トレーナーが解説する、バーベルベンチプレスについて知っておくべきこと
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ベンチプレスの効果を最大限に高めるために、トレーナー監修のヒントをチェックしよう。
上半身の筋力を鍛えるのに効果的な運動はいくつかあるが、 中でも最も重要なエクササイズのひとつとして挙げられるのが ベンチプレスだ。
N.A.S.M.認定パーソナルトレーナーであるオリビア・アンダーソン氏によると、ベンチプレスは「最もよく知られた上半身の複合エクササイズ」だ。 正しい方法で行うベンチプレスは「全身の筋力を鍛えるのに最適なプレスエクササイズ」の一つでもある、とアンダーソン氏は言う。
このウェイトリフティングエクササイズでは、「ベンチの上に仰向けになり、床に足をつけて、両腕でウェイトを持ち上げます」と説明するのは、N.A.S.M.認定パーソナルトレーナーであるマーク・ローラ氏。 ベンチプレスは簡単なように思えるが、けがを防ぎながら効果を得るには、正しいフォームで正しく筋肉を使わなければならない。
ベンチプレスではどの筋肉を使うのか?
ローラ氏によると、ベンチプレスでは胸筋、特に胸の上部にある大きな筋肉である大胸筋を使う。 しかし、ベンチプレスは複合的なエクササイズであり、複数の筋肉を同時に使う。
これには、三角筋前部(肩の前面)や三頭筋(上腕の背面)などの補助的な筋肉や、肩を安定させる肩甲帯周りの筋肉が含まれている。 「体はこれらの筋肉を連動させてバーを持ち上げます」とローラ氏は言う。
ベンチプレスは上半身の運動だが、動きをコントロールしながら安全にプレスを行うには、体幹、大腿四頭筋、臀筋などの筋肉を使うことも重要だ。
ベンチプレスのメリット
アンダーソン氏によると、ベンチプレスは「腕立て伏せなどの運動に使う上半身の基礎的な筋力の強化や骨密度の向上」に取り組み始めるのに最適な方法だ。 持ち上げる回数や重量に応じて、「筋肉の増量、上半身の筋力の強化、筋持久力の向上」といった効果を得られる、とアンダーソン氏は述べている。
そして、ベンチプレスの恩恵はジムの外でも得られる。 「胸の筋肉を強化し、安定性を高めることで、ベッドから起き上がったり、家具を動かしたり、故障した車を押したり、ハグをしたり、あらゆるシーンでメリットを得られます」とローラ氏。 大切なのは、「年齢を重ねるにつれて、バランスのとれた基礎的な筋力があることが、健康全般において重要になる」ということだ。
ベンチプレスの正しいフォーム
正しいやり方でベンチプレスを行うには、よく耳にするいくつかのアドバイスに従おう。 初心者の場合は、「軽いウェイトを使い、やり方に注意し、各レップを正しいフォームで行ってください」とアンダーソン氏は言う。 さらに、「忘れてはならないのは、量より質が重要だということです」とのことだ。
可能な場合は、安全のために補助者に付き添ってもらうとよい。 一人でベンチプレスを行う場合は、自分が持ち上げられる最大重量のウェイトを使ってはならない。 緊急時に備えて、バークリップは使わず、ウェイトがバーから外れるようにしておくのがベストだ。
1.バーをセットする
ベンチに仰向けになった時に、やや肘が曲がった状態からバーを持ち上げられる高さにバーベルラックをセットする。
次に、必要なウェイトを取り付け、補助者が付き添う場合のみ両端にバーベルカラーを付けてプレートを固定する。 ベンチプレス中に常に正しいフォームを維持できるよう、適切なウェイトを使用しよう。
2.体勢をつくる
ベンチに仰向けになり、 目がバーの真下にある状態にする。 「こうすることで、安全にウェイトを持ち上げて再びラックにかけられる姿勢が確保されます。
目がバーの真下にきたら、足を後ろに引きます」と、ローラ氏は説明する。また、アンダーソン氏によると、足を膝の真下に置く必要がある。または、膝を少し曲げて、足をさらに後ろに引ける状態にしてもよい。 足を後ろに引くと、「脚と臀部に力が入り、総出力が増えます」とローラ氏。 また、そうすることで背中がやや反る。これは正常なことだ。
アスリートがベンチプレスを行っているときに背中が極度に反り返っているのを見たことがあるだろう。 これは、「持ち上げる際の可動範囲を狭めるためですが、ほとんどの人にとってベストなベンチプレスのやり方ではありません」とローラ氏は述べている。
3.筋肉を働かせる
