ランニング後の足首の痛みを防ぐには
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関節に痛みが生じる原因についても解説。
ランニングの後、体のさまざまな部分が痛むことがあるが、それはまったく普通のこと。 何らかのワークアウト後に痛みを感じるというのは、損傷した筋肉を修復しようと体が働いている証拠だ。 ただ、最初は同じように感じることが多いが、筋肉痛やチクッとした痛みと、深刻な痛みには大きな違いがある。
ベテランのマラソンランナーから、5kmのランに挑戦する初心者まで、どんなレベルのランナーでもランニング後に足首に違和感を覚えることがある。 しかし幸いにも、ランニング後の足首の痛みを防ぐ方法はたくさんあると理学療法士は言う。
「走った後、足首に痛みを感じるというのはよくあることです。ランニングは足首の関節に大きな負担がかかる高負荷のアクティビティなので、腱炎、捻挫、疲労骨折などの使い過ぎによるけがを引き起こしやすくなります。ランニングフォームやシューズが不適切であったり、強度を急に変えたりした場合は特にけがをしやすくなります」と説明するのは、理学療法士のジョン・ガルーチ・ジュニア。 理学修士、認定アスレチックトレーナー、理学療法博士の有資格者であり、ニューヨークのJAG Physical TherapyのCEOを務めている。 「この痛みは多くのランナーが経験するもの。相当経験を積んだランナーも例外ではありません」
ランニング後の足首の痛みを防ぐ方法を知りたいなら、当然ながら、足首の痛みの原因を知ることが欠かせない。
ランニング後に足首が痛くなる4つの原因
ガルーチと、ロードアイランド州ニューポートにあるPappas OPTのクリニックディレクターである理学療法博士のレオ・ハーモンによると、ランニング後に足首が痛くなる原因は、腱の炎症や靭帯の部分断裂など、いくつかあるという。
1. 腱炎
腱炎を経験したことがある人なら、このけががどれほどつらいものか、身をもって知っているだろう。特に足首から下の腱に生じると厄介だ。
「走った後に起きる足首の痛みの原因として最も多いのは、腱炎と呼ばれる腱周辺の炎症です」とハーモンは言う。 「腱炎を起こしやすい部位は、腓骨筋腱、アキレス腱、後脛骨筋腱です」これらはすべて、足首から下にある腱だ。
これらの腱は、着地時に足首の動きを制御する上で極めて重要な役割を果たすため、力が繰り返しかかると炎症が生じる可能性があるとハーモンは説明する。 とりわけ、ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐアキレス腱は、痛みを生じやすい。
ガルーチはこう話す。「使い過ぎ、ふくらはぎの筋肉のこわばり、不適切なランニングフォームによって、細かい断裂や炎症が起こり、足首の後ろに痛みや凝りを引き起こすことがあります。 アキレス腱炎になるとランニングはおろかウォーキングでさえも不快感を覚えます。長時間のアクティビティの後はなおさらです」
2. 足首の捻挫
足首を支える靭帯が伸ばされたり、断裂したりすると捻挫が起こるとガルーチは言う。 これは、トレイルランニングなどで凹凸のある地形で足首をひねることで起きることが多い。
「軽度の捻挫であれば軽い違和感が生じる程度かもしれませんが、重度の捻挫になると腫れやあざができ、安定性が失われ、走るのが苦痛になります」とガルーチは言う。
3. 足首関節の可動域制限
関節の可動性や可動域が適切でないとけがをしやすくなる。特に誤った動きをすると負傷につながる。
ハーモンはこう説明する。「足首の動き方の変化によってインピンジメント症候群を引き起こすことがあります。この障害が起きると、走った後、足首の前後が痛むという症状が現れます。 走るときに足首から下の骨の動きが制限されるため、痛みが生じます。特に、足を背屈させる動き、つまり足先をすねの方向に近づけるような動きをするときに痛みます」
4. 疲労骨折
強度や距離を減らさずに痛みに耐え続けると、骨に小さなひびが入る疲労骨折を引き起こすことがある。 疲労骨折が生じやすいのは、足に数多くある骨の1つである脛骨(足首の関節で足とつながっているすねの骨)だ。
「急に走行距離を伸ばしたり、硬い路面を走ったりすると、疲労骨折が起こり、足首周辺にしつこい痛みが生じます」とガルーチは話す。
疲労骨折は、繰り返し衝撃が加わることでも起きる。この場合の要因は、十分な休息をとらずに走り過ぎることだ。「疲労骨折は痛みとして症状が現れ、歩いたり走ったりする時間が長くなるほど悪化することがあります」とハーモンは言う。
ランニング後の足首の痛みを防ぐには
調査によると、ランニング関連のけがの約80%は使い過ぎが原因だという。 これを防ぐには、走るために体の準備を整え、走る距離を適切に調整し、リカバリー戦略を優先させる必要がある。
まずは、走る前にウォームアップをすること。「足首回し、レッグスイング、軽めのジョギングなどの動的なエクササイズから始めましょう。このような運動によって足首への血流が増え、軟組織の柔軟性が高まります」とガルーチは言う。
また、足首周りの腱と筋肉をターゲットにした筋トレをトレーニングプランに組み込むのもいいだろう。 ガルーチがおすすめするのは、片足バランスドリル、レジスタンスバンドを使う運動、カーフレイズだ。
