筋力トレーニングでランをパワーアップ

Coaching

今よりもっと楽に走れるようになりたいなら、ルーチンに筋力トレーニングを加えてみよう。

最終更新日:2021年6月1日
ランナーのための筋力トレーニング

多くの保守的なランナーは、スクワットやダンベルプレスより、外へ出て走ることを好む。それは当然のことだ。特定のスポーツが好きなら、そのスポーツに取り組みたいはず。それに、走らずして上手く走れるようになるわけもない。

だがランニングの専門家によれば、筋トレはランニングの上達に役立つという。より速く、より長く、そしてより良いフォームで走れるようになるのだ。

筋肉を鍛えれば、どんなに長い距離でも自分の体をより楽に運んでいけるようになり、疲労にも強くなれる。

ジャネット・ハミルトン
Running Strongのオーナー

筋トレが疲労に負けない体を作る

「筋肉を鍛えれば、どんなに長い距離でも自分の体をより楽に運んでいけるようになり、疲労にも強くなれる。これは至ってシンプルなこと」こう語るのは、アトランタを拠点とするコーチング会社、Running Strongのオーナーであるジャネット・ハミルトン。

ランニングと筋トレの生理学を調べてみれば、その理由が分かるだろう。強度の低い、耐久力をベースにしたスポーツ、つまりランニングは、タイプI、または「遅筋」と呼ばれる筋繊維を発達させる。この筋繊維は完全に消耗するまで繰り返し燃焼し、一定の速度で長い距離を走ることを可能にするのだ。

もう1つの筋繊維であるタイプII、別名「速筋」は、すばやく、爆発的に全力を発揮する。例としては、トレッドミルを使った全力疾走や、ゴール目前のラストスパートなどが挙げられる。これら2種類の筋肉は、速いスピードで走ったり、坂道を登ったり、長距離を走ったりする時に、疲れを感じ始めてからも運動を続けることで鍛えられるとハミルトンは語っている。

筋トレの利点は、驚くほど効率が良いことだ。筋トレによってタイプIとタイプIIの筋繊維を同時に鍛えることができ、必要な時にいつでも、これらの筋肉の力を発揮させることができるのだ。

強い筋肉がエネルギーを節約する

強い筋肉が加速とフォームの修正に役立つことはご存知だろうか?『Journal of Strength and Conditioning Research(ストレングスおよびコンディショニングの研究誌)』に掲載されたレビューによると、週2、3回の筋トレプログラムを8-12週間にわたって取り入れたランナーは、ランニングエコノミー、すなわちランニング効率が大幅に改善されていた。さらに、『British Journal of Sports Medicine(英国スポーツ医学誌)』に掲載された研究によると、筋トレを行った後、耐久力と有酸素運動の指標であるVO2 MAX(最大酸素摂取量)の改善も見られた。

加えてベネットコーチによれば、強い筋肉があれば、ハードなランニングもハードに感じなくなるというのだ。これは誰もが求めていることではないだろうか?

筋トレで怪我予防

全身の筋肉を鍛えることで、ランニングで必要とされるバランス調整ができるようになる。ハミルトンいわく、ランニングとは、突き詰めて言えば片側ずつの動作(一度に地面につけるのは片足だけ)だ。丈夫な筋肉としっかりとした安定性があれば、ランニング時に関節にかかる負担を軽減し、怪我のリスクを抑えることができるとベネットコーチは語っている。

今日から始められる筋トレ

筋トレの真価をご理解いただけただろうか?それではここで、おすすめの筋トレプランを紹介しよう。

紹介する10種類のエクササイズは、主要な筋肉をほぼすべて網羅する。そう、まさしくランニングと同じだ。そして多くは、片手、片足だけでも行える(そう、まさしくランニングと同じだ!)。昇降運動や体幹を鍛える運動に加え、腰、大臀筋、脚にフォーカスした運動など、パワー生成を強化する筋トレなどが勢ぞろい。実行すればより優れたランナーになれるだけでなく、回復力の高い体が手に入るはずだ。

10種類のエクササイズを各2セットから3セット、週2回、間隔を開けて行おう。忙しければ5、6種類だけ、または全10種類を1セットずつでも大丈夫。各エクササイズをターゲットの筋肉が疲れるまで(良いフォームを維持できなくなるまで)、5回でも20回でも繰り返そう。次のエクササイズに移る前に30-60秒休憩し、一通り完了したら数分間の休憩を挟む。こうすることで体が充分に回復し、より重いウェイトに持ち替えたりできる上に、有酸素運動になることなくエクササイズを続けられる。