上半身を働かせるために、「胸を天井に向けて、肩甲骨を後ろに引きます」とアンダーソン氏は言う。 肩が前方向に丸まったり、耳の近くに上がったりしないようにしよう。
この姿勢をとると、「持ち上げる際に肩がしっかりと安定します。 しかし、この手順は見落とされることが多く、肩のけがのよくある原因になっています」と、ローラ氏は述べている。
急性のけがは、バランスの悪い状態でバーベルを下ろすことによって起こる。 米陸軍公衆衛生センターによると、体の片側に偏ってバランスの悪い状態になっていると、適切に反応するために組織に過剰な力が加わり、筋肉、腱、靱帯の断裂につながる恐れがあるとのことだ。
4.つかむ位置を決める
バーをつかみ、手の位置を決める。「肩幅よりやや広い位置」にするよう、アンダーソン氏は勧めている。 これは「ミディアムグリップ」と呼ばれており、胸筋に過度なストレスがかからないため初心者に適している。
バーをつかんだら、手首を後ろに曲げずにまっすぐに保つことを意識する。 ローラ氏によると、「親指の近くの肉付きの良い部分」でバーをつかむとよい。 「そうすることで、手首がまっすぐになって関節が固定されるため、手首のけがを防ぎ、より力強く安定したベンチプレスを行えます」と言う。
5.バーをボトムポジションへ下ろす
バーをラックから持ち上げる(補助者がいると、このときに特に助かる)。そして、「肘を45°以上に広げることなく、ゆっくりと胸骨までバーを下ろします」とローラ氏。 これがボトムポジションだ。 「常に体幹を使い、ウェイトを下ろしながら息を吸うことを忘れないでください。」
6.バーを上げる
バーが胸に触れたら、息を吐きながら「初めの位置に向かってバーを斜めに押し上げ、手首と肘が肩の真上にくるようにします」とアンダーソン氏は説明する。
ローラ氏によると、「お腹を膨らませながら深く息を吸い、持ち上げる動作のおよそ2/3~3/4に達するまで息をとめる」のが最適な呼吸法だ。この呼吸法は背骨を安定させるために役立つという。
そこから、バーをもう一度下ろしても、ラックにかけてもよい。 ウェイトをラックに戻す際には、手を放す前に、バーベルの両端がラックの正しい位置にかかっていることを目で見て確認する。 補助者が付き添っている場合は、バーを正しい位置に誘導してもらい、安全にトレーニングを終えられるようにしよう。
ここで、「適切な呼吸とブレーシングが成功と失敗を分けます」というローラ氏の言葉を念頭に置いてほしい。 「持ち上げる前に大きく強く息を吸ってお腹を膨らませ、押し出す動作が終わる頃にゆっくり息を吐いてください」とのことだ。
高血圧など、このようなブレーシングによって影響が生じる可能性のある疾患を抱えている場合は、必ず医師に相談し、自分のニーズに合った呼吸法の指導を受けよう。
ベンチプレスのバリエーション
ミディアムグリップのベンチプレスは、必要に応じてウェイトを増やしたり減らしたりできるため、スタート地点として多くの人に適している。 基本的なベンチプレスができるようになったら、「グリップ、傾斜、使用するイクイップメント」といった要素が異なるさまざまなバリエーションのベンチプレスを試し、さまざまな筋肉を鍛えることをアンダーソン氏は勧めている。 よく知られているバリエーションをいくつか紹介しよう。
- ワイドグリップベンチプレス:この上級のバリエーションでは、肩幅の約2倍の位置でバーをつかむか、標準的な位置より手を数インチ外側にずらしてつかむ。
「広めの位置でつかむと、胸筋、特に大胸筋の鎖骨部を重点的に鍛えることができます」とアンダーソン氏は説明する。 胸筋にかかるストレスが大きくなるため、このベンチプレスを試す前に胸筋をよく鍛えておく必要がある。 - ダンベルベンチプレス:右半身と左半身のどちらかが他方より強い場合は、ダンベルを使うことで「左右の違いに対処できる」とアンダーソン氏は言う。 同氏によると、ダンベルを使うと可動範囲が広がるため、このベンチプレスは胸筋の鎖骨部や胸骨部に効果があるとのことだ。
また、このバリエーションは自然なつかみ方(手首がまっすぐで、手のひらが向かい合う状態)で行えるため、肩や手首に痛みを抱えている人に適している。 - インクラインまたはデクライン:ベンチの角度によって、どの部位の筋肉を使うかが決まる。 「ベンチを前方に傾けるインクラインベンチプレスでは胸の上部、後方に傾けるデクラインベンチプレスでは胸の下部をより重点的に鍛えることができます」とアンダーソン氏は説明する。
文:ハンナ・シングルトン