディッドチャイルドポーズなどがある。

正しいストレッチの方法

ストレッチは、いくつかの基本的なガイドラインに沿って行おう。 はず初めに、自分の体に耳を傾けることが重要だと専門家は強調している。

「どこかしっくりこない場合は、止めておくようにします」とガンズは述べている。 「ある人の体にとっては最適なストレッチでも、別の人の体にも合うとは限りません。」

バレット氏もこれには同意で、「どれくらい深く伸ばせるかは、ストレッチを行っている本人にしかわかりません」と付け加えている。また、ストレッチでわずかに不快感が生じたとしても、損傷することはないとミラー氏は指摘している。 さらにミラー氏は、腕、脚、大腿四頭筋、ハムストリングなど、自分の体のあらゆる部分をいたわることの大切さも強調している。 「そうすることで、片側だけ超回復したり、片側だけケガをするようなアンバランスを回避できます」と説明する。

どんなストレッチでも行うときに呼吸を意識することで、より大きなメリットを得ることができる。 「深く長い呼吸を続けることで、関節や筋肉に酸素が運ばれ、深く安全にストレッチを行うことができます」とミラー氏。

専門家の3人は、伸ばした状態から反動をつけて行うバリスティックストレッチは行わないように勧めている。

「ストレッチ中に反動をつけると、関節や腱に圧がかかり緊張してしまいます。そのため、本来の目的である伸ばすという効果がなくなってしまいます」とミラーは述べている。 「また、バリスティックストレッチは動きが制御しにくいため、ストレッチ中に、強すぎたり、急すぎたりする負荷をかけてしまう場合があります。 (これにより、)ストレッチした側では捻挫、損傷、緊張、もう一方では超回復や筋肉の不均一など、高いケガのリスクにさらされることになります。

アメリカスポーツ医学会のストレッチと柔軟性に関するガイドラインでは、「毎日ストレッチを行うことが最も効果的」としながらも、少なくとも週に2、3回はストレッチ運動を行うことを推奨している。

日常的にストレッチを行うことの隠れた5つのメリット

  1. 1.ストレッチが脳の健康を促進

    SAGE Journalsで2019年に発表された研究では、ストレッチが気分や認知能力にプラスの影響を与えることが明らかになった。 運動を行っていない若者がヨガやストレッチのポーズを10分間行った後、緊張、不安、うつ、怒り、疲労、混乱の数値が下がったことが報告されている。 加えて、この研究の著者は、気分の向上と、学習、思考、記憶、問題解決、意思決定といった認知パフォーマンスとの間のつながりにも着目している。

    著者は正確なメカニズムを把握するためにはさらなる研究が必要であると述べているものの、セロトニン(気分と感情に関係するホルモン)などの脳の神経伝達物質が、ストレッチで置き換えられる可能性があると推測している。 また、著者はわずか10分のストレッチの後で、参加者の緊張と不安のスコアが下がったことにも注目している。

    「人はストレスを感じると、それに応じて筋肉が緊張し始めます」とミラー氏は述べている。 「このように緊張した筋肉を伸ばすことで、今自分が危険な状態にあるのではなく、リラックスして良いのだというメッセージを脳に送ることができます。」

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  2. 2.ストレッチが腰痛を軽減

    腰痛は、米国の成人の10人に8人が人生の中でいつかは経験するというほどよくある症状だ。 2015年にJournal of Physical Therapy Scienceに掲載された研究では、姿勢からくる腰、肩、首、骨盤の痛みに苦しむ参加者が、ストレッチに焦点を当てた20分間のエクササイズルーチンを行ったところ、1週間後には痛みのレベルが下がったことが明らかになっている。

    著者は別の研究で明らかになった同様の結果についても言及している。その研究では、ストレッチ運動を4週間行ったボランティアの参加者の首と肩の痛みのレベルが著しく低下している。

    また、2016年にシステマティックレビューを行った英国の研究者は、柔軟、筋力強化、エアロビクスで構成される運動が非特異的慢性腰痛の助けになったことを明らかにしている。 より具体的に言うと、背中の筋肉と靭帯が伸ばされることで可動範囲が広がり、結果として運動パターンが改善したことが研究結果で示唆されている。

  3. 3.ストレッチが睡眠の質を向上

    ストレッチやレジスタンストレーニングが、米国の成人の10~30%が患っていると言われる睡眠障害の慢性的な不眠症に及ぼす影響について、国際的な研究者チームが分析を行ったと睡眠財団が発表している。

    その結果(2019年のBrazilian Journal of Psychiatryに掲載)によると、ストレッチとトレーニングを行った参加者は、不眠の重症度、入眠潜時(眠りに入るまでの時間)、中途覚醒、睡眠効率、睡眠時間の改善で、対照群と比べ「素晴らしい改善」が見られたことが明らかになっている。

  4. 4.ストレッチが心臓の健康を促進

    脚のストレッチが、心血管に対して大きなメリットをもたらす可能性を示唆しているのは、2020年のJournal of Physiologyの研究だ。 この研究の著者は健康な成人を2つのグループに分け、一方のグループには12週間に渡って週5回のストレッチ(腰、膝、足首に焦点を当てた動き)を行うように指示し、もう一方のグループにはストレッチを行わないように指示した。

    試行期間の終了後、ストレッチを行ったグループの方は、そうでないグループに比べて血流が良く、動脈壁の硬化が軽減され、血圧が低下していることを研究者たちは発見した。 血流の低下は、心疾患、糖尿病、脳卒中のリスク要因でもあるため、著者は、定期的な脚のストレッチがこうした症状を防ぎ、運動に制限のあるハイリスクの人でもメリットを享受できる可能性があると指摘している。

  5. 5.ストレッチが年配の人の可動性をサポート

    「クライアントにも効果が見られ、私自身も実感しています」と述べるのはバレット氏。 「ストレッチは、可動性を向上させるか、少なくとも維持してくれます。可動性は若々しさと機能性の源です。」

    24の臨床試験のシステマティックレビューとメタ分析を行った、Topics in Geriatric Rehabilitation誌に掲載された研究によると、日常的にストレッチを行った高齢者は、対照群に比べて歩行速度、股関節屈筋の可動域、足関節背屈(足のつま先を足の甲に向けて曲げる)の改善が見られた。 ストレッチは、年齢に伴う可動性の低下に対抗するための方法になり得ると、研究者は付け加えている。

    「年を重ねるにつれ、筋肉や結合組織は硬くなりやすいため、日常的なストレッチが柔軟性を最適化しながら、不快感を取り除いてくれます」とミラー氏は語る。

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文:エイミー・カペッタ

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公開日:2022年5月5日