1.プランク

鍛えられる筋肉:肩、背中上部、胸、腹直筋、腹横筋、大臀筋、大腿四頭筋、ふくらはぎ

上体を腕立て伏せの体勢にして、肩を手首の上にもってくる。背中は真っすぐ(腰を下げ過ぎたり、上げ過ぎたりしない)。腹筋、太もも、臀部に力を入れる。視線は手の数インチ先にして、できるだけ長くこの姿勢を維持する。これで1回。これを繰り返す。

イージーモード:前腕を地面に付け、肩を肘の上で固定する。

ハードモード:片脚または片手を上げて、バランスを取る(安定感を得るために足幅を広くしてもよい)。

2.スクワット

鍛えられる筋肉:大臀筋、大腿四頭筋、ハムストリング

足を腰幅に開いて立ち、爪先をやや外側に向ける。手は体の側面に置いてスタート。腰を後ろに引き、膝を曲げ、股関節が膝の高さより下に来るまでしゃがむ。足で地面に押し返して元の位置に戻る。これで1回。これを繰り返す。

イージーモード:足を広げる/腰を落とす深さを四分の一程度にする。

ハードモード:両手にダンベルを1つずつ持ち、肩の高さでキープする(腹直筋に効果がある)。

3.ラテラルボックス プッシュアップ

鍛えられる筋肉:肩、胸、三頭筋、二頭筋、腹直筋、腹横筋

高さ6-12インチ(15cm-30cm)ほどのボックスを置き、その左側に膝をつく。プランクの姿勢で、右手をボックスの上、左手を床の上に置く。両手は肩幅より少し広めに開いてスタート。腹筋に力を入れたまま、上腕が床と平行になるまで胸を落とす。押し戻してからボックスを横切って手を引きずりながら移動させて反対側に置き、プランクの姿勢を維持したまま足も合わせて動かす。反対側でも同じ動作を繰り返す。これで1回。交互に繰り返して続ける。

イージーモード:ボックスなしで床の上で行う。プランクの姿勢で手足を2ステップ程左に引きずるように移動させ、腕立て伏せをして右に引きずるように移動し、動作を繰り返す。これも難しければ膝をついて、手だけを動かす。

ハードモード:スピードを落として行う。2、3秒かけて胸を落とし、また2、3秒かけて腕を押し返す。

4.エレベーテッド スプリットスクワット

鍛えられる筋肉:腹直筋、大臀筋、大腿四頭筋、ハムストリング

ボックス(またはステップ)から2フィート(約30cm)程離れた位置に、ボックスに背を向けて立つ。足は腰幅に開き、手は腰に。左足を後ろに引き、左足の爪先をボックスの上に乗せてスタート。左の膝が地面につきそうになるまでスクワットする。この時、右の膝は右足の爪先と同じライン上に維持する。立ち上がって元の位置に戻る。これで1回。同じ動作を繰り返してから、反対側も同様に行う。

イージーモード:低いボックスを使うか、スクワットの深さを浅くして、良いフォームを維持できるところまでにする。

ハードモード:スピードを落として行う。2、3秒かけてスクワットし、同様にして元に戻る。またはウェイト(ダンベル、ケトルベル、メディシンボールなど)を胸の高さに持って行う。または両手を下ろした状態でウェイトを持ってもよい。

5.バイシクルクランチ

鍛えられる筋肉:腹直筋、斜筋

仰向けになり、肘を外側に向け、腕を曲げて指先を軽く耳の後ろにつける。脚を曲げた状態で上げ、膝が腰の上に来るようにする。足首を直角に曲げて、肩を地面から浮かせた姿勢でスタート。上体を左にねじり、右手の肘を左足の膝に持っていくと同時に、右脚を真っすぐにして、床から少し上の位置まで下ろす。元の姿勢に戻って、反対側でも同じ動作を繰り返す。これで1回。交互に繰り返す。

