自己ベストを更新しよう

Coaching

あなたはもっと速く走れるようになる。本当だ。ここで紹介する考え方、呼吸法、トレーニング方法を参考に、自分の限界に挑戦してみよう。

最終更新日:2021年10月25日
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もっと速く走るための11のヒント

もしランプの精がランナーの前に現れて、3つの願いを叶えてくれると言ったら、その願いの1つはもっと速く走れるようになることだろう(後の2つは、素晴らしく晴れた日が続くこと、気持ち良い風に吹かれながら痛みを感じることなく楽に走れることだろうか)。

ランニングをしている人が、みんな自分のペースにストレスを感じるわけではなくても、ほとんどのランナーは自己ベストを更新できるなら喜んで受け入れるだろう。強くなったように感じられるし、実際すごいからだ。しかしながら、現実にはランプの精はいないし(いたら良いのに)、速くなろうと思ったら地道な努力が必要だ。

ここでもう1つ、目を向けるべき現実がある。あなたは、行き詰まることもなく、少しずつだがもっと速くなれる。以下のアドバイスを実行すれば、きっともっと速く走れるようになるだろう。力技を使いたいのなら(称賛)、全部試すのもOKだ。

1. もっと長く走る時間を作る

「速く走れるようになりたかったら、まず持久力をつけよう」と言うのは、Nikeのグローバルランニングでシニアディレクターを務めるクリス・ベネット、通称ベネットコーチだ。「単に速く走れるのと、速く走りたいときに速く走れるのとは違う」(5キロのレースのラスト100メートルを思い出してもらえればわかるだろう)。持久力が低いと、序盤の段階でより多くのスピードを使い切ってしまうとベネットコーチは言う。「最も重要なタイミングで加速するのは、とても難しいことですが、持久力があればそれも可能になります」。持久力を鍛えようと思ったら、少なくとも週1回、快適なスピードで走り、それから普段より少し速いスピードで走ろう。このトレーニングを続けることで、より長い距離を疲れを感じずに走れるように体を調整することができる。

2. スプリントは賢く

これ以外に方法はない。速く走りたければ、とにかく速く走るしかないのだ。

だからと言って、一晩で1マイルのタイムを1分縮めることはできない。さまざまなワークアウトを取り入れた良いトレーニングプランに従うことで、徐々にスピードアップしていくことができる(そのためのサポートなら、Nike Run Clubアプリのトレーニングプログラムにおまかせ)。

ワークアウトプランを作ることが決まったら、それにインターバルトレーニングを取り入れよう。『Medicine & Science in Sports & Exercise』誌に掲載された研究によれば、速い運動にゆっくりしたリカバリーを組み入れたインターバルトレーニングは、中程度の負荷のワークアウトより酸素の利用効率(有酸素運動の主要な指標)が上がるということだ。短時間のランでスピードを上げられるようになってくると、長距離ランでの全体的なペースも上がり始める。このためのワークアウトは、1分間のハードなランニング(会話できないペース)と1分間の楽なランニング(楽に会話できるペース)を交互に行うだけで十分だ。

一般例として、2週間ごとに200m、300m、または400mの全力走を何度か繰り返すこと。そう勧めるのは、全米陸上競技連盟公認コーチのジェイソン・フィッツジェラルド。Strength Runningのヘッドコーチであり、「The Strength Running Podcast.」の司会も務める専門家だ。インターバルは負荷の高いトレーニングなので、回復には時間がかかる。このような全力走を休む週には、会話をするのが少し難しいぐらいのやや楽なペースで、800mや1600mなど距離が長めのインターバルに取り組むことも、スピードと持久力の向上に効果的だという。

「速く走れるようになりたかったら、まず持久力をつけよう」

クリス・ベネット
(Nikeグローバルランニング シニアディレクター)

3. トレッドミルを好き(まあまあ好きでOK)になるには

マシンの上でのランニングは、スピードや傾斜、距離を正確に固定して走れるので、インターバルやスプリントのセッションに最適だ。だから、トレッドミルは、想定している距離が5キロでもマラソンでも、試合のペースをどの程度コントロールできるかをテストするのに完璧なツールだ。そうアドバイスするのは、Nike Run Clubのコーチ、ジェシカ・ウッズだ。

「トレッドミルで、特定のペースに慣れることができます。まさしく筋肉に記憶させるようなイメージ。正確なペースに慣れれば慣れるほど、屋外でもその感覚を掴むのがうまくなります」とウッズは言う。

