足首のモビリティエクササイズでワークアウトをレベルアップできる理由について、エキスパートが解説
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さらに、ワークアウトの強度と安全性を高める4つの基本的な足首の体操を紹介。
体全体の動き、感覚、パフォーマンスの土台となるのが足首のモビリティだ。
ランニング、ウォーキング、サイクリング、ジムでのスクワット。どの運動でも、体と地面は足(とシューズ)でつながっている。 そして足首は、足と、それ以外の体の部位をつなげる役割を担う、と認定ストレングス・コンディショニングスペシャリストのオードラ・ウィルソンは説明する。
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足首のモビリティとは何か、なぜ重要なのか、そして安全で力強いワークアウトを実現する足首のモビリティエクササイズについて、エキスパートが解説する。
足首のモビリティとは何か?
足首のモビリティとは、要は活動中に足首がどう動くかだ。そう説明するのはルイス・ハウ博士・理学修士。 エセックス大学で足首のモビリティとリハビリテーションについて研究する傍ら、講師を務めている。
足首のモビリティを構成する6つの動き
- 背屈:足を体の前面に向けて曲げる
- 底屈:足を体から離れる方向に向ける
- 回内:足を正中線に向けて内向きに傾ける
- 回外:足を正中線から離れるように外向きに傾ける
- 内転:つま先を正中線に向けて内向きにする
- 外転:つま先を正中線から離れるように外向きにする
なお、柔軟性はモビリティに影響を与えるが、両者は同じものではないので注意してほしい。 柔軟性とは、筋肉の弛緩と伸縮の度合いを表す指標だ。 それに対しモビリティは、関節全体に着目して実生活でどのように動くかを評価する。
筋肉の柔軟性以外にも、年齢、生物学的な性別、運動経験など、足首の動き方に影響を与える要素は多数ある。 また、モビリティは、関節の構造や、周囲組織の強度や柔軟性にも左右される、とハウは説明する。 周囲組織には筋肉だけでなく、靭帯、腱、筋膜なども含まれる。
足首のモビリティに関する3つのメリット
足首のモビリティを向上させ、良好な状態に維持すれば、下半身のケガのリスク軽減、ワークアウトの効果の改善、運動パフォーマンスの向上といったメリットを期待できる。
1.ケガのリスク軽減
足首の動き方をチェックすれば、将来足首をケガする可能性について予測できる、とウィルソンは話す。
研究によれば、この関節にはウォーキングで体重の約5倍、ランニングで最大13倍の力がかかっている。 優れたモビリティによって、足首はこうした力から保護されている。 また、理学療法士として活動するナタリー・サンプソン(理学療法博士)は、モビリティが高いと足首の関節全体で無理なく体重を分散できる、 と指摘する。
さらに、ウィルソンによれば、足首のモビリティが優れていると下半身のさまざまなケガのリスクが軽減される。
というのも、足首の可動域が制限されている場合、キネティックチェーン(つま先から頭頂部までつながる筋骨格系の連鎖)に連なる他の関節にしわ寄せがいくことになるからだ、とウィルソンは言う。 研究では、足首のモビリティが低いと膝、ハムストリング、ヒップのケガのリスクが高まることが指摘されている。
2.ランニングのスピードアップ
足首のモビリティが向上すると、ランニングのパフォーマンス改善も期待できる。 地面を蹴るとき、3つの主要な関節、つまりヒップ、膝、足首が伸展する。 この動きは「トリプルエクステンション」とも呼ばれる。
足首の進展により、地面に働きかける力も、作り出す力も大きくなる、とウィルソンは話す。 向こう脛と地面の角度も小さくなる。 その結果、ストライドのたびに前進できるようになる。
実際に効果を体感するために、まず、かかとで走ってみよう。 うまくいっただろうか? そんなに速く走れないだろう。次に、静止した状態から素早く足首を底屈させて(伸展させて)母指球で地面を蹴り出す。 軽く跳んだはずだ。小さな動きではあるが、この可動域を最適化することで、ランニングがこれまでとは変わり、自己ベスト更新(またはスピードアップ)を目指せるようになる。
3.フォームの改善
エクササイズで得られる効果は、うまく動けるかどうかにかかっている。
例えば、スクワットについて考えてみよう。 スクワットでしゃがむとき、足首を背屈させる必要がある(つまり、向こう脛がつま先に近づく)。 この動きがあるからこそ、向こう脛は前に傾き、太ももは床と平行になる。
足首の背屈が足りなければ、毎回、しっかり腰を落とすことはできないし、後ろに転倒する可能性もある、とウィルソンは指摘する。 大腿四頭筋もそれほど鍛えられない。 浅いスクワットは結局のところヒップの運動にすぎず、使われる筋繊維も少ないからだ。 ふくらはぎの筋腱複合体の硬直も、スクワットで深くしゃがめない原因となる。
