家族のルーツが未来を定める原動力

Culture

モデルの仕事をしながら、スポーツにも熱心な23歳のアミラ。学問と都会での生活の夢を追いかけ、移民としてのルーツを持つ家族の中で初めて大学を卒業した経緯をたどる。

最終更新日:2021年8月12日
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「先駆者たち」は、スポーツや人生で新境地を切り開いている人々に注目するシリーズ。

「出身地を聞かれたら、『遠くの誰も知らない所』と言ってます」アミラ・ナタンヌは、ルイジアナ州ラッチャーについて冗談交じりにこう語る。ニューオーリンズとバトンルージュの間に位置するラッチャーは、工業が盛んな小さな町だ。23歳でモデルの仕事をこなし、大学を卒業したばかりのアミラはこう説明する。「ハイウェイからずっと離れた場所にある町。住民はたいてい知り合いか、つながりがあります」

小さい町かもしれないが、ラッチャーは広い世界を探求しようと決意したアミラの基盤を作った。アミラは移民のルーツを持つ家族の中で初めて大学を卒業した世代。その学位とニューヨークでの生活は、大学で生命倫理を学ぶためにラッチャーを出たことで実現した夢の一部だ。そして、今では別のキャリアの可能性も広がっている。故郷から1,500マイル離れたブルックリンのブッシュウィックにあるアパートメントで、アミラがこれまでの経験を語った。

家族のルーツが夢への原動力:スポーツとモデル業で夢を追うアミラ・ナタンヌ
家族のルーツが夢への原動力:スポーツとモデル業で夢を追うアミラ・ナタンヌ

アミラのルーツはラッチャーに深く広く根差している。曾祖父が地域で初めて設立した救急医療サービスは、しばらくの間、唯一の救急サービスだった。大人になって、彼女の姓を知った人から、親族がアミラの曾祖父に命を救われたという話を聞くことも珍しくなかった。「どんな行き方でも街に行くまで45分はかかるから、私の家族がコミュニティ全体を世話していたんです」とアミラは言う。

アミラの成長過程で大きな役割を果たしたのは、親戚の存在。「子どもの世話は、そのときその場に居合わせた誰かがするといった感じでした」と彼女は振り返る。そういう周りの大人から創造性を刺激され、アミラは自分の道を見つけることができた。「『女の子だから無理』と言われたことはないです。むしろ『進んでチャレンジし、できることは何でもしなさい。誰かの言いなりになって自分の道を犠牲にしないで』と言われてきました」とアミラは話す。

「『女の子だから無理』と言われたことはないです。むしろ『進んでチャレンジし、できることは何でもしなさい。誰かの言いなりになって自分の道を犠牲にしないで』と言われてきました」

家族のルーツが夢への原動力:スポーツとモデル業で夢を追うアミラ・ナタンヌ

だからアミラはチャレンジすることにした。「[ラッチャーに]ずっと住みたくないと思っていました」と彼女は言う。「高校に行って、そこで出会った恋人と結婚して一緒に住み、子どもが生まれる。彼は工場で働き、22歳で家を買うというような町なんです」

家族のルーツが夢への原動力:スポーツとモデル業で夢を追うアミラ・ナタンヌ
家族のルーツが夢への原動力:スポーツとモデル業で夢を追うアミラ・ナタンヌ

アミラはラッチャーに留まるのではなく、ニューヨークに行き大学に進学することを決心。高校の4年間、ライフルクラブ、棒高跳び、さまざまな優等生協会、パワーリフティングのチームなど、課外活動のほぼすべてに精力的に参加した。アミラは振り返ってこう語る。「パワーリフティングは大好きでした。すごい選手が何人かいて、チームは州で10回優勝するほどすごく強かったんです。私はそれほど優秀な選手ではありませんでしたが、自分のやれる範囲でチームに貢献しました」

多くの大学に願書を送り、
2015年にニューヨーク大学から合格通知を受け取ったアミラ。ルイジアナ州からニューヨークへ飛び、他のクラスメートたちとの新しい生活が始まった。

「ルーツが移民で家族の中で初めて大学に進学するという友人にたくさん出会いました。それが分かって励みになったし、気持ちが少し楽になりました」とアミラは話す。

家族のルーツが夢への原動力:スポーツとモデル業で夢を追うアミラ・ナタンヌ

ラッチャーを出たことで、多くの新しい経験への扉が開いた。たとえば、モデルエージェンシーとの契約。ニューヨークファッションウィークでランウェイに立ち、いくつかの広告キャンペーンに起用されている。その経験はまた、世界を見たいという、アミラが過去に抱いた願望を呼び起こした。「自分の可能性に気づいたんです。私は自立した人間で、世の中をうまく渡ることができ、必要ならカリスマ的な存在にも、揺るぎない姿勢を示す存在にもなれると」とアミラは語る。彼女は実際、インドネシア、メキシコ、英国といった遠く離れた場所へも1人で旅している。

家族のルーツが夢への原動力:スポーツとモデル業で夢を追うアミラ・ナタンヌ

アミラは今、次のステップや、スポーツとの関わりを含めて、どうすれば目的を持った人生を歩めるかについて考えている。スポーツチームのメンバーになれなかった経験もあるが、自らの行動のおかげで前向きな姿勢を保てるのだ。自宅でのウエイトリフティングや長時間のウォーキングに取り組み、今は30日のヨガチャレンジを始めようとしているところ。自分では忍耐が足りないと言うが、さらに瞑想も取り入れようとしている。

アミラは祖父の影響で、大学では内科学を学び、ジェンダーと人種が重なり合って軽視される人々の体への影響について研究した。出産時に黒人女性の死亡率が高い状況を変えたいという強い思いを抱え、産前産後の母親をサポートするドゥーラの資格を取ることで、その思いを形にしようと考えている。アミラ自身にも深く関わる重要な分野だ。「母は5回出産し、帝王切開を4回経験しています」とアミラは言う。

ニューヨークに移住したアミラは、好奇心旺盛で、納得がいくまで問い続ける自身の姿勢と、その志を実現する原動力のルーツをたどるのは簡単だと言う。それは家族なのだ。彼女はこう語っている。「家族から学んだのは、コミュニティを慈しむこと。私の家族はコミュニティを大事にしていました」

家族のルーツが夢への原動力:スポーツとモデル業で夢を追うアミラ・ナタンヌ

文:レイキン・スターリング
写真:コートニー・ソフィア・イェーツ
映像:サラ・マクドウェル、アミラ・ナタンヌ

報告:2020年9月

公開日:2021年5月24日