4. 丘へ向かおう

現実でもトレッドでも、急な上り坂を走るのが好きな人は、あまりいないだろうが、標高の高い場所でトレーニングすることは、速いランナーへの近道だ。『International Journal of Sports Medicine』誌の研究によれば、週2回、10%の傾斜でのランニングを6週間続けたランナーは、それより速いペースで平地のランニングを続けたランナーより最高速度がアップし、その速度を長く維持して走ることができた。坂道では、筋肉への負荷が高くなるだけでなく、そのプロセスで行うあらゆるアクティビティへの対応力も強化される。また、平地でのトレーニングと比較すると、坂道では乳酸しきい値が向上するため、同じペースで走っても乳酸の生成量が少なくなるという(乳酸は、筋肉を燃焼させ、最終的には動きを停止させる)。

次回、ジムに行ったら、傾斜を10%前後、あるいは、安全にトレーニングできる範囲で高くした傾斜でトレッドミルを試してみるか、緩やかな上り坂のトレイルを走ってみよう。最初は信じられないほど遅く感じても、時間をかければ平地を走ったときにスピードが上がっていることに気づくはずだ。

5. 筋肉をほぐす

筋肉が疲れて固くなると、筋肉が軽快で柔らかいときより走るのが難しくなる。ランニングやジムセッションの前や後に、時間を作ってフォームローラーで筋肉をほぐすと、ランニングやリカバリーの効果を上げることができる。これは特に、スピードトレーニングのルーチンを強化している場合に重要だ。「フォームローラーを使った筋肉のローリングは、特定の固まった部分をほぐすのに役立ち、ワークアウト後に体内の老廃物を洗い流してくれます」と、Nikeの理学療法士として、エリートアスリートの筋力コーチを行っているデビッド・マクヘンリーは言う。また、ランニングの後、いくつかの重要なポイントをケアする時間しかない場合は(それでも問題はない)、大腿四頭筋、ふくらはぎ、大臀筋に重点を置くことを勧めている。

もっと速く走るための11のヒント

6. 筋力を構築する

「筋力トレーニングは、言い換えればスピードトレーニングでもあります」と、ベネットコーチは言う。ウェイトトレーニングは、スプリントで使う筋肉を鍛えるだけでなく、骨や腱、靭帯などの結合組織の強化にも不可欠だ。これによって、全体的なランニングフォームが向上すると言うのは、アトランタに本社を置く企業、Running Strongで筋力とコンディショニングのコーチを務めるジャネット・ハミルトン氏だ。強くなればなるほど、距離の長短に拘わらず体重を支えて移動するのが楽になり、疲労にも強くなるとハミルトン氏は付け加える。

このような効果を手にするために、ジム通いをしたり、重いウェイトを持ち上げたりする必要はない。少なくとも週2回、筋力トレーニングを行い、そこにプランクやロシアンツイストなどの体幹を鍛えるエクササイズを組み入れよう(『PLOS One.』に掲載された研究では、8週間の体幹トレーニングプログラムを行った大学生アスリートに、ランニングエコノミーの向上が示されている)。ランニングの動きを真似たランジやスプリットスクワットなど、片足での運動も取り入れると良いだろう。

7. 計画的に睡眠をとる

あなたは、過酷なスプリントセッションを終えたところだ。ランニングの体は、その労力を吸収してより速くなっている。そしてランニングによって増加したストレスに対応するために、壊れた筋肉繊維が再構築される。リカバリーにとって重要なのは睡眠の時間だ。専門家が推奨している最低7時間以上の睡眠を確保できるように、ベッドに入るべき時刻の30分前にアラームが鳴るようにセットしておこう。

「睡眠スケジュールを決めて眠ることは、私が担当する多くのアスリートにとって最も役立つ手段の1つです」と言うのは、チェリ・マー博士だ。UCSF Human Performance Centerの医師兼科学者であり、エリートアスリートの睡眠とパフォーマンスを専門とするNike Performance Councilのメンバーでもある。「彼らは、トレーニングの1つの側面のように、スケジュールに睡眠を組み入れています」。起床時のアラームに加えて、就寝時のアラームも用意しよう。

8. スピードを加速する

スピードを強化するために、高脂肪、低炭水化物、または低脂肪、高炭水化物の食事をする必要はないと言うのは、Precision Nutritionでパフォーマンスニュートリションのヘッドコーチを務めるライアン・マシエル博士だ。家から砂糖を排除する必要もない。バランスの取れた食事をするだけで、体は最高のパフォーマンスを発揮できるし(つまり最高スピードで走れる)、回復も容易になる。

