ラダーを使ったアジリティトレーニングについて知っておくべきこと
スポーツ&アクティビティ
パーソナルトレーナーと運動生理学の専門家が、ラダーを使ったアジリティトレーニングのメリットを解説し、ラダートレーニングのメニューを提案。
バトルロープやサスペンショントレーナーなど、アスリートのパフォーマンスを高めるために役立つ器具はたくさんある。 トレーニング機器が進歩する中で、古くから確実にフィットネスを強化できるイクイップメントとして定着しているのがスピードラダー(またはアジリティラダー)だ。
アジリティラダーを使ったトレーニングのメリット
NASM認定パーソナルトレーナーであるアレクサ・ジェベンズによると、アジリティ(敏捷性)に優れているということは「すばやく方向転換できる」ということ。スピードラダーワークアウトは多方向へのスピード、神経と筋肉の協調性、つまりアジリティ(敏捷性)を高めるために最適だ。
アジリティラダートレーニングに取り組むことで、認知能力、機敏性、方向転換の予測能力も高められる。これは運動能力全般の強化につながる。 臨床運動生理学の認定専門医としてニューヨーク大学ランゴン・スポーツ・パフォーマンス・センターに在籍するヘザー・ミルトン(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)によると、サッカー、アメリカンフットボール、ボクシング、テニス、格闘技などのスポーツにおけるパフォーマンスの向上にも効果的だ。
アジリティラダーは、価格が手頃で、トレーニングに使いやすく、万能の器具。 公園、前庭、さらにはリビングルームなど、ラダーを置ける場所ならどこでも使用できる。
アジリティラダーを使ったトレーニング法
多くのワークアウトでは前後に体を動かすが、スピードラダーを使ったトレーニングでは左右に体を動かす。 そのため、横方向の運動や、左右の脚が交差する回転運動を、トレーニングに取り入れることができる。 さらに、ミルトンによると、跳躍を行うトレーニング(プライオメトリクスなど)を追加すれば、機敏性、アキレス腱の強さ、パワーを高めることができる。
「神経と筋肉の協調性を維持しながら強化するには、アジリティワークアウトを1週間のエクササイズルーティンに組み込むのがおすすめです」とミルトンは述べている。 ラダートレーニングでは、スピードとパワーを発揮しながら姿勢をコントロールし、体の動きを常に意識しなければならない。そのため運動能力と固有受容感覚が鍛えられる(ジェベンズ談)。固有受容感覚とは、体の位置と動きを把握する能力を指す。
アジリティラダーを使用する場合を含め、どんなスタイルのトレーニングでも年齢や身体能力によって内容は変わる。だが量より質を追求することが重要だ(ミルトン談)。
アジリティラダーワークアウトのような神経と筋肉を協調させるトレーニングをエクササイズルーティンに取り入れるなら、週に2回以上実践するのがおすすめだ(ミルトン談)。
アジリティラダートレーニング
運動能力を鍛える決心がついたら、ウォームアップ後のルーティンに以下のアジリティラダートレーニングを取り入れよう。
ミルトンによると、20~30秒を1回として、1回ごとに10~20秒の休憩、1セットごとに2~3分の休憩をとり、脳を休ませて神経のリカバリーをするとよい。 このような運動の経験が少なく、うまくできなくても気にせずに落ち着いて取り組むこと。 休憩をとってからもう一度挑戦すればいい(ミルトン談)。
そして、フォームも大事なポイントだ。 ミルトンによると、胴を横に傾けたり過度に前傾させたりせずに脚の上で安定させ、腹筋に力を入れるイメージで体幹を引き締めた状態を維持する必要がある。 膝が少し曲がった状態を保ち、足全体やかかとではなく、つま先や母指球に体重を乗せる。 そうすることによってアジリティを高め、地面をすばやく蹴れるようにすることが、このトレーニングの肝だ。
難しすぎる場合は、別のエクササイズに変更するか、片脚でラダーを駆け抜ける運動やフォワードハイニーなどの初心者向けのエクササイズに重点を置こう。毎回フォームや動きに集中すつこと。
それでは、ジェベンズとミルトンのおすすめのアジリティラダーエクササイズを紹介しよう。
1.フォワードハイニーとバックワードハイニー
- アジリティラダーに対して正面に体を向けて、運動姿勢になる(膝を曲げ、腰に力を入れ、胸をやや前傾させる)。
- 右膝を上げると同時に、左肘を90度曲げる。
- 次に、右脚を下ろして母指球で着地すると同時に、左膝と右腕を上げて前方に進み、ラダーの1つ目の四角形の中に入る。
- このエクササイズは、1つ目と2つ目の四角形だけを定位置として使ってもよいし、ラダーの反対端に達するまで次の四角形へ前進しながら実践してもよい。 続いて、後方に向かって同じ動きを繰り返す。
- 定位置で繰り返す場合は、先に踏み出す足を左右で切り替える。
2.ラテラルハイニー
- スピードラダーに対して横向きに立ち、右脚をラダーに近づけて運動姿勢になる。
- 右膝を上げると同時に、左肘を90度曲げる。
- 次に、右脚を下ろして母指球で着地すると同時に、左膝と右腕を上げて前方に進み、ラダーの1つ目の四角形の中に入る。
- 四角形の中に両足を下ろしても、片足だけ下ろしてラダーを駆け抜けてもよい。
- 右方向に行ったら、次は左方向へ。
3.ホップスコッチ
- アジリティラダーに向かって正面に立ち、運動姿勢になる。
- 姿勢をコントロールしながら、ジャンプして両足を地面から離し、前方に進んで1つ目の四角形の中に着地する。 その際、かかとは地面につけない。
- 次に、両脚でジャンプして前進し、2つ目の四角形の外に足を着地させる。
- この動きを繰り返して前進する。
4.ラテラルホップ
- スピードラダーに対して横向きに立ち、右脚をラダーに近づけて運動姿勢になる。
- 姿勢をコントロールしながら、両脚で横方向にジャンプし、1回ごとに四角形1個分ずつ進む。 その際、両足で同時に着地する。
- 初めに右方向に進んだら、次は左方向に進む。
- このエクササイズは片足でもできる。その場合は、片足でジャンプして片足で着地し、右方向と左方向を繰り返す。
5.イッキーシャッフル
- 正面を向き、スピードラダーのやや右側に立ち、運動姿勢になる。
- 左足を1つ目の四角形の中に入れ、右足も入れる。 次に、左足をラダーの左側に出し、右足も出す。
- 続いて、右足を2つ目の四角形の中に入れ、左足も入れる。 次に、右足をラダーの右側に出し、左足も出す。
- このように「中中外外」の動きを繰り返し、ラダーの反対端に達するまで続ける。
ここで紹介したのは、心身の強化に役立つアジリティラダートレーニングの一例にすぎない。 練習すればするほどアジリティとフットワークが向上することを覚えておこう。 そして何より重要なのは、量、スピード、負荷よりも質を追求することだ。
文:タマラ・プリジット