ハーモンはこう話す。「ランニングの頻度、強度、時間を増やすときは、足首の組織に負荷をかけ過ぎないように気をつけてください。 トレーニングを調整する場合は、このパラメーターの1つだけを上げるようにするのが良いでしょう」
つまり、走る距離やスピードを向上させるワークアウトの回数を増やそうとすると、足首に負荷がかかり過ぎてしまう可能性があるということだ。 まずどちらか一方に重点を置き、時間が経って体が慣れてきたらもう片方に取り組もう。
2人とも、ランニング後に痛みを感じる場合は理学療法士に相談することを勧めている。 「理学療法士は筋肉のアンバランスや生体力学上の問題に対処し、診断結果に特化した運動プログラムを提供してくれます」とガルーチ。
理学療法士はバランス感覚や安定性の向上も手助けしてくれるので、けがの予防にもつながると、ハーモンも話す。
ケガを防げる足首のモビリティエクササイズ6選
1. ふくらはぎのストレッチ
「ふくらはぎの簡単なストレッチを行うだけで、足首周りの筋肉を動員できます」とハーモンは言う。 「膝を伸ばした状態で、足を壁やフェンスにつけて、ふくらはぎの筋肉を伸ばしましょう」このストレッチを行う際は、手を壁やフェンスに押し当てるようにすると体が安定する。 ふくらはぎのストレッチは、ランニングやワークアウトの前後に行うといい。
2. シングルレッグスタンス
この動きではバランスが試される。 片足で立つか、楽にできるようにスプリットスタンス(後ろの足を地面につける)で立ち、その姿勢を数秒間キープするといいとハーモンは言う。 エクササイズの難易度を下げるには、腕をテーブルや椅子の端に置くといい。
「バランスエクササイズをやっておくと足首周りの筋肉を神経系でコントロールしやすくなります。また、走る前に筋肉の組織を温めるのにも役立ちます」とハーモン。
3. つま先とかかとの間の体重移動
これもバランス感覚の向上に役立つエクササイズだ。 「つま先からかかとに体重を移して、足首とその周辺の安定性を保つ筋肉を鍛えましょう」とガルーチ。 30秒以上、前後に体重移動させる。
4. 足首回し
この動きは、走るための筋肉の準備運動に最適だ。 座った姿勢か立った姿勢で、足首を時計回りと反時計回りに回すといいと、ガルーチは説明する。 「この運動は可動域の向上に役立ちます」
5. 可動域を広げる足首背屈
この動きは、足首の腱と靭帯を伸ばして強化するのに役立つ。 「レジスタンスバンドやストレッチロープを使って、足首の背屈、つまりつま先をすねの方向にゆっくり引っ張る動きを行い、柔軟性を高めましょう」とガルーチはアドバイスする。
6. スキップやホップのドリル
「AスキップやBスキップといったウォームアップの運動は、足首周りの筋肉や腱の可動性を高めるだけでなく、これらの組織を厚くして強化する効果もあり、けがの予防に役立ちます」とハーモンは言う。
ランニングシューズが足首の痛みの原因になる可能性はある?
その可能性は 確かにあると専門家は言う。 足に合っていないシューズやサポート性が不十分なシューズを履くと、足首の関節に過剰な負担がかかり、「痛みやけがにつながるおそれがあります。シューズが自分の足のタイプや走り方に合っていない場合はなおさらです」とガルーチは話す。
「たとえば、土踏まずのサポート性がほとんどないシューズを履くと、足首が内側に倒れ込み、足首から先を含め、膝から下の下腿全体が痛くなることがあります」
ランニングシューズに足が不自然に押される感覚があるなら、そのシューズは自分に合った設計ではないかもしれない。 ハーモンはこう言う。「質の良いランニングシューズの最も重要な機能の1つは、硬いヒールカップです。 かかとを下ろした状態でシューズの後ろ側をつまんで、ぐしゃっとつぶせるようなら、着地時にかかとを十分に支えきれない可能性が高いです」
さまざまなランニングシューズをあまりにも頻繁に履き替えると、足首周りの組織にも同じように負荷がかかるため、使い過ぎによるけがと似た症状が出ることがあるとハーモンは説明する。 「ランニングに最適なシューズとは、安定性と動きやすさのバランスが良く、快適に走れるシューズです」
どんな時に診察を受けるべきか
痛みや不快感のなかには、時間をかけてリカバリー戦略に取り組むことで自然に消えるものもある。 しかし、医師に足首を検査してもらい、痛みが悪化したり大きなけがに発展したりしないように確認した方が良い場合もある。 ガルーチは、次のような症状が生じた場合は医師や理学療法士に相談することを勧めている。
- むくみ
- 歩行の問題
- 激しい痛み
- 足首に体重をかけられない
- 足首周辺や足に目に見える変形がある
- 足首以外にまであざが広がっている
- 休んで様子を見ても痛みが続く
- 痛みを伴う関節の音がする
- 足にしびれやチクチク感がある
ハーモンによると、足首の痛みがすべて炎症や捻挫に関連するものというわけではない。だからなおさら、早めに医療専門家の診察を受けることが重要なのだ。 「足首は複雑な関節であり、走る動作で膝や股関節と連動します」とハーモンは話す。 「膝や股関節に問題があって、足首への負担が大きくなることもあります」
文:シャイアン・バッキンガム