高負荷インターバルトレーニング(HIIT)の6つのメリットを生かす
スポーツ&アクティビティ
短時間で高負荷のエクササイズを集中的に行うHIITは、さまざまな体力増強効果があり、時間がない人にぴったりのトレーニングだ。
高負荷インターバルトレーニング(HIIT)では、短時間で高負荷のエクササイズを集中的に行う。 時間がないが運動の爽快感を味わいたい人にぴったりのワークアウトだ。
HIITが何年にもわたって根強い人気を誇っているのには理由がある。それは、効果があるということだ。 この種のインターバルトレーニングには減量、パフォーマンスの向上、心肺系の強化につながるたくさんのメリットがあることが科学的に裏付けられている。 HIITとは一体何なのだろうか?
HIITは、短時間の高負荷無酸素運動と短時間のリカバリーを交互に行うワークアウトだ。 無酸素運動の間、体は最大限の能力を発揮し、 心拍数も最大心拍数(MHR)の80~95%まで上昇する。
この心拍数を長く維持するのは大変だ。 そのため、HIITのエクササイズパートは時間が制限されている。 エクササイズのタイプや体力レベルによって異なるが、15~45秒の間ですべての力を出し切る。
この短時間の爆発的なエクササイズの後に、リカバリーを行う。 たとえばトレッドミルでスプリントをしたら、ウォーキングに切り替えてアクティブな有酸素リカバリーとしてもよいし、 トレッドミルを降りて呼吸を整えてもよい。 このリカバリーパートでは、通常1分以内に心拍数を元に戻す。 短時間の休憩で体を回復させた後、もう一度エクササイズを行う。
エクササイズとリカバリーを交互に繰り返すのがHIITの基本だ。 短時間だが、高負荷で、確かな効果がある。 HIITは全体を通して長時間行ってはならず、一般的な推奨時間は15分とされている。 心拍数がMHRの95%まで上昇した状態でエクササイズをしたことがあれば、その理由が分かるだろう。持ちこたえるのが大変なのだ。 極度の疲労を避けるために、HIITの継続時間は抑えた方がよい。
HIITで行うエクササイズの種類
HIITで行うエクササイズには次のようなものがある。
- スプリント
- 縄跳び
- エアロバイク
- ローイング
- プライオメトリクス(ボックスジャンプ、バーピーなど)
- ウェイトリフティングのサーキットトレーニング
こうした運動を行うエクササイズパートの後に、休憩パートがある。 このインターバルを挟みながら、エクササイズを繰り返す。
これらのエクササイズでは、速筋繊維が使われ、活性化される。 このタイプのアクティビティに必要な大きなパワーを出せるのが速筋だからだ。 速筋繊維は収縮のためのエネルギーを無酸素呼吸によって得る。
HIITをベースとしたワークアウトで重要なのは、エクササイズで体を限界まで追い込むことだ。 ウォーキングなどの低強度定常(LISS)有酸素運動では、それができないため、 心拍数が十分に上がらず、HIITのような効果を得られない。
HIITのメリットとは何か?
1.効率的なカロリー燃焼
HIITは短時間のワークアウトだが、燃焼するカロリーは有酸素運動よりはるかに多い。
「Journal of Strength and Conditioning Research」に掲載された研究では、エクササイズをHIIT、レジスタンストレーニング、ランニング、サイクリングの各グループに分けてカロリー燃焼を比較した。
30分のエクササイズを行ったところ、 HIITグループが燃焼させたカロリーは他のグループより最大30%多かった。 休憩パートを加味すれば実際のエクササイズ時間は3分の1であるにもかかわらずだ。
つまり、HIITなら30分も行わなくても大きなカロリー燃焼効果を得られる。 1時間の定常有酸素運動と同等のカロリー消費を15分で達成できるのだ。2.代謝率の向上
HIITでは無酸素運動を行う。 無酸素運動は酸欠状態を生み出す。 そのため、HIITの後には酸素摂取量が増える。 これは、運動後過剰酸素消費(EPOC)と呼ばれている。 酸素摂取量が増えると体の働きが活発化し、代謝率が高まる。
代謝率が高まれば、安静時でもより効率的に脂肪を燃焼させることができる。3.パフォーマンスの強化
4.心臓の健康状態の改善
5.筋肉量の維持
エクササイズ初心者は、スプリントなどの高負荷トレーニングで筋肉を増やせる。 HIITに関して12週かけて行われた研究試験で、参加者は脂肪を減らし(平均2kg減)、脚と胴体の筋肉を増やす(それぞれ0.4kg増、0.7kg増)ことに成功した。
脂肪を減らして筋肉を増やすのは、フィットネスに取り組む多くの人が掲げている目標だ。 この試験はエクササイズ初心者である肥満の若い男性を対象として行われたことに注意しなければならない。
上級者にとって、HIITは筋肉を増やす最善の方法ではないかもしれない。 しかし、他の有酸素運動よりもHIITのほうが筋肉を維持できることが分かっている。とりわけ脂肪を減らすことにフォーカスする段階では有効だ。 筋肉量を減らすことなく他の効果も得たいなら、やはりHIITが最適と言える。
低負荷や中負荷の持続的なトレーニングでは、脂肪量だけでなく筋肉量も減少する可能性があり、代謝率が低下しかねない。 より多くの筋肉を維持できれば、代謝がより活発になる。
つまり、HIITは脂肪を減らしながら筋肉を増強または維持したい人に最適なワークアウトなのだ。6.時間の節約
時間効率が良いこともHIITの重要なメリットだ。 HIITは、15分しかワークアウトの時間を確保できない人にうってつけだ。 低負荷のワークアウトを長時間行うのと同等の健康効果を得られる。 さらに、HIITだけのメリットもある。これは、HIITの効果を発揮するメカニズムに由来するものだ。
HIITの仕組み
15分のワークアウトにこれほど多くのメリットがあるのは不自然だと思うかもしれない。 1時間以上のワークアウトが当たり前になっていたら、 そう思ってしまうのも仕方ない。 LISSを15分行っても、HIITと同じ効果は到底得られない。 HIITのメリットは、無酸素運動に由来している。 仕組みはこうだ。
HIITのエクササイズパートでは、無酸素運動を行う。 アメリカスポーツ医学会の定義によると、無酸素運動とは、「吸い込んだ酸素をエネルギー源として使用せず、収縮する筋肉の中にあるエネルギーを使用して行われる、ごく短時間の激しい身体活動」を指す。
無酸素とは、「酸欠状態」という意味だ。 酸欠状態になると、人体の細胞は解糖によってアデノシン三リン酸(ATP)を生成する。 解糖とは、収縮する速筋の中にあるエネルギー源であるグルコースを分解することだ。 無酸素運動では、ATPの生成量が有酸素運動より少ない。さらに、酸素不足によってエネルギー効率が低下し、乳酸が蓄積される。 そのため、無酸素運動はあまり長い時間継続できず、休憩が必要になる。
これが、HIITでエクササイズと休憩を交互に行う理由だ。 休憩パートでは、有酸素代謝に切り替わり、必要なパワーをもう一度出せるようにするために乳酸の処理が行われる。 EPOCが発生し、ワークアウト後に代謝率が高まってリカバリーが促進される。
HIITは本当に効果があるのか?
HIITによって本当に体力と健康状態が向上することが数々の研究で示されている。 ワークアウトのルーティーンにHIITを取り入れれば、望みどおりの成果をあげられるだろう。 最大の魅力は、たったの15分で行えることだ。 HIITなら、デメリットを気にせずメリットを謳歌できる。