イージーモード:浮かせたまま続けるのではなく、回毎に肩と足を地面に下ろし、少し止まってから続ける。

ハードモード:スピードを落として行う。2、3秒かけて肘を膝につける。

6. シングルレッグ グルート ブリッジ

鍛えられる筋肉:腹直筋、斜筋、大臀筋、ハムストリング

仰向けになって膝を曲げ、足を腰幅に開いて床につける。腕を伸ばして体の横に置き、指先がかかとに軽く触れる程度にする。左脚を伸ばしてかかとを少し浮かせ、足首を直角に曲げてスタート。大臀筋に力を入れて右足で床を押し、膝、腰、肩が一直線上になるまで持ち上げる。少し止まってから、ゆっくりと体を落とし、元の体勢に戻る。これで1回。同じ動作を繰り返してから、反対側も同様に行う。

イージーモード:1回毎に腰を優しく地面に落とす。

ハードモード:スピードを落として行う。2、3秒かけて体を持ち上げ、同様にして体を落とす。またはダンベル/ケトルベル/ウェイトプレートを腰の位置で持つ。

7.ラテラル ステップアップ

鍛えられる筋肉:大臀筋、大腿四頭筋、ハムストリング

ボックスまたはステップの左側に立ち、手は腰に当てる。右足をボックスの上に置いてスタート。右足を押し出し、右脚で立つ(左足はボックスの横で浮かせた状態)。左足をゆっくり床に降ろして元の体勢に戻る。これで1回。同じ動作を繰り返してから、反対側も同様に行う。

イージーモード:低いボックスを使う。

ハードモード:スピードを落として行う。2、3秒かけて立ち上がり、同様にして降りる。またはウェイト(ダンベル、ケトルベル、メディシンボールなど)を胸の高さに持って行う。または両手を下ろした状態でウェイトを持つこともできる。

8.ワンアーム ベントオーバー ロー

鍛えられる筋肉:肩、僧帽筋、二頭筋、広背筋、腹直筋、斜筋

足を腰幅に開き、左手にウェイトを順手で持つ。膝をやや曲げて前屈みになり、床と背中がほぼ平行になるようにしてスタート。左の肘を引き上げて肩甲骨を寄せ、ウェイトが左の肋骨のレベルまで来るようにする。ウェイトを下げて元の体勢に戻る。これで1回。同じ動作を繰り返してから、反対側も同様に行う。

イージーモード:軽いウェイトまたはレジスタンスバンドを使う(バンドの場合は、片足または両足でバンドを固定して、過度な負荷がかからないよう調整する)。

ハードモード:スピードを落として行う。2、3秒かけてウェイトを持ち上げ、同様にしてウェイトを下げる。または伸ばした反対の手にもう1つウェイトを持つ。

9.ニーリングカール トゥ プレス

鍛えられる筋肉:肩、二頭筋、腹直筋、腹横筋、斜筋

膝をつき、ニュートラルグリップで左手にウェイトを持つ。腕は横に降ろした状態でスタート。腹筋と大臀筋に力を入れたまま、手のひらが自分側に向くように手首を回転させながら、ウェイトを胸に引き寄せる。手のひらが反対側に向くように再び手首を回転させながら、ウェイトを押し上げ、同様の動作で元の体勢に戻る。これで1回。同じ動作を繰り返してから、反対側も同様に行う。

イージーモード:軽いウェイトまたはレジスタンスバンドを使う(バンドの場合は、膝でバンドを固定して、過度な負荷がかからないよう調整する)。

ハードモード:スピードを落として行う。2、3秒かけて腕を曲げ、同様にしてウェイトを持ち上げる。または伸ばした反対の手にもう1つウェイトを持つ。

10.シングルレッグ ルーマニアン デッドリフト

鍛えられる筋肉:腹直筋、大臀筋、ハムストリング、ふくらはぎ

腰に手を当てて立った状態から、重心を左脚に置き、右足が左足のやや後ろの位置に来るようにして、右足の爪先でバランスを取って、スタート。体幹に力を入れ、背中、両脚は真っすぐに保つ(膝をやや曲げる程度ならOK)。腰を軸にして前屈みになり、右手の指先を左足の爪先へ伸ばし、右脚が床と平行になるまで右脚を後ろに伸ばす(体がTの形になる)。同様の動作で元の体勢に戻る。これで1回。同じ動作を繰り返してから、反対側も同様に行う。

イージーモード:良いフォームを維持できるところまで上体を下げる。

ハードモード:右脚を上げる時、ダンベルまたはケトルベルを右手に持つ。反対側も同様にして繰り返す。

文:アシュリー・マテオ
イラスト:マーティン・トンゴラ

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公開日:2020年6月15日