そのため、筋力トレーニングに励むアスリートの中にはウェイトリフティング専用シューズを履いてスクワットを行う人もいる。 こうしたシューズのかかとは硬く、高くなっているので、向こう脛をつま先方向に傾けやすく、足首を背屈させているのと同じ状態を作れる。 また、こわばったアキレス腱やふくらはぎの筋腱複合体をほぐすことも可能だ。 その結果、スクワットで深くしゃがめるようになる。
ただし、シューズのせいで足首を自由に動かせない場合は、シューズを脱いでみよう。
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足首のモビリティのテスト
ハウによれば、足首のモビリティに関する問題で最も多いのは、背屈できないという症状だ。 モビリティを自宅でチェックできるテストを紹介しよう。しかし、実際に試す前に、かかりつけの医師、理学療法士、認定パーソナルトレーナー、ストレングスコーチに相談してみることをおすすめする。
- シューズを脱ぐ。 壁に向かって立ち、片膝を床につけてひざまずく。 反対側の足は床にしっかり固定する。
- 床に立てている足の親指は、壁から約13センチ離れた位置に来るようにする。
- 膝が壁につくように体重を前にかける。
- 同じ動作を反対側の脚で繰り返す。
膝を壁につけることを目指しながら、以下の点にも注意する。
- かかとは床に対して立てておく。
- 膝はつま先と一直線になる位置で動かし、その姿勢を崩さない。
- 不快感がない範囲で行う。
今は完ぺきな動きができないとしても、ターゲットを絞ったトレーニングにより改善は可能だ。
足首のモビリティエクササイズに挑戦
ハウの研究によると、4週間、足首のモビリティトレーニングを続けるだけで動き方が改善する可能性がある。 エキスパートおすすめの、足首のモビリティを高める4つの体操を紹介するので、ワークアウトのいつものルーティンに取り入れてほしい。 一度にすべてを行う必要はない。 下半身を鍛えるワークアウトや有酸素運動の前に、ウォームアップの一環として1つやってみる。 そして、クールダウンでもう1つ取り入れてみよう。
1.エレベーテッド・エキセントリック・カーフレイズ
エキセントリックエクササイズは筋肉が弛緩するときの筋力強化に焦点を合わせており、関節のモビリティ改善に大きな効果がある、とハウは説明する。 このバリエーションでは少し高さのある段を使って、トレーニングの負荷を上げる。 背屈の動きを全般的に強化できる。 やり方は次のとおり。
- 階段のように、少しだけ高くなった台の端に、両足をそろえて立つ。
- 足の前部分だけを台に乗せ、かかとは宙に浮かせる。
- 両脚をまっすぐに伸ばし、母指球に体重を乗せてかかとを上げる。
- その状態で静止する。 続いて、ゆっくりと、できるだけ低い位置までかかとを下げる。 この体操は左右同時に行うこと。
- オプション:必要に応じて、安定したものにつかまってバランスをとると良い。
- 8回x3セットで実施する。
アドバイス:最初は簡単なレベルから始めよう。 ふくらはぎがどう反応するか分かったら、回数を増やしたり、ウェイトを持ったりして抵抗を増やすことも可能だ。
2.ヒール・アンド・トゥ・ウォーク
ウィルソンによると、このシンプルなエクササイズは2つの方法で足首を鍛える。 まず、関節を十分に背屈、または底屈させる。 次に、アイソメトリックな状態で姿勢をキープして、歩く。
- 足をそろえて立ち、かかとで立つ。
- その姿勢のまま前に進み、適度な距離を歩く(部屋の反対側まで、など)。
- 今度は逆の動きで、つま先立ちになる。
- その姿勢のまま前に進み、適度な距離を歩く。
アドバイス:重要なのは、動きをコントロールしながらゆっくり歩くこと。 レースではないことを忘れずに。
3.アンクル・アルファベット
シンプルなエクササイズだが足首で可能な6種類の動きをすべてカバーしており、特に足首の回転の動きを鍛えるのに有効だ、とサンプソンは言う。
- 床に座って脚を伸ばし、巻いたタオルをふくらはぎの下に置く。
- 一方の足を使って、小文字のアルファベットを空中に書く。
- 反対側も同じように繰り返す。
アドバイス:このエクササイズは、椅子に座りながら、または机に向かっているときにやるのもおすすめだ。
4.足の親指のストレッチ
足の裏を見てみよう。 厚い帯状の組織である足底筋膜が、足のアーチに沿ってかかとまで続いている(さらにアキレス腱にもつながっている)。 そこに炎症やこわばりがあると足首のモビリティが制限される、とウィルソンは指摘する。 従って、ここで紹介するやり方で足底筋膜をストレッチすれば、自然と足首の動き方が改善する。
- 座って、一方の脚の向こう脛を反対側の脚のももの上に乗せる。
- つま先を持ち、足の前部分を優しく引っ張りながら、できるだけ向こう脛の近くに引き寄せる。
- オプション:反対側の手で足のアーチをマッサージしてみよう。
- 60秒間、呼吸をしながら行う。
アドバイス:もし、足底筋膜炎に悩んでいるなら、このストレッチを毎朝、起床する前にやってみよう。 足底筋膜はこの時間帯に最も硬くなりやすい。
文:K. アレイシャ・フェッター(認定ストレングス・コンディショニングスペシャリスト)