「一般的には、鶏肉、魚、豆、豆腐などのタンパク質を手のひらサイズで1~2個分、できるだけさまざまな色の野菜をこぶしサイズで1~2個分、果物や全粒粉などの炭水化物を手のひら1~2杯分、アボカド、ナッツ、オリーブオイルなどのヘルシーな脂質を親指サイズで1~2個分を目安にしてください」と、マシエル博士はアドバイスする。

9. 呼吸法

走っているときは、息を吸いながらお腹を膨らませ、息を吐きながらお腹をへこませる深呼吸に意識を集中しましょう」と言うのは、臨床心理学者で『Breathing for Warriors』の著者でもあるベリサ・ヴラニッチ博士だ。こうすることで、肺に酸素が入るスペースを増やすことができる。「肺の中で、酸素の密度が最も高く豊富なのは、肋骨の下の部分だからです」とヴラニッチ博士は説明する。

この腹式呼吸は、呼吸の効率性をアップしてくれる。複数回の浅い呼吸と同じ量の酸素を1回の呼吸で取り入れることができる上に、ペース配分の選択肢も増えるとヴラニッチ博士は言う。深い呼吸は、より多くの酸素を筋肉に供給すると同時に、ペースを維持したり上げたりする際にも役立つという。

10. 何か新しいことを試す

毎日同じことをするのは簡単だが、それでは向上しないとベネットコーチは言う。「ランニングを楽しくするために、ランニングにいろんな要素を取り入れてみましょう」。その理由の1つ目は、高速ランニングに必要な筋力と持久力を鍛えるために必要な一貫性を生み出すことができるからだ。そして2つ目は、目新しさによって楽しい気分になり、ランニングに新しい要素、つまりスピードをもたらす準備ができるからだと彼は説明する。

いろんな要素と言っても、走る距離を変えることだけではない。音楽を聴きながら走る(あるいは音楽を聴かずに!)。いつものルートを逆方向に走る。いつも避けている上り坂を走る。土、草、砂の上を走る。友だちと一緒に走るのも良いだろう。ほんの小さな変化でも、いつものランニングを別の体験に変えてくれる効果があると、ベネットコーチは言う。そしてそれこそが、ランニングを続ける秘訣でもある。

11. ミニマルなシューズを検討する

秒単位でタイムを縮めたいと思っている本格的なランナーは、より軽いシューズを選ぶことで、求めるスピードを出せる可能性があると、ベネットコーチは言う。すでにかなり速いランナーが、さらにスピードを求めるなら、ミリグラム単位でも違いが生まれるだろう。また、ランニングの種類に応じてシューズを使い分けると、どのシューズも長持ちするので、かけた金額に見合う価値はあると言う。

競技場で全力疾走するなら、スパイク付きのシューズを購入すると良いと言うのは、Nike Run Club Chicagoのコーチ、ロビン・ラロンドだ。スパイクが路面に食い込み、トラクションを維持するのに役立つ。「競技用のフラットシューズも、トラックの接地感を高めてくれる上に、競技場の外にも行くことができる」とラロンドは付け加えた。

シューズを購入する際に、「ミニマル」、「軽量」、「羽のように軽い」といったキーワードを使って探してみよう。また、履き心地が快適なシューズを選べば、クローゼットにしまい込んだままになることはない。

12. 脳を鍛える

どんなにハードなトレーニングをしても、自分が望む以上の速さで走ることはできない。「スピードは怖いものです」とベネットコーチは言う。「でも、楽しいことでもあります。いつものルーチンに、少しワクワク感をプラスしてくれます」。

視覚化は、正しいヘッドスペースに入り、目標のペースを達成するのに必要な自信を与えてくれる。「自分が競技場にいて、スムーズに走っているところを想像してください。10点満点で9点の努力をしています。あなたは少し危ないと感じましたが、笑顔です」。自分の努力を視覚化することで、自分のペースを「把握する」ことができるとベネットコーチは説明する。いったん把握してしまえば、もうスピードを怖いと思うことはなくなるだろう。

そして、忘れずに自分を誉めよう。優しいセルフトークは、気分が良くなるだけでなく、エネルギーを増加させ、心拍数を下げるなど、身体的なメリットももたらしてくれるという研究結果が、『Clinical Psychological Science』誌に掲載された。ここでヒントを1つ。自分の主張を「自分はできる」から、「あなたはできる」に変えてみよう。『Journal of Sports Sciences』に掲載された研究によると、一人称ではなく二人称で自分を表現したサイクリストは、タイムトライアルでより速い結果を出すのだと言う。

自分の中に自分を応援してくれるチアリーダーがいれば、もうランプの精は必要ないだろう。

文:アシュリー・マテオ
イラスト:ライアン・ジョンソン

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公開日:2021年10月26日